2014年12月31日水曜日

「オイルマネー」の恐ろしさ(3):米国を潰せ!サウジが仕かけたエネルギー戦争、2015年の最悪シナリオ

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 イラン・ロシアをターゲットにした石油戦争はアメリカも揺るがしている。
 ロシアほどのこともないが、アメリカもそこそこの痛手を被ることは避けることができない。


JB Press 2014.12.31(水)  堀田 佳男
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42578

米国を潰せ!サウジが仕かけたエネルギー戦争
早くもささやかれ始めた2015年の最悪シナリオ

原油価格の下落が止まらない。

 2014年6月にニューヨーク原油市場での先物価格は1バレル107ドルまで上昇したが、12月29日には一時52ドル台にまで落ちた。半年で50%以上の下落である。

■米エネルギー業界が描く最悪シナリオ

 米エネルギー業界では2015年になっても下落が続くことを予想して、最悪のシナリオが描かれているという。
 「米経済への大きな打撃」になるという見方が強い。
 現実になれば日本経済への悪影響も避けられない。

 一般的に原油価格が下がると、多くの企業や市民に恩恵がもたらされる。
 ガソリン価格が下がって輸送料が抑えられ、石油製品や原材料の価格も下落するからだ。
 1980年代後半の日本のバブルは、まさに原油価格が10ドルを割った時点からスタートしている。

 けれども原油価格の下落が社会によからぬ影響を与えることも考慮する必要がある。
 それが「米経済への大きな打撃」なのだという。
 いったいどういうことなのか。

 まず時間を11月27日に戻すところから始めたい。
 この日、石油輸出国機構(OPEC)はオーストリアで総会を開き、減産を見送った。
 OPECの加盟12カ国はこれまで、原油価格の下落を止めたい時には生産量を減らすという協調行動を採ることが多かった。

 原油の流通量を減らすと、市場原理が働いて価格は下げ止まる。
 貨幣の流通量に似ている。
 総会では賛否両論の議論が起きたが、減産しない決定を下した。
 サウジアラビアの意向が反映された結果で、多くの専門家が指摘しているとおり、米国を叩く意味があった。

■サウジ、米国へ宣戦布告

 サウジは、シェール革命によって原油生産量を1日900万バレル超にまで増やしている米国を牽制したかったようだ。
 極言すれば、サウジが米国に原油戦争の宣戦布告をしたということである。

 これまでサウジは世界最大の原油生産国だった。
 だが国際エネルギー機関(IEA)は、すでに
 米国がサウジを抜いて原油と天然ガスで世界1位になった
としており、原油価格を下げて米石油企業の利益を削減させるという手荒い手法を採ったというのだ。
 原油価格が下がればサウジも当然利益を落とす。
 それは百も承知である。

 だがサウジは米国のシェールオイルは掘削にコストがかかることを熟知しており、原油価格が下がれば、米石油企業の中には赤字に直面するところもでてくると踏んだ。
 米企業を潰しにかかったわけである。
 近年、コストを抑えてシェールオイルを掘削する技術が導入されているが、2014年10月下旬に米バーンスタイン・リサーチが公表した試算結果では、
 1バレル80ドルを切ると米シェールオイル生産の3分の1は採算割れ
となるという。
 すでに採算割れしている企業があるということだ。

 採算が取れる原油価格の最低ラインは、全米の掘削地域およびにプロジェクトによる。
 ノースダコタ州北西部に広がるバッケン・シェールと言われる石油鉱脈は米本土48州で最大の原油埋蔵量があり、
 1バレル42ドルに落ちても採算が取れると言われている。

 しかしエネルギー関係者によるとサウジの考えは過激だ。
 ヌアイミ石油鉱物資源相は1バレル20ドルに落ちても減産しない
考えだという。
 本当にそこまで落ちると、米シェールオイル企業は操業を停止せざるを得なくなるし、長期間低価格でとどまった場合、倒産という憂き目に遭う。

■エネルギー産業に牽引されている米国経済

 サウジの無慈悲な石油商法は、それくらいのことは何でもないだろう。
 米国の原油産業が傾けば、「米経済への大きな打撃」となることは必至である。
 というのも、エネルギー業界こそが現在の米経済の牽引役と言っても過言ではないからだ。

 米ゴールドマン・サックスの企業ポートフォリオ担当のアマンダ・スナイダー氏が書いている。
 「いまや米格付け会社スタンダード&プアーズが挙げる500銘柄(企業)の費やす設備投資額の3分の1がエネルギー業界に集中している。
 研究開発費においても25%がエネルギー分野であり、米雇用の創出にも貢献している」

 米経済はエネルギー業界を頼りしているがために、原油価格の下落で産業界全体に悪影響がでてしまうのだ。
 しかも投機的要素の強いジャンク債の約20%がエネルギー関連という事実も踏まえておく必要がある。
 2009年の割合が9%だっただけに注意が必要だ。
 原油価格が1986年レベルまで落ち込まなくとも、40ドル台を推移した場合、即刻ではないが高利回りのジャンク債がデフォルト(債務不履行)を起こす可能性は捨て切れない。
 多くの企業はデフォルトの危機をヘッジ(回避)する措置をとっているようだが、価格の低迷が長期に及ぶとデフォルトする債券も出るはずだ。
 こうした流れが株式市場に影響しないわけがない。
 もちろんデフォルトは金融機関を窮地に陥れる。

■エネルギー関連企業が発行するジャンク債に要注意

 過去のデータを眺めても、デフォルト後に金融機関の株価が急落する現象が起きている。
 そうなると、原油価格の低下が続いた後は、ジャンク債の動きに注視する必要がある。
 ジャンク債に負の動きが見えた時は、株式を売りさばく時期と言えるかもしれない。

 2015年にこうした流れが米国内で見られた場合、当然日本経済にも悪影響が出るはずだ。
 低い原油価格は多くの市民が望むことだが、その後に来る因果関係を眺めれば、喜んでばかりはいられない。
 現象として、1980年代後半のバブルと同じように原油安による好影響から特定企業の株価が高騰すると考えられる。
 だがジャンク債がまずデフォルトし、その後金融機関に飛び火し、一般企業の株価下落という流れも予想できる。

 OPECが11月末の総会で減産に踏み切らなかったのは、サウジが「新原油価格」を模索しているからとも言われる。
 サウジは米国との原油戦争に勝つことができさえすれば、1976年から2000年にかけて推移していた12ドルから40ドルという価格帯に近いところでも構わないようにも見える。
 となると、近年のような100ドル超という価格に戻ることは今後ないかもしれない。

 一般論として、原油の低価格はガソリン代を含めたエネルギー費をはじめ、物価の値下げによる支出の抑制など、多くの点で利点がある。
 シティグループのエド・モース氏の推測によると、
 原油価格の低下がもたらす世界的な経済効果は最大で132兆円ほどにもなる
という。
 しかしここまで記したように、低価格による最悪のシナリオもある。
 仮説ではあるが、現実にならないとも限らない。

 「ガソリン代が値下がりして嬉しい」というレベルの話だけで終わらない可能性があることを心の片隅にとめておいていただければと思う。
その点を述べて今年のコラムを終えたい。


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 資 料 
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http://v.youku.com/v_show/id_XNzE2Njk0MTA0.html
●视频: NHKスペシャル「膨張する欲望 資源は足りるのか」
新興国の爆発的なエネルギーの消費。その需要が世界各国で猛烈な資源開発を起こしている。
 欲望の果てに何が待っているのか。新たな時代を迎えたエネルギーの最前線を追う。





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