2014年12月17日水曜日

「オイルマネー」の恐ろしさ(1):サウジが仕掛ける「石油戦争」、シリア内戦とはイラン対サウジの本格的代理戦争

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 数年前までは潤沢な「オイルマネー」が最も恐ろしいものだと誰もが思っていた。
 だがその後、オイルマネーは安定し、その座は急激に台頭した「チャイナマネー」に譲った。
 チャイナマネーはあれよという間に世界を席巻した。
 それとともに、オイルマネーの存在を忘れてしまっていた。
 しかしチャイナマネーは世界に急激な変化を起こすほどのものではなかった。
 というのは、チャイナマネー自体が世界マネーとリンクしていたからである。
 世界が不景気になれば中国の輸出は停滞し、チャイナマネーは下落する。
 だから
 「チャイナマネーはカードには使えない」
ということが分かってきた。
 それとは反対に
 オイルマネーは恐ろしい
ということが今回の件で分かってきた。
 なぜなら、特にサウジのオイルはサウジの内政とは何ら関係ないからである。
 数年、オイルを叩き売っても全く困らないほどに、サウジはお金をもっている。
 よって、その気になったら、世界を震撼させることができる。
 つまり、圧倒的にサウジはお金持ちなのである。
 オイルの代金で内政経済を動かしているのではないのである。
 預金通帳にはオイルの売上金が貯まりに貯まっているのである。
 今回の件では、オイル収益に頼っていたロシア、ベネズエラが一気に危機に陥った。
 特にロシアは数か月前はクリミア紛争で息巻いていたばかりである。
 それが、信じられないほどの速さで、奈落に陥ってしまった。
 オイルマネーを絶対に甘くみてはいけない、
という教訓なのかもしれない。


ロイター 2014年 12月 16日 13:41 JST
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPKBN0JU0AE20141216

コラム:サウジが仕掛ける「石油戦争」、制御不能リスクも


● 12月15日、シリアとイラクで代理戦争を繰り広げることにより、サウジアラビアはロシアおよびイランとの石油戦争を引き起こすリスクを冒している。写真はサウジのアブドラ国王。同国ジッダで9月代表撮影(2014年 ロイター)

[15日 ロイター] -
 1973年8月、当時のサダト・エジプト大統領はサウジアラビアのファイサル国王に会うため、首都リヤドをお忍びで訪れた。
 イスラエルとの戦争を準備していた大統領は、サウジに石油という最も強力な武器を行使してもらう必要があったのだ。

 ファイサル国王はこの時点まで、「武器としての石油」を使うよう石油輸出国機構(OPEC)諸国に呼びかけることに二の足を踏んでいた。
 しかし74年10月にイスラエルと中東アラブ諸国との第4次中東戦争が勃発すると、アラブ諸国は石油生産を減らして価格を釣り上げるとともに、イスラエルを支持する米国を罰するため、石油の輸出禁止に踏み切った。
 サウジの協力がなければ、大規模な禁輸は不可能だっただろう。

 サウジは今日、再び石油兵器を利用している。
 しかし今回行っているのは価格押し上げと供給削減ではなく、その反対だ。
 6月以来、国際石油価格が大幅下落したのを目の当たりにしながら、サウジは減産を拒んだ。
 相場を反転させようとするどころか、11月27日のOPEC総会では減産見送りの音頭を取った。

 この政策は無視できない結果をもたらした。
 過去2年間、1バレル=105─110ドル前後で安定していた北海ブレント油は、6月の112ドルから60ドル近くまで下がった。
 ベネズエラのマドゥロ大統領は10月、「米国とその同盟諸国が石油価格の下落を望むのはなぜだろう」と問いかけた。
 答えは「ロシアを痛めつけるため」だろうか。

 この答えは一部正しいが、サウジの策略はもっと複雑だ。
 同国が仕掛けた最新の「石油戦争」には標的が2つある。
★.従来型石油と競合するには価格の高止まりを必要とする米シェールオイル生産者を市場から締め出すのが1つ。
だがより大きな狙いは、
★.シリアの内戦においてアサド政権を支えるロシアとイランを罰することにある。

 内戦が勃発した2011年以来、中東諸国と世界の列強はシリアを舞台に代理戦争を繰り広げてきた。
 サウジとカタールがシリアの反体制派に武器を提供しているのに対し、
 イランと、それより程度は落ちるがロシアは、アサド大統領が権力を維持できるよう武器や資金を供与してきた。

 米国がイラクに侵攻した2003年以来、アラブ世界の伝統的な中核国であるエジプト、サウジアラビア、その他湾岸諸国はイランの影響力拡大に神経を尖らせてきた。
 核開発の野望、イラク政府に対する影響力の拡大、イスラム教シーア派民兵組織ヒズボラとイスラム原理主義組織ハマスに対する支援、シリアとの同盟関係などだ。

 この紛争は今やイラン対サウジの本格的代理戦争へと発展し、中東地域全体に広がっている。
 双方ともこの戦いを次第に「勝者総取り」と見据えるようになった。
 レバノンにおいてヒズボラが優勢を確保すれば、同国でシリア反体制派のスンニ派が、ひいてはその保護者たるサウジがイランに敗北を喫することになる。
 イラクにおいてシーア派主導の政府が支配権を盤石のものとすれば、イランの白星はまた1つ増えるだろう。

 サウジ王家は現在、バーレーン、イエメン、シリア、その他どこであれ、イランの魔の手が伸びる恐れがある国との同盟強化を急いでいる。
 そして伝家の宝刀、石油を使ってイランとロシアに巻き返しを図ろうとしているのだ。

 ロシアとイランは石油価格の安定に大きく依存している。
 数多くの試算によると、ロシアが予算公約を守るには石油は1バレル=100ドル前後を保っていなければならない。
 西側諸国からの制裁と経済的孤立に直面するイランは、さらに高い価格を必要としている。
 イランは既にサウジの戦略によって経済的打撃を被った。
 OPEC総会の減産見送り決定を受け、11月30日にイランの通貨リアルは対ドルで6%近くも下げた。

 サウジ自体は石油安の影響から身を守れると信じている。
 価格の下落分はいつでも生産増加によって補える。
 あるいは7500億ドルに上る外貨準備に少し手を付ければ、収益悪化の打撃を和らげることが可能だと。

 とはいえ、サウジが危険な賭けを演じていることは確かだ。
 イランやロシアのような独裁的体制が経済圧力によって行動を変える保証はない。
 さらに悪い可能性としては、サウジの策略が裏目に出て、ロシア、そして特にイランが中東におけるサウジの影響力拡大に対し、いよいよ態度を硬化させることが考えられる。

 シリアとイラクで代理戦争を繰り広げることにより、サウジはロシアおよびイランとの石油戦争を引き起こすリスクを冒している。短期的にはサウジが勝利を収めるかもしれない。
 しかし宗派間の争い同様、サウジの行為はだれにも制御できない大火に発展する恐れを秘めている。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



ロイター 2014年 12月 17日 17:16 JST
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPKBN0JV0K520141217

焦点:ルーブル危機、「プーチン帝国」崩壊への序曲か

[モスクワ 16日 ロイター] -
  ロシアの通貨ルーブルは16日に急落、本格的な通貨危機の様相を呈してきた。ルーブルがこのまま下げ止まらなければプーチン大統領の指導力に疑問符がつき、「帝国崩壊」が現実味を帯びてくるかもしれない。

 底なしの原油価格下落、リセッション懸念もささやかれる景気、ウクライナ危機を受けた欧米の制裁を背景に、ルーブルは下値を切り下げてきた。
 中銀は政策金利を17%までいきなり引き上げるという緊急利上げに打って出たが、ルーブル下落を食い止めることはできなかった。

 プーチン大統領は、ルーブル急落の「犯人」は投機筋と西側諸国だと断定。
 大統領報道官は「感情と投機的なムード」が原因と述べた。

 ルーブル相場RUBUTSTN=MCXは16日、米ドルに対して約11%下落しており、1998年のロシア財政危機以来の大幅な下げを記録した。
 今週に入って20%下落、年初来では50%以上も下落している。

 通貨危機は何を意味するのか。
 経済にとっては、金利の上昇で成長がさらに鈍化し、来年はリセッションが一段と進むことが見込まれる、ということだ。
 企業にとっては、不透明感が強まり、資金調達が難しくなることを意味する。
 そして、中央銀行にとっては信頼感の危機だ。

 プーチン大統領にとっては、国民がこれまで大統領を支持してきた理由、つまり金融の安定と繁栄が失われることを意味する。
 欧米との関係が冷え込むなか、頭痛の種がこれ以上増えるのは避けたいところだ。

 スピロ・ソブリン・ストラテジーのマネジングディレクター、ニコラス・スピロ氏は、ロイターに対して
 「プーチン氏はこれまで、原油価格の上昇を背景として、権力を欲しいままにしてきた。
 経済が今後、政局にマイナスの影響を及ぼし始めることに、疑問の余地はない」
と指摘。
 「政権の持続可能性が揺らぎ始めるのではないか」
ともしている。

 今年3月のクリミア編入以来、プーチン大統領の支持率は80%を超えている。
 政敵を次々と排斥した結果、政権を脅かすような目立ったライバルはおらず、巨大国営企業の大半は大統領の側近の掌中にある。

<国民にパニックの兆候なし>

 ロシア国民の間にパニックの兆しはない。
 国民の主な情報源である国営メディアは事実上、プーチン大統領の傀儡(かいらい)であり、ルーブル急落についても、投機筋と西側の攻撃だと報じているからだ。

 1998年の財政危機時の混乱とは異なり、16日朝方も両替所に行列はできず、食料を買い占める動きもない。
 デモも発生していない。

 ただ、ルーブル安と景気悪化への不満は今後、大都市の中間層の間に徐々に広がり、大統領の支持基盤の地方にも波及する可能性がある。

 世論調査機関レバダ・センターのレフ・グトコフ所長は、電話で
 「大統領への支持は1年半から2年ほどは持つだろうが、来年の春ごろには、不満の最初の兆候が見られ始めるかもしれない」
と述べた

 エリツィン元大統領は財政危機後に辞任に追い込まれている。
 ゴルバチョフ元ソ連大統領は経済難をきっかけに権力基盤が揺らいだ。
 プーチン大統領は「先輩諸氏」の運命に思いをはせているのかもしれない。

<頼みの綱は原油価格の回復>

 プーチン大統領とメドベージェフ首相、ナビウリナ中銀総裁に残された時間は少なく、早急な行動が必要。
 ただ、選択肢は多くはない。

 政府がウェブサイトで明らかにしたところでは、メドベージェフ首相は16日、中銀や政府の高官と会談し、現状について意見交換した。

 ロシア中銀は10月に1.5%ポイント利上げ、先週1%ポイント利上げ、今回6.5%ポイント利上げと、この2カ月の間に3度と矢継ぎ早の利上げを実施してきた。
 ただ思うような効果は上がっていない。

 ルーブル相場が下落すれば、原油や金属、穀物、天然ガスの輸出収入がルーブル建てで増えることになり、国庫が潤う。
 一方、海外への借金返済はルーブル建てで膨らむ。ロシアの企業と銀行は来年、1200億ドルの債務が返済期限を迎えるため、信用収縮の再発が懸念される。

 ウクライナ問題を受けた制裁により、国際資本市場での資金調達が制限されていることも、苦境をより深刻なものにしている。
 対外債務の返済期限到来は、来年だけでなく今年もあることにも留意が必要だ。

 ロシア政府は、資本規制は導入しないと繰り返し宣言している。
 しかしアナリストの多くは、資本規制は不可避と考えている。
 2014年と15年の資本流出は1000億ドルを大幅に上回る可能性がある。

 中銀は金・外貨準備を引き出してルーブルを買い支えてきたが、それも長くは続けられないかもしれない。
 ロシアの準備高は、年初頭には5090億ドルを超えていたが、今では4160億ドルに減っている。

 プーチン大統領にとって、原油価格の急上昇に望みをかける以外、選択肢はないのかもしれない。
 原油価格は現在1バレル=60ドルを割り込んでいるが、ロシアの財政均衡には100ドルへの上昇が必要だ。

(Timothy Heritage記者 翻訳:吉川彩 編集:佐々木美和)



レコードチャイナ 配信日時:2014年12月19日 14時54分
http://www.recordchina.co.jp/a99341.html

中国はロシアが倒れることを望んでいない―中国メディア

  2014年12月19日、原油価格の下落とルーブルの急落によってロシア経済は今世紀に入って最も困難な境地に置かれている。
 ルーブルは15日、対ドルで8%下落。今月16日にはさらに急落し、世界的な事件となった。
 今年ルーブルの価値は50%以下に下落し、ウクライナの通貨フリヴニャを上回る、世界で最も不安定な通貨となった。
 ロシア経済を支える力強い要素は現在見られず、今後どうなるかは予測困難だ。

 ソ連崩壊が1980~90年代の原油価格長期低迷期に起きたことを多くの人は連想する。
 さらなる経済危機はプーチン政権を試練にさらすと指摘する声もある。
 西側メディアはプーチン大統領の「強硬姿勢」が手痛い打撃をこうむると次々に予測。
 戦略的に「守勢と自己防衛」に転じると分析するものもあれば、「さらに過激になる」ことを懸念するものもある。

 ロシア経済・社会は1990年代のソ連崩壊当初よりもさらにひどい状況になるのだろうか?
 これは興味深い問題だ。
 当時と比べ、ロシアの工業・農業生産能力に大きな変化はない。
 新しく増えた不利な要素は西側の制裁と露米対立の先鋭化だ。
 ソ連時代と比べ、ロシアの全体的国力は大幅に下降し、戦略の幅も狭まった。

 今日のロシアにとって有利な要素は、社会の結束力が高まり、プーチン大統領の威信が高いこと、そしてソ連崩壊でひどい目にあったことから、ロシア国民が国家の困難に対して冷静かつ合理的な考えを持っており、西側に対してもう幻想は抱いていないことだ。

 中国はロシアの戦略環境にとって最大の変数だ。
 ソ連崩壊前後、中国は国際的地位が低く発言力も弱かったが、現在では世界の戦略構造における新しい広大な天地となっている。
 このため西側ではなく東側に目を向けることがロシアにとって現実的選択肢ともなっている。

 すでに中露関係はロシアが戦略上のリスクに対抗するうえで鍵となる条件の1つと見なされている。
 中国社会の観点からは、ここには整理し、明らかにする必要のある点がいくつかある。

(1):中露戦略協力はイデオロギーによる作品ではもうなく、両国の国益の相互作用による傑作だ。
 米国と西側に弱みを見せないロシアは中国と国益面で策応し、中露は互いを必要としている。
 これは背中合わせの戦略関係だ。

(2):中国には肝心な時に、肝心な分野でロシアを支援する能力がある。
 だが中国の対露支援はロシア政府から要請があった時に、正常な国家間協力の形で行われるべきだ。
 中国はロシアを高度に尊重し、ロシア社会におけるプーチン大統領の威望を守る必要がある。

(3):今回の危機のたゆまぬ深化は、ロシア社会の戦略観にとって新たな試練となる。
 ロシアが危機のために中国に接近し続けるというのは仮説に過ぎず、不確定性が多い。
 中国が中露両国の根本的利益にプラスの影響力を与え、誘導することができるかどうかも試されることとなる。

 中国はすでに一挙手一投足が全局面に影響を及ぼす世界的経済大国だが、これまでに発揮してきた政治的影響力は多くが間接的なものだった。
 ロシア危機は経済的側面が強いが、その今後の行方は世界の政治に関わってくる。
 現在各国が騒がしいなか、中国は声を発していないが、遠くへ行ったわけではない。中国はロシアが倒れることを望んでいない。
 この姿勢は全世界がよく分っている。

(提供/人民網日本語版・翻訳/NA・編集/武藤)
』 


ブルームバーグ 更新日時: 2014/12/18 13:08 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NGRBL36TTDS401.html

ベネズエラは恐らく来年デフォルト状態に陥る-ソシエテG

  (ブルームバーグ):原油価格の急落に伴い、ベネズエラは恐らく来年デフォルト(債務不履行)状態に陥るとの見解を仏銀ソシエテ・ジェネラルが示した。

 ソシエテ・ジェネラルのクレジット・ストラテジスト、レジ・シャトリエ氏は17日、ロンドンからの電話インタビューで、
 「原油のこうした動きはベネズエラがデフォルト状態となる可能性が高いとの私の見解裏付ける。
 時期は10-12月(第4四半期)の可能性が非常に高く、1-3月(第1四半期)も若干あり得る」
と説明した。



ロイター 2014年 12月 17日 15:18 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0JV0E020141217?pageNumber=1&virtualBrandChannel=14298

アングル:原油安で貿易赤字は来春半減か、不安は「逆石油ショック」

[東京 17日 ロイター] -
 11月貿易赤字は、前年比で31.5%減と大幅に縮小した。
 内需停滞で輸入数量が減少したことに加え、原油輸入価格の前年比下落も赤字縮小に直結した。

 しかし11月の原油の輸入価格は1バレル=87ドル程度と、足元の大幅な相場下落からみればまだかなり高めで、来春には貿易赤字が現状の半分程度に縮小する見通しも浮上している。
 逆石油ショックが起これば、輸出もマイナスに転落して経済収縮に直面するリスクもある。

 11月の貿易赤字は前年同月比で3割程度縮小し、8900億円となった。
 円安で輸入価格は増加したが、内需の低迷で輸入数量が大きく減少したためだ。
 原油輸入も円安による価格上昇を原油安が緩和した面もある。

 もっとも原油価格の下落はまだ十分反映されておらず、1バレル=87ドル(ニッセイ基礎研試算)での輸入価格となっている。
 年初の110ドル程度に比べると2割程度下落しているが、現状の60ドル割れの原油相場が反映されるのはもう少し先となる。

 相場下落が入着原油に反映されるまでのタイムラグや、為替相場が1年前の1ドル100円程度から116円程度(11月平均)まで円安が進行したことも、円ベースの輸入価格がさほど下がらないことに影響している。

 年間で27兆円の鉱物性燃料の輸入金額が2割低下しただけでも6兆円分の輸入額削減につながり、年間貿易赤字額が半減されることになる。

 ニッセイ基礎研究所・経済調査部長・斉藤太郎氏は
 「現時点の9250億円の赤字(季節調整済)は、15年春ごろには5000億円程度の赤字まで縮小する」
と指摘、来春にも赤字が半減するとの予測も浮上している。

 一方、11月の輸出金額は5%程度の増加となった。
 数量ベースでは9、10月の持ち直しから11月に1.7%減と、一進一退が続いているものの、ドル建て分の輸出は円安の効果で金額増につながった。

 今後の輸出環境を見渡せば、しばらくは円安の恩恵で輸出金額自体は伸びていくことになりそうだ。

 ただ、輸出環境については、原油価格の下落が世界経済への不安を誘い、米国経済のみが好調さを維持したとしても、世界全体の低成長リスクはぬぐえない面がある。

 それでも輸出環境の改善を見通すエコノミストも多い。
 「米国向け輸出の主力製品である自動車については、国内メーカーの現地生産化の進展によって伸び悩んでいるものの、企業部門の回復に伴い、資本財を中心とした輸出の増加が期待される。
 米国依存度が高い中国以外のアジア新興国経済に関しては、米国の景気拡大にけん引されて増勢を強める」(大和総研・チーフエコノミスト・熊谷亮丸氏)
といった見方がある。

 こうした輸出金額の改善が期待通りに進めば、輸入額削減とあいまって貿易赤字の縮小にも寄与するはずだ。

 原油安はサウジアラビア初め中東諸国の減産の意思が見られない中で、底が見えない状況が続いている。
 原油輸入価格が円安に阻害されずにストレートに輸入金額の減少に反映されれば、懸案のエネルギーコスト上昇から解放される。

 日本経済全体に交易利得をもたらせば、それが企業や家計にもさまざまな恩恵が及ぶとして、政府としても、急速な円安の一段落と原油価格の下落のシナリオが来年の日本経済に恩恵をもたらすと期待感を示している。

 ただ、その前に原油価格の下落が急速に進んでいることで、新興国懸念を起点として世界のマーケットに「逆石油ショック」が波及しかねない情勢も見え始めてきた。
 株安が広がれば、リスクオフ心理が実体経済を収縮させる懸念も、足元で急速に広がっている。

 そのケースでは、輸入額とともに輸出額も減少に転じ、経済収縮のスパイラルに陥る危険性もある。
 プラスになるかマイナスに転ぶか──。
 その帰すうは、原油価格の下落ペースが握っている
と言えそうだ。





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