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時事通信 12月31日(水)15時53分配信
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2014123100149
南シナ海に「不沈空母」も
=中国、急ピッチで人工島建設―比越は警戒、米と連携強化
南シナ海では2015年も、中国とフィリピン、ベトナムなどによる領有権争いの行方に注目が集まる。
「九段線」を設定し南シナ海のほぼ全域の権益を主張する中国は、南沙(英語名スプラトリー)諸島の岩礁を「人工島」に変え、飛行場建設とみられる動きを急ピッチで進めるなど、実効支配を加速。
警戒するフィリピンとベトナムは、米国などとの連携を深め、けん制しようとしている。
◇「島」既成事実化か
中国は、南シナ海の中心に位置する南沙諸島の実効支配する岩礁で埋め立てなどの作業を進めているが、中でも米国や周辺国が最近になって懸念を強めているのが、永暑(英語名ファイアリークロス)礁での人工島建設だ。
軍事情報大手IHSジェーンズによれば、幅200~300メートルで全長3キロ以上。
中国が南沙諸島に初めて飛行場を設営する動きとみられている。
軍艦などが停泊できる港も建設中で、飛行場とともにレーダー基地や補給施設などが整備されれば、南シナ海における「不沈空母」として軍事拠点になりかねない。
日本の軍事専門家は「東シナ海と同様、南シナ海への防空識別圏設置をにらんだ布石ではないか」との見方を示す。
永暑礁の埋め立て面積は0.9平方キロ以上で、台湾が実効支配する同諸島最大の太平島のほぼ2倍。
一部の中国メディアは「永暑島」の表記を用い始めており、海洋権益拡大に向け、排他的経済水域(EEZ)を主張できる「島」への格上げを既成事実化する可能性も指摘される。
◇米の後ろ盾
経済力を背景に多額の費用を掛けて実効支配を強化する中国に対し、鋭く対立するフィリピンは米国との軍事協力強化や国際法に訴えることで、中国の動きに歯止めをかけたい考えだ。
14年4月には米国と新軍事協定を締結し、1992年に撤退した米軍の事実上の再駐留を認めることで軍事面の後ろ盾を得た。
ガズミン国防相によれば、協定締結後、実効支配するアユンギン礁で中国船による妨害活動は起きていないという。
フィリピンが13年に提起した国連海洋法条約に基づく国際仲裁裁判について、2国間解決を主張する中国は「仲裁裁判所に管轄権はない」(外務省)と拒否したまま。
ただ、フィリピンは「中国が参加しなくても審理は進む」(外務省報道官)と意に介さない姿勢で、アキノ大統領の任期が終わる16年6月までに判決を得る方針だ。
一方で15年は、フィリピンがアジア太平洋経済協力会議(APEC)議長国となり、秋にも開催される首脳会議の場ではアキノ大統領と習近平国家主席との初会談も予想される。
首脳会談をにらみ、妥協が探られる可能性も否定できない。
◇対立再燃も
ベトナムは表向き強硬だ。
中国がフィリピンの国際仲裁手続きを改めて拒否したことに対し、ベトナム外務省報道官は
「中国の一方的な領有権の主張を拒否することが、ベトナムの一貫した立場だ」
と反論し、フィリピンを事実上支援した。
16年初めにベトナム共産党大会を控え、次期書記長候補と目されるグエン・タン・ズン首相としては弱腰を見せられないという事情もあり、中国の出方次第では、14年5月に石油試掘をめぐり起きた中越対立が再燃する恐れもある。
ただ、陸続きの両国は政治・経済両面で緊密な関係にあり、特にベトナムにとって中国は輸出の1割、輸入の3割を占める最大の貿易相手国。
軍事力では太刀打ちできず、全面対決は選択肢になり得ない。
対中利害が一致する米国や日本との連携を強めながら、慎重に戦略を練ることになりそうだ。
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