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2014.10.06(月) The Economist
香港デモ:中国共産党と国民の争い
(英エコノミスト誌 2014年10月4日号)
中国共産党は、天安門事件以来最大の困難に直面している。
今回は、あの時よりも賢明な判断を下さなければならない。
●香港の民主化要求デモで、雨傘をかざし警官隊のペッパースプレーを遮る参加者たち〔AFPBB News〕
世界史上、最も多くの血が流された10の紛争のうち、2つは世界大戦だった。
残り8つのうちの5つは、
中国で起きたか、中国に端を発したかのいずれかだ。
1つの国の中でこれほどの規模の虐殺が起き、これほどの頻度で国が血に染まるのは、ほかの国には理解しがたい。
★.19世紀半ばの太平天国の乱では、2000万人を超える死者が出た。
★.その10年後の漢民族とイスラム教徒の衝突では、さらに800万~1200万人が犠牲になった。
★.20世紀には、毛沢東政権下で2000万~3000万人が死亡した。
一部は殺され、多くは統治の無情さと無能さの結果生じた飢饉の犠牲になった。
中国共産党の指導者たちが必死に権力にしがみついているのは、間違いなく自分たちのためだろう。
だが、彼らがあれほど頑なに、偽の民主主義に代わって本物の民主主義を求める香港のデモ隊の要求をはねつける理由は、中国の暗い歴史からも説明できる。
中国の習近平国家主席とその仲間たちは、共産党による支配こそが、国の安定を保証する唯一の道だと信じている。
党が手を緩めたら、この国は無秩序と災厄に陥ると恐れているのだ。
確かに、専制政治は短期的には国の安定を保てる。
だが長期的には、中国自身の歴史が示している通り、安定を維持することはできない。
国の安定を保証する唯一の要素は、
国民が政府に満足
していることだ。
そして中国では、共産党に対する不満が高まっている。
■悪い兆し
デモ参加者が警官隊の催涙スプレー(と日差しと雨)を遮るために携えている傘にちなんで「雨傘革命」と名付けられた今回の香港の抗議活動のきっかけは、中国政府が8月末に、香港の次期行政長官選挙の候補者を、共産党支持者が大半を占める「指名委員会」により絞り込むと決めたことだ。
抗議活動の参加者たちは中国政府に対し、香港が英国から中国に返還された1997年に交わされた「民主主義を維持する」という約束を守るように要求している。
香港ではどんなことでも大抵そうだが、抗議活動は驚くほど秩序立っている。
警官隊と夜間の衝突があった翌日には、学生たちが街路に散らばるペットボトルを集め、リサイクルに回していた。
香港ではどんなことでも大抵そうだが、抗議活動は驚くほど秩序立っている。
警官隊と夜間の衝突があった翌日には、学生たちが街路に散らばるペットボトルを集め、リサイクルに回していた。
一部のデモ参加者にとって、民主主義は基本的な理念に関わる問題だ。
また別の参加者は、中国本土の中間層の人々と同様、住居や教育、自身の仕事の先行きを心配している。
彼らが代議制を求めるのは、現在の政治の形に不満があるからだ。
その動機が何であれ、香港の抗議活動は、共産党を悩ます問題を体現している。
また別の参加者は、中国本土の中間層の人々と同様、住居や教育、自身の仕事の先行きを心配している。
彼らが代議制を求めるのは、現在の政治の形に不満があるからだ。
その動機が何であれ、香港の抗議活動は、共産党を悩ます問題を体現している。
今回の抗議活動は、カイロやキエフで独裁者を倒したここ数年の暴動を思わせるだけでなく、25年前に天安門広場に集まった学生による抗議活動も思い起こさせる。
天安門広場の学生たちに発砲するという判断は、秩序の回復には効果があったものの、同時に不信を生んだ。
その不信は今でも、中国に対する世界の扱い、そして中国国民に対する中国政府の扱いの隅々に浸み込んでいる。
その不信は今でも、中国に対する世界の扱い、そして中国国民に対する中国政府の扱いの隅々に浸み込んでいる。
■共産党が駆使する共産主義と植民地主義の戦術
中国共産党は香港に関して、共産主義と植民地主義を組み合わせた戦術を採っている。
政府の報道官はデモ隊について、
「政治過激派」であり、「反中国の外国勢力」に操られた
「犯罪組織」だと非難し、
「自らまいた種を刈り取ることになる」
と警告した。
こうした表現は、共産党がこれまでさんざん中傷に使ってきた言葉遣いそのものだ。
同じ言葉は、天安門広場のデモ隊を貶めるためにも使われた。
同じ言葉は、天安門広場のデモ隊を貶めるためにも使われた。
これらの言葉が映し出すのは、香港でも中国のほかの地域でも、
長年にわたって民主派と向き合うのを避けてきた中国政府の姿勢だ。
長年にわたって民主派と向き合うのを避けてきた中国政府の姿勢だ。
この表現からは、共産党の幹部が、中国返還後も大きな自由を維持してきた国際都市・香港を、単に中国の一部としか見ていないことも透けて見える。
中国のほかの地域と同様、外国人との闇の結びつきを非難すれば、批判者たちを怖気づかせられると考えているのだ。
党の香港政策に長年深く関わってきた習主席なら、もっと分別があってもいいはずだ。
共産党はそれと同時に、植民地主義者が現地のちょっとした厄介事に対処する際に使っていた手法も採用している。
英国は、香港の大立て者の支持をカネで買って抗議活動を包み隠してきた――共産党はこれを激しく非難してきた。
しかしその英国と同じように、
習主席は香港の大富豪70人を集めて北京で会合を開き、民主主義に対する自身の姿勢への支持を固めた。
香港にいる党の支持者は、安定を保つためにはビジネスを香港に呼び込むことが良策だと主張しているが、香港の街頭で見られる政財界の大物に対する怒りは、それとは反対のことを示している。
だが、これまでのところ、デモ隊への勧告と党側への取り込み、そして催涙ガスの組み合わせでは、街頭のデモ隊を一掃できていない。
中国政府は現在のところ、デモが過ぎ去るのを待とうとしている。
しかし仮に、習主席が
「安定を保つための唯一の方法は、党の統制力を改めて誇示することだ」
と信じているのなら、武力行使を認める可能性も捨てきれない。
そうなれば、香港にとって大惨事となる。
しかし、それでも習主席の問題を解決することはできないだろう。
中国本土も落ち着きを失いつつあるからだ。
党の幹部は、本土の国民に香港の事態を知られないようにするため、可能な限り手を尽くしている。
それでも、香港の街頭の最新ニュースは、何らかの経路で中国本土に伝わる。
そして、このドラマの展開の仕方が、中国政府の国民との関係を方向付けることになる。
それでも、香港の街頭の最新ニュースは、何らかの経路で中国本土に伝わる。
そして、このドラマの展開の仕方が、中国政府の国民との関係を方向付けることになる。
共産党にとって頭が痛いのは、
本土の国民が本格的な民主主義を切望している兆候はほとんどないものの、
地方政府に対するたび重なるデモやソーシャルメディア上で広がる怒りの表明から、
本土でも多くの国民が現在の政治に不満を抱いている事実が見え隠れしている
ことだろう。
目下の香港のデモは、抑圧と取り込み、そして実力行使により黙らせることはできるかもしれないが、
そう遠くないうちに、別の都市でも別のデモが起きるだろう。
■別の種類の秩序
習主席は、権力の掌握を進める過程で、欧米風の民主主義は容認しないことを明確にしてきた。
だが、国民の要求を抑えつけるやり方は、時折の悲惨な動乱という代償を払って、一時的な安定を手に入れているにすぎない。
中国に必要なのは、国民が抗議活動という手段に訴えて、国の核心を巡る闘いに発展するリスクを冒さなくても、自国の政治を形作れるようにする方法を探ることだ。
だが、国民の要求を抑えつけるやり方は、時折の悲惨な動乱という代償を払って、一時的な安定を手に入れているにすぎない。
中国に必要なのは、国民が抗議活動という手段に訴えて、国の核心を巡る闘いに発展するリスクを冒さなくても、自国の政治を形作れるようにする方法を探ることだ。
表現の自由と、本土とのつかず離れずの関係という歴史を持つ香港は、そうした実験を始めるにはうってつけの場所だ。
習主席がそのチャンスをものにすれば、暴力に満ちた広大な国の安定維持に苦労してきた歴代のどの皇帝や党総書記よりも、中国に貢献することができるだろう。
習主席がそのチャンスをものにすれば、暴力に満ちた広大な国の安定維持に苦労してきた歴代のどの皇帝や党総書記よりも、中国に貢献することができるだろう。
© 2014 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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『
レコードチャイナ 配信日時:2014年10月6日 10時25分
http://www.recordchina.co.jp/a95233.html
雨傘革命にまともに向き合えば、「中国は開明国家」とアピールできたはず
=その機を逸した中国政府―独紙
2014年10月5日、RFI中国語版は記事
「中国が香港で逃した歴史的チャンス―独紙」
を掲載した。
香港・雨傘革命の推移にドイツメディアも注目している。
独テレビ局ARDは危機が深刻化していると報じた。
香港政府が抗議活動家に、道路封鎖を取り止めなければ強制排除も辞さないと最後通牒をつきつけたことに加え、抗議活動の占拠地域では住民や商店主が抗議者にくってかかる場面も続出している。
独紙ディ・ヴェルトは中国政府が歴史的チャンスを逃したと評している。
中国本土でも市民社会の自信が高まりつつある今、香港の抗議活動に向き合うことで中国は経済だけでもなく社会政策においても近代的かつ開明的になったとアピールするチャンスだった。
今後、中国本土でも抗議活動が頻出することは間違いない。
その抗議活動がどれほどの社会的動揺をもたらすものとなるのか。
それは中国共産党がどれだけ民意に向き合えるかにかかっている。
』
『
2014.10.07(火) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41901
香港を揺るがしたデモはどのように終わるのか?
双方が大詰めを模索する中、言葉遣いがエスカレート
(2014年10月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
香港を揺るがした騒々しい1週間は、民主派のデモ隊への催涙ガス発射に始まり、一見して組織的な街頭での暴力行為で終わった。
その間、見事に組織化され、終始礼儀正しい数万人の学生が「本物」の普通選挙を求めて世界有数の金融センターのいたるところにテントを張り、お祭り騒ぎのような祝賀の場面が見られた。
だが、追い詰められた梁振英・香港行政長官と、国営メディアが抗議運動を「無駄」と一蹴した北京の中国政府の発言がともにエスカレートする中、
誰もが知りたかったのは、これがどのように終わるのか、
ということだった。
学生たちが辞任を求めている梁長官は、6日までに秩序を回復するために「あらゆる必要な措置」を講じると述べ、事態がいっそう緊迫した。
■支持者からも「部分的な勝利を宣言し、撤収を」の声
大学の学者を含む学生たちの支持者の中には、けがをする前に街頭から撤収するよう懇願する者もいた。
5日夜、多くの抗議者は、警察が攻撃してくれば退去すると語っていた。
「これがひどい結果になる可能性は何通りもある」。
香港科技大学の中国専門家、崔大偉氏はこう語り、学生たちは潜在的に暴力的な弾圧に直面するより、むしろ部分的な勝利を宣言し、家に帰るべきだと警告した。
同氏によると、さもなくば、長引く持久戦かスピード検挙とさらなる催涙ガスのどちらかによって学生たちが敗北することになるという。
抗議デモは10日前、政府庁舎の占拠で始まった。
以来、参加者の数が増減し、デモ隊と政府のいたちごっこの力学が変化する中で、デモはいくつかのはっきり異なる――そして多くの場合、入り組んだ――段階を経てきた。
抗議行動は、17歳の大学生、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏が率いた9月26日の最初の政府庁舎占拠によって引き金が引かれた。
その後、民主派団体の「和平占中(オキュパイ・セントラル)」が、中心部のビジネス街を占拠する計画を前倒しした。
その次に起きたのが、9月28日夜の催涙弾の発射だった。
催涙弾の発射は、警察の強硬措置に不慣れな多くの香港市民に衝撃を与え、デモ隊に共感する人々の新たな群れが街頭に繰り出すことになった。
10月1日の国慶節(建国記念日)の祝日が近づくと、警察隊は事実上、街頭から姿を消した。
これにより街のあちこちに祝宴ムードが漂った。
雰囲気を暗くしたのは、次に起こるかもしれない出来事への拭いきれない不安だけだった。
1997年の返還と2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)集団発生を乗り越えた市場は揺らいだが、その度合いは大きくなかった。
香港のハンセン指数は先週、2.6%という小幅な下げにとどまった。
3日には、デモが自然と消滅する兆しが見られる中で0.6%上昇した。
香港ドルはやや弱含んだものの、米ドルとのペッグ(固定)はしっかり保たれた。
「ビジネスの観点から言えば、我々のオフィスはすべて開いているし、トレーディングフロアも開いている。
支店が2つ、3つ閉店しているだけだ」
とある銀行家は語った。
だが、3日夜になると、一部が犯罪組織「三合会(トライアッド)」と関係があるとされるギャングが九龍地区の旺角(モンコック)でデモ隊を襲撃し、ムードが再び決定的に変わった。
■デモ参加者の9割が20~30歳、譲歩なくして帰宅させるのは困難
その多くが敢然と非暴力の原則を貫いた民主派の支持者は、彼らが襲撃された際に、警官隊が傍観したと非難した。
ビクトリア湾を挟んで抗議運動の主要会場の対岸にあるショッピング街・旺角の一角は、学生とオキュパイ・セントラルのデモに反対するデモの参加者が戦いを続ける中で、事実上、立ち入り禁止区域となった。
折に触れ、民主派が形のない運動を戦術的に統制しようと試み、民主派の指導者の間で論争が起きた。
抗議行動が過度に分散してしまったかどうか、当局と対話すべきかどうかについて意見の対立があった。
ベテラン活動家の何俊仁(アルバート・ホー)氏は、具体的な譲歩を得ることなく学生を帰宅させるのは難しいと語る。
「デモ参加者の90%が20~30歳だ。
どうすべきか彼らに伝え、聞き入れられることを期待することはできない」
信頼できる世論調査がないため、デモに対する市民の共感を測るのは難しい。
香港のほとんどの人たちはさらなる民主化を望んでいると言うが、学生の行動をナイーブだと見る向きもある。
■香港の「本土化」を遅らせることができれば御の字?
批判的な向きは、民主派陣営は、限定的な普通選挙を行うという北京の提案を拒絶することで、結局すべてを失うことになると主張してきた。
500万人の登録有権者が(中央政府の)事前審査を受けた候補者リストから選ぶ、2017年の選挙に向けて提案された制度の代わりに、次期行政長官は現行ルールの下で選ばれることになるからだ。
梁・現長官は1200人から成る北京寄りの指名委員会で、わずか689票を確保して選ばれた。
「中国を変えることはできない」。
崔大偉氏はこう語る。
「できるのはせいぜい、私が香港の『本土化』と呼ぶものを遅らせることだ。
学生にそれ以上のことができるかは分からない」
By David Pilling in Hong Kong
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2014.10.10(金) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41933
香港はもう2度と元に戻らない
民主主義を求める切なる願い、
政治的に不安定な時代が到来
(2014年10月9日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
学生と香港政府の掛け金の高いポーカーゲームがありがたいことに流血沙汰もなく終わりに近づく中、民主派デモが香港にどんな長期的インパクトを与えるか考えるのも早すぎはしないだろう。
まず結論から述べるなら、この戦いの結末はあらかじめ決まっていた。
香港は「真の」民主主義を採用すべきだとする学生たちの中核的な要求は、最初から通る見込みがなかった。
■胴元が必ず勝ついかさまポーカー
北京は8月末に中央政府としての決定を言い渡し、香港の選挙規則に厳しい制限を設けていた。
そのため、北京が学生たちの要求に屈することは、まず考えられなかった。
もしこれがポーカーゲームなら、それはいかさまだった。
胴元が常に勝つのだ。
確かに、梁振英行政長官が率いる香港政府と民主派の活動家の「交渉」がこれから行われる。
だが、香港の当局に交渉できる余地はほとんどない。
出されている提案の中で最善のものは、指名委員会――現在はたった1200人しかいない――の少なくとも半数のメンバーが、香港の500万人の有権者がそこから選択できるように2人ないし3人の候補者を選ぶ制度だ。
一般市民による候補者指名は問題外だ。
一般有権者による選挙のために、アンチ北京の候補者は言うまでもなく急進的な候補者を選べるような制度は許されない。
対話を続けるには、学生側が重要な原則をいくつか捨てなければならない。
■天安門広場との比較は行き過ぎだった
では、過去10日間の驚くべき出来事は何を意味したのか?
少なくとも3つの重要な疑問が提起された。
1].まず、香港は元に戻ることがあるのか?
2].第2に、何かが達成されたのか?
3].第3に、後から振り返ると、天安門広場との比較は行き過ぎだったのか?
疑問とは逆の順番に答えていくなら、天安門広場との比較は魅力的だったが、ミスリーディングだった。
1989年の北京と同様、香港でも学生が抗議行動を率い、一党支配国家の無情な現実に対して自分たちの理想主義を掲げた。
だが、地理的なところから始めれば、香港は狭苦しく活気に満ちた摩天楼都市であり、学生が何週間も何カ月も野営できた天安門広場と比較できるところはない。
デモが始まってから数日で、香港の抗議者たちは時間とお金を失うことに腹を立てた一般市民からの反対に遭うことになった。
それ以上に大きな違いがある。
香港はまだ、一国二制度のモデルに基づいて統治されている。
究極的には学生たちの論争の相手は北京の中央政府だったが、日々の争いの相手は、残酷な弾圧を好まない地元香港の指導部だった。
香港の法律も学生を守った。学生たちのメッセージは自由なメディアを通して広く伝えられ、デモの指導者は独立した裁判所に守られていた。
警察がもっと高圧的だったら何人か死者が出た可能性もあるが、天安門事件のような殺戮は最初から考えにくかった。
カリフォルニア大学アーバイン校のジェフリー・ワッサーストロム教授が指摘するように、中国の歴史上にあった別の学生主導のデモの方が大きな類似点があるかもしれない。
1919年の「五四運動」は軍閥支配を終わらせることはなかったが、高官数人を辞任に追い込んだ。
梁長官が過去の商取引を巡る疑惑と軽蔑の対象となった香港でも、まだその可能性は残っている。
■学生たちが成し遂げたこと
では、学生たちは何かを成し遂げたのか?
情に薄い人は、数十億の小売売上と観光収入が失われたことを除けば、何も成果はなかったと言うだろう。
だが、何も感傷的な人でなくても、新しい世代が民主主義の大義のために行動を起こす光景に感動しただろう。
何万人もの若い香港市民がほぼ一夜にして政治的に成熟し、多くの人が組織化された抗議活動の力――およびその限界――について重要な教訓を学んだ。
香港そのものはどうか?
何しろ香港は、過去にも混乱を切り抜けてきた都市だ。
英国が中国に香港を返還したのは、わずか17年前のことだ。
2003年には重症急性呼吸器症候群(SARS)の集団発生が香港経済を急激に落ち込ませた。
香港は常に立ち直ってきた。
アジア一の国際金融センターとしての地位は、差し当たり安泰だ。
国際金融センターとしての役割を支える法の支配は、総じて言えば再確認された。
北京はかつてないほど香港を必要としている。
中国の経常勘定は閉鎖的で、中国流の資本主義は洗練されておらず、通貨は兌換性を欠く。
北京にとっては、香港は今も、資本を調達し、国内企業が世界標準に耐えられるか試し、人民元の国際化の実験を行うために欠かせない場所だ。
■ビジネスが政治に勝り、お金がイデオロギーに勝る香港はもう消えた
だが、過去10日間の出来事は、永続に消えない心理的な痕跡を残すだろう。
今となっては、香港が、いざとなったら北京の支配に服属する中国の都市であることを疑える人はまずいない。
しかし、それと同じくらい、学生たちが投げかけた根本的な問題がどんな形にせよ決着したと考えられる人もいないだろう。
香港の人々は、空虚な形の民主主義というものがどのような姿をしているか、それを見れば分かる。
多くの人、特に若い世代はそれ以上のものを求める。
これは今後何年にもわたって香港が政治的に不安定になることを意味している。
我々が知っている香港、つまり、
ビジネスが政治に勝り、お金がイデオロギーに勝る街は、もう過去のものとなった
のだ。
By David Pilling
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レコードチャイナ 配信日時:2014年10月6日 11時38分
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香港「雨傘革命」による経済的損失は5兆円
=旅行、飲食業界に深刻な打撃―香港メディア
●5日、香港中評社は、香港の「占中(オキュパイ・セントラル)」運動の影響で商店の経営が影響を受け、経済や住民の生活が苦境に追いやられていると伝えた。写真はデモに参加する香港の市民。写真提供:Hong Kong In-media。
2014年10月5日、香港中評社は、香港の「占中(オキュパイ・セントラル)」運動が1週間を超えたことについて、商業地域の交通が遮断されたことで商店の経営が悲惨な状況に陥り、香港経済や住民の生活が苦境に追いやられていると伝えた。
香港科技大学経済学部の雷鼎鳴(レイ・ディンミン)教授は、控えめに見積もっても経済的損失は3500億香港ドル(約4兆9500億円)、香港人一人あたり5万香港ドル(約70万円)の損失になると予測した。
香港旅行社経営者協会の葉会長は
「香港を訪れる中国人ツアーは一日あたり200組減少している。
ただちに影響が出るものではないが、国家旅游局が国慶節期間中のビザ発給を停止しており、観光客は今後も香港以外の旅行先を選択する可能性がある。
そうなれば長期的な影響が出るだろう」
と述べ、
「香港には旅行社が1700社あり、利潤は薄いにもかかわらず家賃や給与の支払いといったプレッシャーにさらされている。
運動が続くことで旅行と消費が影響を受け、旅行社が数週間にわたって営業できなくなれば、人員の削減を迫られるかもしれない」
と指摘した。
香港ホテルオーナー連合会の李事務局長は、「占中」運動による道路封鎖によって金鐘(アドミラリティ)や中環(セントラル)一帯のホテルの宿泊率が50~60%にまで落ち込んでいると述べた。
香港食品・飲料品業総会の黄主席は、金鍾、旺角(モンコック)銅鑼湾(コーズウェイベイ)エリアの飲食業に一日あたり5000万香港ドル(約7億円)の損失が出ていると述べ、占拠があと1~2週間続けば、飲食業界は持ちこたえられなくなるだろうと語った。
報道によると、「占中」運動の影響を受けた市民が道路の封鎖解除を求めてデモ反対行動を取り始め、デモ隊のテントやバリケードを撤去しに行くなど、市民の間で衝突が起こり始めている。
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毎日新聞 2014年10月03日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20141003ddm008030029000c.html
香港デモ:日系企業、高まる懸念 揺らぐアジアのハブ機能
【北京・井出晋平】香港の民主派によるデモ拡大に対し、日系企業の間にも影響拡大を懸念する声が高まっている。
事態の進展次第では「国際金融センターとしての地位が揺らぎかねない」との見方も浮上。
デモの長期化は、香港経済や日系企業の戦略に影響を与える可能性もある。
香港には、金融や流通など日系企業1300社以上が進出し、アジアのハブ機能と位置づける企業も多い。
香港で国慶節(建国記念日)の休暇が明ける3日は、今のところ「通常通りの営業を予定している」(三菱東京UFJ銀行)企業がほとんど。
「自宅などでも仕事が続けられるよう準備した」(別の日系金融機関)企業もあるため、今のところ金融取引などへの影響は少ないとみられる。
だが、「国際金融センターとしての地位が揺らぎかねない」と懸念する日系企業関係者もいる。
香港は「1国2制度」のもとで自由な経済活動が保障されており、海外の金融機関や企業の投資を集めてきた。
中国への投資、貿易の窓口として香港に拠点を置いている企業も多い。
万一、強権的な手段でデモが鎮静化されるような事態になれば、
「中国本土並みに規制や締め付けが強まり、自由な経済活動が保障されてきた香港の魅力が失われる」
と、この関係者は話す。
今回のデモへの関心は日本以上に欧米諸国で高まっており、
「原因を招いた中国政府の姿勢に不信感を抱く欧米企業が、対中投資をためらう可能性もある」(在上海金融関係者)
との指摘もある。
今回のデモは中国と香港の国慶節の旅行シーズンを直撃し、観光への影響も出ている。
香港紙の報道によると、中国人旅行者数は前年同期比で3〜4割減少し、ホテルのキャンセルが相次いでいるという。
売り上げが9割減少した商店もあるといい、影響は拡大している。
2日付の中国共産党機関紙「人民日報」は、
「経済損失は400億香港ドル(約5600億円)に上る」
との試算を紹介。
デモの長期化は香港自身の損失になるとの見方を示した。
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【描けない未来:中国の苦悩】
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