2014年10月1日水曜日

「金融ハブ」香港の自治に懸念浮上―中国の強硬姿勢で

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●道路に座り込んで警察と対峙(たいじ)する民主化デモ隊 Associated Press



ウオールストリートジャーナル By SHEN HONG and DANIEL INMAN 原文(英語) 
2014 年 10 月 1 日 12:23 JST
http://jp.wsj.com/news/articles/SB11426559292233444529604580187131836533028?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesFirst

「金融ハブ」香港の自治に懸念浮上―中国の強硬姿勢で

 【上海】香港での民主化要求の抗議行動に対処するうえで、中国指導部は大きな要因によって制約される可能性がある。それは、中国の金融システム近代化計画において香港が果たしている重要な役割だ。

 中国は近年、金融自由化のテストケースとして香港を利用してきた。具体的には、厳重に管理された中国の人民元の国際貿易と投資への利用拡大実験を香港に容認した。

 香港の中国へのエクスポージャーは、法の支配への定評と併せて、一大国際金融センターとしての急成長につながった。

 しかし最近の中国の動きは、香港の現在の地位に対する懸念を生じさせている。中国は6月に白書を発行し、香港に対する中国の権限を主張し、香港の行政官は、判事を含め、中国への愛国心を示さねばならないとした。この白書は、ここ数日間の抗議行動の背景にもなっている。

雨と雷のなか民主化求めるデモ隊
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 現在の抗議行動に対する中国の反応は、こうした中国自身の動きの文脈でみると分かる。批判者たちは、そうした中国の動きは香港に対する支配強化をこっそり実現する企てとみている。1997年に香港が中国に返還された際、50年間は香港に高い自治権を付与するとした約束とは裏腹だ。

 厳しい取り締まり、とりわけ中国本土の力による取り締まりが断行されれば、中国は香港の司法制度に介入しているとの見方が強まりかねない。それは金融ハブ(中心地)としての香港の地位を損なう、と一部のエコノミストや投資家は言う。

 ロンドンに本拠を置くマクロ経済調査会社キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ジュリアン・エバンズプリチャード氏は「香港の警察と司法が完全には独立していないと見られれば、それは金融センターとしての香港の役割への信頼を損なうことになるだろう」と述べた。

 そうなれば中国の入口で西側スタイルのビジネス環境を提供しているとして香港を好意的にみてきた銀行や金融会社を失望させかねず、ひいては国際金融システムと中国との相互作用に影響が出ることになる。

 香港在住の人々の中には、香港の役割はそれとは無関係に、将来的に低下すると恐れている向きもある。中国当局が本土で一層の市場改革を容認しているためだ。上海を2020年までに国際金融の中心地にする計画もそこには含まれる。

 現時点で上海は後れを取っている。これは香港が信頼できる司法制度を持ち、金融上の経験に富んでいるため、香港でのビジネスが比較的容易であることも一因だ。中国の資本管理も上海の足を引っ張っている。人民元の流れに対する中国の厳しい管理体制が国境を越える資金の流出入を難しくしているためだ。

 香港のJPモルガン・アセット・マネジメントでアジア市場を担当するチーフストラテジストの許長泰氏は「中国の資本収支管理は依然として、香港がリードを維持する決定要因になっている」と述べた。

 それは、中国の指導者たちに一つの難題を残す。中国指導部は抗議行動を妨害したい。だが、香港の司法制度に干渉している兆候を見せれば、外国金融会社はシンガポールのような他の金融センターに去ってしまうだろう、とエバンズプリチャード氏は指摘する。

 それは上海の金融センター化を目指している中国にとって容認できない状況だ。1年前、中国は自由化政策を実験するため、上海に自由貿易試験区を開設した。しかし投資家たちは失望している。期待された政策、例えば外国企業に人民元建て債券の発行を上海の試験区で認めたり、中国国内の資本市場に対するアクセスを拡大したりするなどの政策が実現していないからだ。

 英国は1997年に香港を中国に返還した。その際、中国は返還後の50年間、香港に高度な自治を約束した。返還前でさえ、中国の国営企業は香港の株式取引所に上場を開始し、必要とする巨額の資本を調達した。中国のほとんどの大手国営銀行、エネルギー企業、そして通信大手はいずれも香港に上場している。

 香港は、中国企業の成長を助けただけでなく、厳しい時期に中国が香港市場から資金を調達するのを可能にした。例えば中国信達資産管理は、中国が不良債権処理を目的に設立した「バッドバンク」4社のうちの1社で、中国の大手貸付機関から不良債権を引き受けているが、昨年12月には中国の金融システムに対する懸念が高まる中、香港で新規株式公開(IPO)を実施し、25億ドル(約2700億円)を調達した。

 香港はまた、人民元を国際通貨に格上げさせる取り組みの中で中心的な役割を演じてきた。中国はまず、人民元のオフショア取引を2009年に香港で認めた。その後、シンガポール、ロンドン、パリといったその他の金融センターで人民元の取引を認めた。

 近年、香港はいわゆる「ディムサム・ボンド(点心債)」の発行の中心地となった。これは人民元建ての債券だが、中国本土以外で発行されている。上海の発展を目論む中国でさえ、その指導者たちは香港の助けを当てにしている。

 例えば中国は、香港の大勢の投資家たちを取り込み、上海の株式市場を発展させたいと望んでいる。上海市場は新株の供給過剰やインサイダー取引で苦境にあるからだ。当局は10月中に、あるプログラムを導入する見通しだ。これは、海外投資家が香港を通じて上海の株式を取引することを可能にさせ、また国内投資家の香港市場へのアクセスを拡大させるものだ。

 チャイナ・イーグル・アセット・マネジメントのマネジングディレクター、ユミン・イン氏は「金融部門において、香港は多大な利点を持っているということだ」と述べた。



ウオールストリートジャーナル By ANDREW BROWNE 原文(英語)
2014 年 9 月 30 日 19:00 JST
http://jp.wsj.com/news/articles/SB11426559292233444529604580185672023251414?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesThird

香港でも「妥協なし」か―強まる中国の強硬姿勢


 中国の習近平国家主席は2年前に就任してから、チベットの尼僧による焼身自殺からウイグル族によるテロ攻撃に至るまで数え切れないほど多くの抗議・抵抗活動に直面してきた。

 習政権に果敢に盾突いた人々には、大富豪のブロガーや草の根弁護士、市民社会活動家、ジャーナリスト、聖職者、アーティストなどがいる。

 そしてほぼすべての場合において、穏やかな批判であろうが凶暴な行動であろうが反抗の程度にかかわらず、中国政府は一様に強硬な対応を取り、妥協の余地は全くなかった。

 こうした反中国グループに加わろうとしているのが黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さん(17)だ。黄さんは学生団体「学民思潮(スカラリズム)」の設立者の1人で、香港の普通選挙実施を求める活動で先頭に立っている。学民思潮はこれまでに座り込みデモを主催し、現在はそのメンバーが大規模な街頭デモに参加している。黄さんは警察に40時間余りにわたり拘束されていたが、高等法院(高等裁判所)の命令で28日遅くに解放された。

 黄さんは先ごろ行われた香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)とのビデオインタビューで「われわれ学生は市民的不服従以外に方法はないと考えている」と述べた。

 就任以降の習主席の対応からみて、香港各地の機能をまひさせている黄さんや学民思潮、あるいは群衆が、妥協はしないという中国政府の原則の例外になりそうな気配はほとんどない。

 おそらく本当に問うべき問題は、香港でどのような駆け引きが行われるかではなく、中国政府が厳しい対応に乗り出してきた時にそれがどのような形になるかだろう。

 香港の民主化運動の先行きは暗い。中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は8月、17年に香港の次期行政長官を自由選挙で選ぶことへの要求が高まる中で、少なくとも何らかの譲歩を示すチャンスがあった。だが、引き続き中国政府寄りの指名委員会が事前に候補者を選ぶこととし、民主活動家が立候補する論理的可能性までも排除した。

 強硬策によって中国政府が望む結果が得られない場合は、さらに攻撃の手を強めるという、まさに習主席の手法だ。

 中国政府は、宗教・文化・雇用の各面で厳しい制約を受けているウイグル族が不満を抱えている新疆ウイグル自治区や、東南アジアの近隣諸国にもこの手法を使っている。中国は、領有権をめぐり南シナ海に積極的に進出したことでフィリピンやベトナムなどの抵抗に遭ったが、かえって攻勢を強めた。

 中国政府が香港に強硬姿勢を取るのは、真の民主主義の拡散を恐れているためだとよく言われる。しかし共産主義体制はこうした拡散を驚くほど免れてきた。

 民主的な西側諸国に留学した学生たちが中国に戻った後、自由化を要求するという予測は今のところ間違っている。時として、母国から離れることは中国共産党に対する学生の忠誠心を強めるだけにすぎないこともあった。

 むしろ、本当に習政権が懸念しているのは、完全な民主主義によって香港を制御しきれなくなり、不安定な状況が国内の他の地域に広がることだ。

 このため、香港の民主化運動は危険をはらんでいる。

 ただ、民主化運動は分裂しつつある。民主化運動「占領中環(オキュパイ・セントラル)」の当初の指導部は学生などの他の団体に先を越されたようだ。今は別の団体が抗議デモのスケジュールを設定したり、デモ参加を呼び掛けたりしている。

 話し合いで解決したいと思っても、中国政府の交渉相手や、交渉相手が誰の代弁者となるかなどがもはや曖昧となっている。

 中国政府は事態の収拾がつかないと判断したら、香港の機動隊がデモ隊を警棒で殴ったり、催涙スプレーを浴びせたりするよりはるかに強硬な対応を取るとみる政治アナリストもいる。最悪のケースは中国人民解放軍による戒厳令の発令だ。

 中国政府は今のところ、人気のない香港の梁振英・行政長官への明確な支持を表明するのを避けており、抗議活動への対応を検討する余地が残っている。香港の政府高官にとって中国政府の最優先事項は、何としてでもデモ隊を街頭から排除し、社会の安定を保つことだが、梁長官はこれができていない。

 しかし、デモ隊の要求は梁長官の辞任だけにとどまらない。17年の香港行政長官選挙に関する全人代の決定を中国政府が覆し、自由選挙での長官選出を認めることを求めているが、これらが実現する見込みはほとんどない。

 学民思潮の設立者の1人である黄さんにはさらに多くの要求事項がある。スニーカーとしわくちゃのTシャツを身に着けた黄さんは、貧富の差によって二極化が進み、無能な政権にうんざりしている香港社会の身近な問題を鋭く指摘した。

 ビデオインタビューで「なぜ豆腐と豚バラ肉煮込みの弁当は50香港ドルもするのか」「なぜ(鉄道の)東鉄線は毎週、運行に問題が起きるのに、運賃は上昇の一途をたどっているのか」などと語った。

 自身の将来については、「何事も犠牲が伴う。痛みなくして得るものなしだ」と言う。犠牲の大きさは今後数週間のうちにもっとはっきりするかもしれない。そして、たとえ得るものがあるとしても、その中身は極めて不透明だ。



ウオールストリートジャーナル By JEFFREY NG and KEN BROWN 原文(英語)
2014 年 10 月 1 日 12:55 JST
http://jp.wsj.com/news/articles/SB11426559292233444529604580187181345060488?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesThird

香港デモ勝利の歴史、今回との違いは-中国政府が標的

 中国に盾突いても勝ち目はない、というのが通説だ。しかし、香港の学生は1997年の英国から中国への主権返還以降、2度勝利を収めている。

 2003年、市民の自由を脅かすとして物議を醸した国家安全保障法案の撤回を香港政府に求め、50万人の市民が街頭デモを繰り広げた。1989年の天安門事件以来最大のデモで、政府は直ちに引き下がった。法案はその後も再提出されておらず、当時の香港行政長官は最終的に辞任した。

 2012年前、高校生たちは現地校への「愛国的教育」の導入計画を阻止する闘いで勝利した。その高校生の多くが今、市内の通りを封鎖し、民主化の闘いを続けている。

 しかし、現在の香港と中国政府の対立は状況が異なっており、より大きな利害がかかっている。これまでの勝利はいずれも中国の指導部が弱体化している期間に得たもので、抗議の矛先も中国政府に向けられたものではなかった。

 香港大学の張賛賢教授(政治学)は「抗議運動がさらに拡大すれば香港と中国の中央当局との関係は崩壊の危機にさらされることになる」との見方を示す。

 12年に高校生が勝利したときは、胡錦濤国家主席と温家宝首相の退任の数カ月前で、しかも中国指導部は元重慶市トップをめぐる薄熙来騒動のさなかにあった。03年のデモ発生当時は胡氏も温氏もまだ比較的就任間もないころだった。

 さらに重要なのは、過去の対立では中国政府を直接標的にしていなかったため、香港政府とデモ隊の間で妥協を図らせ、中国指導部は関与しなかったとみられることだ。

 張教授は「現在の政治危機ではデモ隊は中国政府が同意しそうにないことを要求している」と指摘する。

 こうした対立は香港と中国の緊張を最も目に見える形で示している。その背景として、香港住民の間には中国政府に対する根強い不信感がある。発端は英国が1980年代初頭に中国への主権返還を決定したときにまでさかのぼる。

 住民の多くはもともと共産党統治下の過酷な生活から逃れようと香港に避難してきており、共産党に主権が戻る見通しになったことに当時、香港の多くがたじろいでいた。

 カナダやオーストラリアなど外国に数万人が移住する一方で、中国は警戒する経済界や現地政治団体の支持を得ようと大規模なPR作戦に乗り出し、彼らに体制維持を約束した。

 しかし、1980年代を通じて得た信頼は天安門事件で失われた。100万人を超える住民が街頭デモを展開し、弾圧を非難した。これほどの大規模なデモ行進が香港で行われたことはいまだにない。

 以来、香港の民主派政治団体は急速に規模を拡大。段階的に改革を進めたがっていた中国政府に反発し、迅速な民主的改革を訴えている。返還からわずか10年後、中国は行政長官の直接選挙を2017年から実施することを決定。ただし、候補者の選出方法については、あいまいさを残していた。

 近年では中国の好景気や新富裕層の登場も香港との緊張を招く原因となっている。

 住民の多くは、買い物や観光、不動産の購入に中国本土から香港へと押し寄せる人たちに包囲されていると感じている。中流階層住民のほとんどに手が出ない水準にまで居住用不動産価格が高騰しているのは、外資保有規制にもかかわらず、中国本土の買い手からの需要が旺盛なためだとみる住民もいる。



ウオールストリートジャーナル By Josh Chin 2014 年 9 月 30 日 08:49 JST
http://jp.wsj.com/news/articles/SB11426559292233444529604580184830209723088?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesThird

香港民主化デモ、知っておきたい5つのこと

 香港では28日、民主化を求める抗議参加者たちが街頭に殺到して幹線道路を封鎖し、普段人々で賑わう主要な地区をマヒ状態にした。当局による催涙弾などの実力行使に対し、抗議参加者たちはゴーグルを着用したり、差した傘を自衛の道具にしたりして抵抗した。抗議行動への参加者は翌29日にさらに増え、中国政府にとっては1997年に香港が英国から返還されて以来、最大の政治的な難題になっている。以下は、香港で何が起きているのか、なぜそうなったかを説明する5つの事情だ。

1].人々はなぜ抗議しているのか

 大ざっぱに言えば、抗議運動は香港の完全な民主化への要求だ。具体的には、中国政府が8月、香港のトップである行政長官を選ぶ2017年の選挙候補者の選択を制限する決定を下した。これに対し香港の民主派は、この決定を撤回するよう要求している。

2].香港の現行政治制度はどうなっているのか?

 「1国2制度」という原則と、「基本法」と呼ばれるミニ憲法の下で、香港は、外交関係と国防を除き「高度の自治」を与えられている。実際には、行政長官は、北京派議員と財界指導者で構成される委員会によって指名されており、中国政府に恩義を受けている。一方、基本法では、次回選挙では「直接(普通)選挙」を認めるとしてきた。

3].選挙投票が認められているなら、人々はなぜ不満なのか?

 中国政府は、行政長官に出馬する候補者は誰でも「愛国的」で「香港とこの国(中国)を愛していなければならない、と述べている。それが、行政長官を現在指名しているのと同じ1200人の委員会に対し、候補者を指名する力を与えている。民主化活動家は、この取り決めは、どの候補者も指名されて中国政府に恩義を感じることになるだろうと述べ、香港が享受している相対的自由を一段と損なうと主張している。活動家たちは、2017年の選挙で「純粋な選択」を望んでいる。つまり、直接投票による指名だ。

4].誰が抗議運動を組織しているのか?

 それは必ずしもすべて明確ではない。先週、大学生と中高生が民主化支援のため授業をボイコットした。行政府庁舎周辺での学生と警官隊の衝突のあと、金融街・中環(セントラル)を封鎖して民主化を求めようという急進的民主派団体「中環占拠」が参加した。しかし、自然発生的に至るところで抗議行動が起きているようで、香港市内の多くの地区を占拠している。

5].抗議行動が成功する公算はあるのか?

 中国政府は、たとえ譲歩するとしても、それほど大きく譲歩する公算はほとんどない、と多くのアナリストはみている。抗議運動参加者の人数は何万人にも上っているが、世論調査では香港市民700万人の大半は、経済界の多くの有力者たちを含めて、中国本土と公然と対立することには反対している。米国や英国など他の諸国もまた関与に消極姿勢だ。ある種の妥協は依然として可能だ。だがそれがどのようなものになるかについてコンセンサスはほとんどない。



ウオールストリートジャーナル 2014 年 10 月 2 日 08:25 JST
By Enda Curran, Chester Yung and Gregor Stuart Hunter 原文(英語)
http://jp.wsj.com/news/articles/SB11102303130114484576704580188813861017070?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesThird

香港政府、力によらずデモ収束を待つ方針に―中国が指示


●学生グループのリーダー、黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏(中央) REUTERS

 【香港】
 香港政府は民主化を求め激化したデモについて、自然に鎮静化するか、民衆の支持がなくなるまで待つ新方針を決めた。
 事情に詳しい関係者が明らかにした。

 香港の梁振英行政長官の辞任を要求して数万人の住民が参加しているこのデモを平和的に解決しようとするこの方針は、北京の中国政府からの指示によるものだと、この関係者は明らかにした。

 「北京が(梁長官に)指示した。発砲はならぬ」、
 「平和的に終結させなければいけない」
との内容だった、と同関係者は述べた。

■デモは祝日にかけて拡大

 これとは別に香港政府の高官は、政府が民主派運動「占領中環(オキュパイ・セントラル)」の指導者らと対話する用意があるが、それは民主化の諸要求を和らげることが条件だと語った。
 同高官は
 「デモ参加者が梁行政長官の辞任を要求し続けるのであれば、対話が行われる可能性は極めて小さい」
と述べた。

 「占領中環」の指導部は今後も梁長官の辞任を要求し続ける姿勢を崩していない。
 また、別の香港政府高官は梁長官がデモの激化に応じて辞任することはないと述べた。

 実際、催涙ガスを使ってデモを解散させるという香港政府の当初の計画は裏目に出た。
 解散するどころかデモ参加者は街の新たな箇所に拠点を築いてしまったからだ。

 このため「新戦略は混乱が起きないよう監視しながらデモを続けさせ、その結果起こる不便が『占領中環』に対する世論を批判的なものにするか、指導部にデモの中止を決断させるのを待つ」というものだ、と最初の関係者は述べた。さらに「世論が変わるのを待つ余裕はある」とした。

 香港政府の行政長官府はコメントを控えている。
 一方、中国の祝日週間となる国慶節(建国記念日)初日にあたる1日は、北京の中国外務省やその香港マカオ事務弁公室の電話が鳴り続けた。

 国慶節を前に高まっていたデモに対する懸念は、1日はやや和らいだ。
 デモ隊が占拠した多くの場所が時間の経過とともにお祭り的な色彩を帯び始め、無料の散髪やマッサージを提供する参加者も出てきた。
 気温が上がる日中には、いつものように参加者が減り、夕暮れとともにまた増えた。
 コーズウェイ(銅鑼)湾のデモ隊が占拠した地区では即席のバンドが結成されてビートルズの曲を演奏した。



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