2014年10月30日木曜日

ゴーストタウンを生み続ける中国不動産市場(1):ブラックホールの底知れない闇

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WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2014年10月30日(Thu) 
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4386
弓野正宏 (早稲田大学現代中国研究所招聘研究員)

ゴーストタウンを生み続ける中国不動産市場の怪
ランキング1位はやはり内蒙古 あと50カ所出現も?

  中国のニュースサイトで最近、話題になり、転載され続けている一つのランキングがある。
 それは「ゴーストタウン・ランキング」だ。
 ランキングと分析記事を掲載したのは『投資時報』という湖北省を拠点とする長江日報メディア集団傘下の経済紙である。

 中国の各地に現れた「ゴーストタウン」については日本でも注目され、報道番組でも取り上げられてよく知られるようになっている。
 中国の庶民に人気が高い中国特有の金融商品「理財商品」による資金の投資先が不動産市場であることからも市場が過熱し、バブルへの懸念が高まった。
 しかし、それはもはや過去の話。
 ここ1、2年は不動産価格が高止まりし、投げ売りに止まらず、既にバブルははじけ、それもかなり深刻だという見方が出ている。
 こうした中で指摘されるゴーストタウンの問題は不動産市場の低迷どころではない地域経済全般に将来にわたって関わる深刻な問題だ。


●『投資時報』本特集掲載445号表紙
http://message.zmoney.cn/e.aspx?vid=72

■ゴーストタウン大量出現で国土資源部が抑制に乗り出す

 『投資時報』が10月13日に掲載した、「2014年ゴーストタウン・ランキング」の記事は不動産関係者や財界にとどまらず、中国中の注目を浴び、様々な不動産業界のサイトを始め、『鳳凰網』のようなメジャーサイトにも転載され、不景気の深刻さを印象付けるものとなっている。

 「中国のゴースト探索記」と題したこの特集では「中国では50の“ゴーストタウン”が出現 国土資源部が“ゴースト”抑制に乗り出す」と題する記事など3本が掲載されている。

★.記事のランキングで1位になったのは内蒙古自治区の二連浩特市。
 この「ゴーストタウン指数」では2位以下に大きく差をつけるぶっちぎりの結果だった。
★。2位以下では、
 欽州、
 ラサ、
 嘉峪関、
 井岡山、
 威海、
 錫林浩特
と続く(ランキング表を参照のこと)。

 ランキングではトップ50の都市を列挙しているが、こうした都市を見て気づくのは、少なからぬ観光都市が入っていることであり、リゾート開発で多くの投資資金が呼び込まれたことが窺える。

★.「ゴーストタウン」の判断基準は、
 人口と建築面積を比較してそれが1:2、すなわち0.5を上回るか否かで判断する。
 人口と面積を比較した指標に照らすとまだ50近くの「ゴーストタウン」が出現しそうだという。
 具体的に基準を説明すると、1平方キロメートル当たり、通常は1万人を収容できることからこれを基準に都市区域の人口と建設面積を計算して、「ゴーストタウン」か否かを判断する「指数」を算出したという。
 都市面積が100平方キロなら100万人が居住できるが、人口が50万人しかいないなら半分だから「ゴーストタウン」に相当するというわけだ。

 大量の「ゴーストタウン」出現で国土の管理監督を担う国土資源部は土地の節約、集約利用に関する意見書を出した。
 同部計画局の董局長が明らかにしたところによると、都市の拡張問題は深刻で、新たな用地開発については今後より厳格にコントロールし、許可を出さなくて済む場合はなるべく出さない方針でやっていくという。

■中小都市で横行する盲目的拡張工事

 「ゴーストタウン」出現は、過去5年間の都市拡大との関係が大きい。
 国土資源部が2013年に行った調査によると、全国391カ所の建設計画中の都市建設用地は一人当たり平均197平米であり、
 居住区では既に161平米と国の基準である100平米を大きく超えている。

 経済開発の監督官庁である国家発展委員会傘下の都市・地方小都市改革発展センター(城市和小城鎮改革発展中心)の調査によると90%の地級市(省レベル行政区より1級下級の市、全国に330超ある)で計画中の居住地域の面積は
 元々の居住区の7,8倍にも上り、
「からっぽ都市」、
「眠れる都市」、
「死の都市」
というような現象は少なくないという。
 2013年に行われた12の省での156の地級市と161の県級市に対する調査で9割の地級市で新たな居住区(新区と呼ばれる高層マンション群とでもいうべき居住区)の建設が計画中だという。
 そして省によっては一つの省都(日本の県庁所在地に相当)に13もの居住区建設が計画中だという。

 中国では2008年から2012年の5年間で都市中心街の面積が9700平方キロ増加したが、これは温州市の中心地域50カ所分に相当する面積だという(2012年末までで温州市の中心地域の面積は204平方キロ)。
 もしこれを建設面積で計算するとその結果はもっと驚くべきものになると見込まれる。

■急速に進んだ都市化

 過去10年の間に中国では都市化が急速に進んだ。
 中国都市計画設計研究院の楊保軍副院長によると都市化の程度が30%から70%に達するのは発展期に入った事を意味しており、都市規模の急拡大に対して拡張工事の必要を意味している。
 とはいえ中小都市では盲目的拡張工事が横行する事態になっている。

 ランキングでは全国657カ所の都市における過去5年間の建設地域面積のデータを集め、それを基にして過去5年万の平均都市拡張率のランキング(2014年)も算出しトップ50の都市を算出した。
 楊副院長によれば大多数が中小都市である。

 統計によると中国の都市での過去5年間の拡張率は5.34%であり、急成長を記録し、拡張程度が大きかった都市は上から
 汕頭市(広東省)、
 南通市(江蘇省)、
 三亜市(海南省)、
 通遼市(内蒙古自治区)、
 達州市(四川省)、
 呉忠市(寧夏回族自治区)、
 濾州市(四川省)、
 徳州市(山東省)、
 済寧市(山東省)、
 泉州市(福建省)
という順だった。

 中国人民大学の土地政策・制度研究センターの葉剣平主任によると、2000年から2010年の10年間で、中国全土で都市の建設面積も64.45%増加しており、この傾向は省都のような大都市から地級市、県級市へと地方に広がっているという。
 この基準を基にした都市拡張率のランキングがこの現象を裏付けているというわけだ。

 拡大しつつある都市とは対照的に吉林市(吉林省)、常熟市(江蘇省)、鶏西市(黒竜江省)、十堰市(湖北省)、双鴨山市(黒竜江省)、潮州市(広東省)、平涼市(甘粛省)、延吉市(吉林省)、丹江口市(湖北省)、満州里市(内蒙古自治区)では過去5年間の中心地区面積の増加がほぼゼロだった。
 こうした都市では経済成長の活力が欠如していたといえるだろう。

 中国では都市化という概念では立法面でその定義が明確に定められていない。
 しかし、2010年に都市の規模についての一つの判断基準が学界で認められている。
人口50万人以下を「小都市」、
50万~100万人を「中都市」、
そして100万~300万人を「大都市」、
300万~1000万人を「特大都市」
とするものだ。

 都市の拡張面積は過去5年間で中国各地の中心地域人口は3500万人しか増加していないという。
 住宅業界の監督官庁である住建部による都市での1平方キロの基準では新たに建設される区域では1万人の収容能力がある都市の基準からいえば、新たに建設された9700万平方キロに9700万人が収容能力があるが3500万人しか増えていない為、一部の都市は「ゴーストタウン」の様相を呈しているのだ。

 ランキングではトップ50の都市を最終的に掲載したが、その中心地域の人口や建設面積の比率が0.5を下回っていたり、わずかに上回っているため、近い将来50近くの「ゴーストタウン」が出現する可能性があるというわけだ。

 この調査からメディアが報道したことのある、
 昆明市(雲南省省都)、
  鄭州市(河南省)、
 天津市
等の「ゴーストタウン」現象は短期的で見た目だけで厳密には発展の過渡期にあるから、こうした都市が「ゴーストタウン」となる可能性は低い
と楽観視されている。

■観光地、資源開発による都市が目立つ

 この度の「ゴーストタウン」ランキングを見ると地域的な特徴が浮かび上がってくる。
 例えば、華東地域では
 浙江省の6つの都市がランクインしている。
 次いで江蘇省が2つ、
 福建省が1つだ。
 江蘇や浙江は都市化が比較的進んでいる地域であり、比較的成熟した大都市地帯である。
 ただ「ゴーストタウン」の存在は三角デルタ地域で多くの労働人口の移動があり、こうした人口がデルタ地帯の経済的繁栄に大きく貢献しているのだ。
 東北地域は計画経済時代からの古い工業地帯であり、多くが計画経済の下に発展してきた都市である。
 その点から市場経済への転換において十分に市場に対して理解を深め、掌握することができていなかった。

 ランキングから、2種類の都市が比較的典型であることが浮かび上がっている。
★.一つは三亜市や威海市に代表されるような観光地であり、
★.もう一つは楡林市やオルドス市を代表とするような資源開発による都市
である。
 西北地域でランクインした多くの都市は資源型の都市であり、内蒙古自治区のいくつかの都市は皆、成金的急成長を遂げた地域で、不動産市場の過熱により「ゴーストタウン」現象が現れた。

 中国の庶民が行えるしっかりとした金融投資のチャンネルは非常に少なく、
 多くが不動産市場に流れる結果になっているのだ。
 山東省等の沿海観光地で不動産の供給過剰を引き起こしたが、中国人の支払い能力と消費の需要は沿海地域でのバケーションのレベルにはまだ達していないのだ。

 ランクインした多くの都市は「ゴーストタウン」番付で上の方につけたとはいえ、町全体が「ゴーストタウン」というわけではない。
 例えばランクインした二連浩特の人口はわずか10万人程度だが、2位の欽州は310万、3位のラサは56万人、4位の嘉峪関は30万、5位の井岡山は15万と千差万別だ。

 日本でよく報道されて知られるようになった「ゴーストタウン」は、内蒙古自治区のオルドス市であるが、この度のランキングでは30位で「ゴーストタウン指数」では0.49と0.5に近く、建設面積との比率であるべき人口の半分程度と言われるほど最悪な状況ではないのかもしれない。
 ランキング1位の同じ内蒙古自治区の二連浩特はゴーストタウン指数がなんと0.07という圧倒的な建築面積に対する人口の少なさを記録している。
 もちろんオルドス市は人口が159万もあることから、需要もあり、多くのマンションが作られて空室の数も多い事が予想できるが、空室率からすれば、二連浩特は圧倒的な「ゴーストタウン」状況なのだ。

 不思議な事にこのようないわば都市計画の失敗といえるような状況を生み出しながらその都市のトップが更迭されたとか責任を問われたという報道はあまりみられない。
 まだ高度成長が続いていた時期には各地のトップの業績も内実よりもGDPに反映されるような大型の物件やインフラ整備によって評価されていた事があるかもしれない。

 ランキングには北京や天津、上海等の直轄市のような中国を代表する都市が入っていないが、かといって「ゴーストタウン」がない、というわけではない。
 ランキングに入ってこないのは「ゴーストタウン」化した地域は町全体のごく一部でしかないからだろう。

 例えば天津市郊外の響螺湾地域。
 ここには2007年以降、天津市政府が中心となり数百億元が投資されて大々的な一大商業地域が作られ、「未来の中国のマンハッタン」とさえも呼ばれた時期もあったが、「マンハッタン」どころか建設が中断した無数のビルが放置され、「ゴーストタウン」となった。
 この頃天津市のトップである党委員会書記を務めていたのは現在副首相で中国指導部のトップ7に位置する張高麗氏だ。
 張副首相は最近、北京と天津、河北での連携を模索するタスクフォースの長にも就任し、汚名挽回が期待されている。

 このような視点から見れば、今回発表された「ゴーストタウン・ランキング」はかなり恣意的な数字の羅列といえるかもしれないが、少なくとも数値化されて公表されるようになっただけ進歩だといえるかもしれない。
 「ゴーストタウン」がまだまだ50ぐらいは表れるかもしれないと考えると中国経済のブラックホールの底知れない闇に戦慄を覚えざるをえない。



サーチナニュース 2014-10-31 20:55
http://news.searchina.net/id/1547899?page=1

中国のネット上に拡散される「鬼城ランキング」とは=中国メディア

 中国メディアの参考消息は27日、
  中国のインターネット上で「鬼城(ゴーストタウン)ランキングトップ50」という情報
が拡散していると報じ、専門家から「同ランキングは当てにならない」との指摘があるものの、中国のネットユーザーの間で大きな話題となっていると伝えた。

  記事は、中国メディアの投資時報が発表した「鬼城ランキング」で、内モンゴル自治区エレンホト市や広西チワン族自治区欽州市などがランキングの上位の都市になったと伝え、「同ランキングは中国のネット上で拡散している」と伝えた。
   さらに投資時報が
 「中国各地でゴーストタウンが出現しているのは各地方都市が積極的に都市拡張を図ったことが原因だ」
と指摘し、一部では現存の市街地の7-8倍にあたる面積を新たに開発しようとしていた都市もあると伝えた。
  記事は、投資時報による「鬼城ランキングトップ50」に対し、専門家が「当てにならない」と反論していることを伝える一方、中国ネット上では大きな話題になっていると紹介。
 さらにネットユーザーから、
 「ゴーストタウンがたった50都市しかないなんて、確かに当てにならない」、
 「不動産バブルの崩壊も時間の問題ということか」
などといった反応があると伝えた。
 さらに、
 「ゴーストタウンでも構わないから住宅をくれ。
 北京市内では高すぎてとてもじゃないが購入できない」
という声があると紹介。
 続けて、米国の格付け会社「ムーディーズ・インベスターズ・サービス(MCO)」が9月末に発表した報告書を引用し、今後数カ月間は中国各地で住宅価格が前月比で下落が続く見通しと伝えた



JB Press 2014.11.05(水)  姫田 小夏
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42110

中国の不動産会社社員は生活できずに転職、
叩き売りでも買い手つかず
宴のあとに残ったのは住人のいない高層マンション


●高級マンションは半値でも売れない

 2001年前後から中国では、
 「中国でバブル崩壊は起きるのか?」
という議論が静かに始まっていた。
 ただ、当時は誰もこの議論に真剣に向き合わず、「バブル崩壊などあり得ない」という見方が圧倒的だった。
 隣国日本のバブル崩壊は知っていたが「中国は別」という妙な自信を持っていた

 2000年代から2010年代にかけて、中国の不動産価格は暴騰しては下落する、という現象を何度か繰り返してきた。
 そのたびに「バブル崩壊か?」とささやかれたが、
 「中央政府が必ず手を打つ。一時的な下落だ」
と楽観的に捉える人が多かった。

 しかし、その中国で「不動産価格が総崩れ」というニュースが流れたことは、少なからず国民を動揺させた。

■不動産仲介業者が軒並み倒産

 中国国家統計局によると、2014年9月、主要70都市のうち69都市で新築住宅価格が前月に比べ下落した。
 新築住宅価格は今年に入り上昇率の鈍化が見られていたが、1都市を除いて総崩れとなったのは9月が初めてだ。
 前年比では58都市が下落、中でも杭州市は7.9%と最大の下落幅を示した。

 実態はもっと深刻な状況にある。
 成都で不動産営業に従事する女性は、ブログで市況の悪化をつぶさに描写していた。

 「朝から晩まで頑張っても、住宅を『買いたい』という客は1人もいない。
 たとえ見つけても他社と猛烈な奪い合い。
 今年、年棒10万元を目標にしていたのに、私の今の月収はたったの1000元。
 とても生活できないから転職することにした」(注:1元=約17.5円)

 日本企業が集中する大連では「3~4割は下落した」(現地の日本人駐在員)と言われている。
 大都市・上海でも「ここだけは絶対下落しない」と言われてきた。
 にもかかわらず「不動産仲介業者が軒並み潰れている」(現地の中国人管理職)と言う。

 あれほど猫も杓子も飛びついた中国不動産だが、今では投げ売り状態だ。

 河北省の唐山市では、1軒500万元の高級戸建てが「5軒まとめて340万元」と十把一絡げで売られている。
 まさに日本のバブル崩壊時を彷彿させるような状況だ。

 さらに唐山市では、住民が持て余したマンションの一室を犬小屋や鳩小屋にするという珍事も報道されていた。
 ある住民が、「事業用不動産」として6戸のマンションを手に入れた。
 ところが借り手がいない。
 やむなく
 「1戸は自宅用、2戸目は犬小屋、3戸目はハトの養殖」
に使った。
 しかも残りの3戸は空き家のままだという。

 他方、中国で最近よく耳にするのが「棄房(チーファン)」という言葉だ。
 「不動産を放棄する」という意味である。
 上海の法律事務所によれば、
 「ローンを意図的に返済せず、まさに家を放棄して、銀行の好きなように処分させる」
人が増えているという。
 特に2件、3件目の住宅を「棄房」するケースが多い。

 現地の報道によれば、
 「浙江省や江蘇省、福建省、広東省など沿海部の諸都市で、債権者による差し押さえのための裁判が急増中だ」
という。
 購入者のなかにはサラリーマンもいる。
 売却益を見込み、ローンをめいっぱい組んだものの、中国経済の成長が鈍化。
 給料は目減りし、不動産も売れば大損、という中で返済計画が行き詰るケースが続出している。

■競売にかけても買い手がいない

 筆者は今年5月、“バブル崩壊の激震地”である浙江省温州市を訪れた。
 温州と言えば、「炒房団」(不動産投機集団)が不動産を転がし、挙句、全国に先駆けて経済破綻した最もバブリーな都市である。
 案の定、住宅街に軒を並べる不動産仲介業はどこも開店休業状態で、終末的な雰囲気を醸し出していた。

 筆者がここで目の当たりにしたのが、不良債権と不良資産の山だ。
 返済が滞り、銀行によって差し押さえられた物件の「競売」が続出していた。
 しかも、不幸なことにそれらは「競売しても買い手がつかない」(地元の政府役人)のだという。
 多くの物件は「競売流れ」となってしまうのだ。

 投宿した周辺の物件の競売状況を調べると、確かに「競売流れ」が目についた。
 富裕層が多い住宅街に位置する、ある物件の評価額は360万元だ。
 300元から競売が始められたが、これを競り落とす者はいなかった。
 中国の報道によれば「競売物件の7割が流れる」らしいが、
 温州市では物件価格がたとえ半値になっても「見向きもされない」のが現状だ。

 中国最大のネットショッピングサイトである「淘宝網」(タオバオ)でも、不動産物件の競売オークションが行われている。
 競売対象になる浙江省の不動産数は10月27日時点で2万1517件を数える。

 浙江省の中でも温州市の競売件数は群を抜き、4700件を超える。
 7月には3400件だったから、この3カ月ほどで1.4倍弱に増えた計算だ。
 日に日に積み上がってゆく不良債権は、温州市の住宅融資額だけでも数億元規模に上る。

■中国でも「不動産の証券化」がスタート?

 90年代、日本でも同じようなことを経験した。
 当時、日本では競売を行っても購入者が決まらず、商業用不動産や住宅など売れなくなった物件の大量処理が行われていた。
 日本の不良資産は100兆円近くにも上り、その一部を抱き合わせて売り飛ばす「バルク売り」が横行した。

 日本の不動産会社のある管理職社員は、そのときの様子をこう振り返る。
 「5000万円の物件を10戸抱き合わせても、3000万円程度の値段しかつかなくなっていた。
 こうした不動産は最終的に外資の禿鷹ファンドに買い叩かれ、二束三文で買われていった」

 その後、日本経済は「失われた20年」に突入していく。
 追い詰められた金融業界では、「不動産の証券化」が導入された。
 それが2000年代に入って始まった「REIT」(不動産投資信託)である。
 投資家から集めた資金を複数の不動産に投資し、そこから得た賃貸収入や売却収入を投資家に配当する金融商品だ。

 ある旧建設省OBはこの「不良資産の紙切れ化」には大反対だった。
 過去を思い出し、次のように話す。
 「大量の不良資産の処理に窮した銀行が導入したのが、不動産の小口証券化、
 すなわち不良資産を紙切れにすることだった。
 当時の役人たちは、配当利益を出せば売れるんじゃないかと考え、バブル処理の最終手段としてこれを導入した」

 そして、中国でも今、この不動産の証券化が検討されてはじめている。
 中国の不動産政策に詳しい弁護士は、
 「そこまで検討が進んでいるとしたら、事態は想像以上に深刻。
 当局も相当危機感を感じているに違いない」
と推測する。

■櫛の歯が抜けるように銀行員が辞めていく

 2011年に中国の
 不動産業界のバブルが弾け始めてから3年
が経った。
 温州市は金融改革を中心とした経済再建の途上にあるが、いい話は聞かない。
 間違いなく温州市も、今後長期間にわたって続くであろう「失われた時代」に突入したのだ。

 温州市では地元の銀行マンが資金回収に奔走している。
 だが、櫛の歯が抜けるように「行員たちが辞めて行く」(前出の役人)のだという。
 筆者は銀行を辞めた1人に出会った。

 「楽な仕事に替わってホッとしていますよ」

 中国では、逃げるが勝ちなのだ。
 彼だけではない。
 地元経済の停滞に見切りをつけ、温州を去る者が少なくないと聞く。

 不良資産は住宅だけにとどまらない。
 工場、ショッピングセンター、ホテル、建築をストップした未完成物件など、経営者を失った建築物が街にゴロゴロしている。
 不動産バブルで狂奔した中国の都市は、いまや文字通りのゴーストタウンに姿を変えつつある。




【描けない未来:中国の苦悩】





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