2014年9月14日日曜日

孔子学院の’たそがれ:中国のソフトパワーの限界? 「孔子学院は中国の国家機関」の反発

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 レコードチャイナ 配信日時:2014年9月14日 6時50分
http://www.recordchina.co.jp/a94156.html

 香港大富豪が米名門大学に370億円寄付、「売国奴」と中国ネットユーザーが批判―米誌




12日、米誌ディプロマシー・サイト版は記事
 「中国人の米大学への寄付は非愛国的行為か?」
を掲載した。
 より貧しい中国の大学に寄付しないのはなぜかと怒りの声があがっている。
 写真はハーバード大学。

 2014年9月12日、米誌ディプロマシー・サイト版は記事「中国人の米大学への寄付は非愛国的行為か?」を掲載した。
 中国紙・参考消息(電子版)が伝えた。

 香港の大富豪、陳啓宗(チェン・チーゾン)・陳楽宗(チェン・ラーゾン)兄弟は、ファミリーファンド「晨興基金会」を通じ、米ハーバード大学公衆衛生学部に 3億5000万ドル(約372億円)を寄付した。
 これは、378年を誇る同大学の歴史において、最高額の寄付金となった。

 米国のソフトパワーの勝利に思えるこのニュースだが、中国ネットユーザーの多くは怒りを示している。
 「なぜ中国の大学に寄付しないのか?売国奴か?」
 「中国西部の貧困地域に寄付するべきだ」
などの書き込みがネットにあふれた。

 もっとも中国の大学に寄付しないのはそれなりの理由があるのではないか。
 中国の大学は財務が不透明で汚職がはびこっている。
 中国紙・南方週末によ ると、汚職容疑で罷免された有名大学管理職は2012年以降だけで29人に達している。
 透明性が確認されない限り大富豪たちは寄付をためらうだろう。

 あるネットユーザーはこう書き込んでいる。
 「もし中国の大学に寄付したとして、うちどれだけが教育に使われるのだろうか?
 もしハーバードのように管理が徹底されたならば、きっと寄付する人が現れるだろう」。



2014.09.22(月)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41771

中国のソフトパワーの限界?:孔子学院への反発
(英エコノミスト誌 2014年9月13日号)

 中国は10年前、自国の文化を普及させるために、海外でセンターを開設し始めた。
 一部の人はそれに反発している。


●中国を代表する思想家の名にちなんだ文化施設が物議を醸している(写真は北京の孔子廟に建つ孔子像)〔AFPBB News〕

 「調和こそ何にも増して価値がある」。
 中国の思想家の孔子は2500年前にこう言った。
 だが、オレゴン大学孔子学院の初代院長のブリナ・グッドマン氏と、彼女の同僚の歴史学者であるグレン・メイ氏の間の冷ややかな関係に、調和の兆候はほとんど見られない。

 2人の研究室は歩いて10秒ほどの距離しか離れていないが、両者が互いを訪問することはない。
 彼らが互いに抱く明白な嫌悪感は、政府出資の文化センターを海外に開設する中国の10年来の取り組みについて欧米の学者の間で高まる不協和音を反映している。

 中国の「ソフトパワー」の促進を目指す文化センターは、平和を唱える賢人の名を掲げている。
 孔子学院は、中国語教師に対する世界的な需要の拡大をうまく利用している。
 だが、同時に学問の自由に関する不安も煽っている。

 米国では、孔子プログラムは、学びたい人全員に中国語教師を提供するだけの資金を持たないことが多い大学や学区に広く歓迎された。

■「言論の自由や学問の誠実性を損なう」

 しかし、メイ氏のように批判的な人々は、中国の資金には代償が伴うと考えている。
 孔子学院(大学のキャンパス内に設置されている孔子プログラムはこう呼ばれている)や学校を拠点とする孔子教室は、中国に関する議論をデリケートな話題から遠ざけることで言論の自由を抑制している、というのだ。

 米国大学教授協会(AAUP)は今年6月、各大学に対して、
 孔子学院(現在、米国に100校ある)との契約を打ち切るか見直す
よう求めた。
 学院が
 「中国国家の一部門として機能しており、
 学問の自由を無視する
ことを許されている」
というのがその理由だ。

 メイ氏はオレゴン大学に孔子学院を閉鎖するよう求めているが、その甲斐なく、実現に至っていない。
 グッドマン氏(もう同大の孔子学院院長ではない)は、自己の利益に資金を出すという点では、中国も米国の大学に寄付する他の資金提供者と相違ないとし、
 孔子学院はいわゆる「中国の脅威」を呼び覚ます存在
になってしまっていると話している。

 2004年に中国が初めてソウルで孔子学院を開設した時、同国は新たな取り組みがブリティッシュ・カウンシルやアリアンス・フランセーズ、ドイツのゲーテ・インスティトゥートなど、西側の政府が支援する文化普及活動のように、議論を引き起こさない存在になることを期待していた。

 その狙いは、中国人がよく平和の伝統が深く染み込んでいると表現する中国文化に対する認識を高めることで、
 中国の台頭に対する不安を打ち消すところにあった。

 中国は政府機関の漢弁(ハンバン)を通じて、孔子学院に無償で指導者を提供したり、学院での文化イベントを後援したりしている。



 その支出はかなりの額に上り、さらに急増している。
 2013年の支出は2億7800万ドルで、2006年の6倍以上に達した。
 中国による孔子学院への資金提供は、多くの大学で年間10万~20万ドルに上り、それ以上の場合もある(昨年度、オレゴン大学はおよそ18万8000ドルを受け取った)。

 中国は2013年末までに440校の孔子学院と646の教室を開設し、登録している学生・生徒85万人にサービスを提供している。
 施設は世界100カ国以上に散在しており、全体の4割超が米国に置かれている。

 2015年末までに世界中で、さらに60校の孔子学院と350の教室を開設する計画がある。

 中国の関係者は満足の意を表している。
 共産党の巨大なプロパガンダ機構を統括する劉雲山氏は今年6月、孔子学院は「適切なタイミングで誕生した」と述べ、孔子プログラムのことを、中国の夢と諸外国の夢を結ぶことで友好関係を促進する「精神的な高速鉄道」と称した。

 しかし、それほど楽観的でない人もいる。
 米国では最近、批判が一段と強まっている。
 今年は、シカゴ大学の100人以上の教授陣が、孔子学院が学問の誠実性を傷つけていると抗議した。

■ダライ・ラマの招待に圧力?

 同大の学者の1人、マーシャル・サーリンズ氏は2013年にネーション誌に寄せた論文で、孔子学院の政治的な過敏症への配慮と受け取れる、複数の国で起きた問題を列挙した。
 その中には、大学側が講演者としてダライ・ラマを招き、その後、招待をキャンセルしたり、キャンパス外での講演に切り替えたりしたケースが数件含まれていた。

 2009年のノースカロライナ州立大学のケースでは、ダライ・ラマの訪問がキャンセルされた後、総長が、孔子学院から、ダライ・ラマの出席は中国との間で問題を引き起こしかねないと指摘を受けたことを明かした。

 今年は、モンタナ大学名誉教授のスティーブン・レビーン氏が世界中の数百校の孔子学院に宛てて、抗議活動が暴力的に弾圧された6月の天安門事件25周年を記念するよう求める手紙を送った。
 同意した学校は1つもなかった。
 北京の新聞、 環球時報は最近、外国の学者による抗議を「マッカーシズムの延長」と呼んだ。

 グッドマン氏は、中国の研究には、手に入れられる限りの資金が必要だと主張する。
 たとえそれが、重大な利害が絡む国――それが中国であれ、台湾であれ、米国であれ――から援助を受けることを意味しても、だ。

 同氏は、もし中国がオレゴン大の施設に政治的に干渉するようなことがあれば、孔子プログラムは直ちに閉鎖すると話している。

 そのような言質は、批判的な人たちの大きな懸念を払拭することはできない。孔子プログラムの政治的な影響力は多くの場合、微妙で、ゆっくり作用するという懸念だ。

■それで中国を好意的に見る人は・・・

 もし批判的な人たちが正しければ、その作用は本当に微妙だ。

 世論調査によれば、
 多くの国では中国に対するイメージがこの10年で大きく改善していない。
 米国の世論調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、
 2007年には米国人の42%が中国を好意的に見ていた。
 昨年は、好意的な見方をする人がわずか37%だった。
 中国のソフトパワーへの投資の政治的な配当は、決して明白ではない。

© 2014 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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2014年12月06日 08時34分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
http://www.yomiuri.co.jp/world/20141205-OYT1T50132.html

「孔子学院は中国の国家機関」…米、拡大を懸念

 【ワシントン=白川義和】
 人権問題などを扱う米下院外交委員会小委員会のクリストファー・スミス委員長(共和党)は4日、中国政府が中国語と中国文化の普及の拠点とする「孔子学院」の米国での活動の実態について、米議会の政府監査院(GAO)に調査を要請する考えを表明した。

 小委員会は同日、米大学の中国当局との協力や、孔子学院の受け入れが、「学問の自由」に与える影響に関する公聴会を開いた。
 スミス委員長は
 「米国の大学は学業の管理や学生の指導、授業内容を外国政府に委ねるべきではない」
と述べ、孔子学院の影響力拡大に懸念を示した。

 孔子学院は中国の出資で教員派遣や教材提供が行われる仕組みで、民主主義や言論の自由、人権、少数民族など中国政府が忌避する問題は授業内容から除外されると指摘されている。
 米大学教授協会は6月の声明で、
 「孔子学院は中国の国家機関として機能しており、学問の自由を無視することが許容されている」
と批判した。
 米国では約100の大学で孔子学院が設置されている。



レコードチャイナ 配信日時:2015年1月15日 0時34分
http://www.recordchina.co.jp/a100501.html

中国の孔子学院に閉鎖ラッシュ、
ストックホルム大学にまで波及―スウェーデン


●10日、ストックホルム大学が孔子学院を閉鎖する。
 関係者は「大学の中の機関が他国の政府に提供された経費で運営されるというのはやはり問題だった」とコメントしている。写真はストックホルム大学。

 2015年1月10日、米ラジオ局ボイス・オブ・アメリカ中国語版によると、ストックホルム大学が孔子学院を閉鎖する。

 孔子学院は中国政府が資金と人員を提供して開設する中国語、中国文化の学習機関。各国の大学と提携し、
 2014年10月末時点で世界に471カ所
が設立されている。
 ニーズが高まる中国語の学習機会が増えると歓迎される一方で、中国政府の意志が各国大学の決定に影響するのではと懸念する声も上がっていた。
 すでに米国では複数の大学が契約期限満了をもって孔子学院を閉鎖している。

 スウェーデンのストックホルム大学も閉鎖の列に加わることとなった。
 関係者は
 「大学の中の機関が他国の政府に提供された経費で運営されるというのはやはり問題だった」
とコメント。
 1月30日の契約満了をもって閉鎖すると話している。


サーチナニュース 2015-01-16 16:55
http://news.searchina.net/id/1557554?page=1

孔子学院を閉鎖、「非合法な面あった」
・・・ストックホルム大学副学長が理由を説明

 欧州初、全世界でも2番目に設立されたスウェーデンのストックホルム大学孔子学院が6月30日をもって閉鎖されることになった。
 同大学のウィディン副学長は、閉鎖の理由について
 「スウェーデンの法律に合致せず、争議が発生していた」
などと説明した。
 孔子学院は中国政府が海外の大学などと提携し、中国語や中国文化の教育、宣伝、中国との友好関係促進のために設立している組織だ。
★.ストックホルム大学孔子学院の設立は2005年2月で、欧州初、全世界でも2番目に設立された孔子学院だった。

 ウィディン副学長は中国との提携について
 「今の状況は10年前と違うようになった」、
 「われわれと中国の学術交流のレベルは、まったく異なるレベルになった」
と、中国との交流が大きく前進したことを認めた上で、同大学内の孔子学院について
 「非合法な面があった」
と説明。
 さらに
 「スウェーデンの大学内に別の国家が資金を出す学校があると、問題のある操作が容易にできてしまう」
と述べた。
 ストックホルム大学は、同大学学内の孔子学院について、5年ごとに契約を更新していたが、2015年には契約更新を行わずに、同年6月30日をもって孔子学園を閉鎖することを決めた。
   これまでも米国などで孔子学院が閉鎖された例はあるが、関係者が
 「非合法」、
 「問題のある操作」
といった“刺激的な言葉”で理由を説明した例はなかったという。

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◆解説◆
   世界各地に設立された孔子学院を統括しているのは中国政府・教育部に直属する国家漢語国際推広領導小組弁公室(国家中国語国際推進指導チーム事務局)だ。
★.世界初の孔子学院は2004年11月に、韓国ソウル市で設立された。
  自国文化を世界各地で教育の形で広め、宣伝する組織は、ブリティッシュ・カウンシル(英国)やゲーテ・インスティトゥート(独)などの例もあり、それほど珍しいことではない。
 しかし孔子学院の場合、独立した施設や組織として運営されるのではなく、各地の大学などと提携し、施設としても独立していない。
  しかも、ブリティッシュ・カウンシルやゲーテ・インスティトゥートが非政府組織の運営であるのに対し、孔子学院は政府機関が直接統括しているために、提携先の大学にとって「外国政府の意向を反映する組織を抱え込むことで、教育機関として健全な自主性や独立性が影響を受ける」との指摘が出ている。
  これまでに、カナダ、米国、日本など多くの国で、孔子学院を批判する声が出た。
 閉鎖された例も多い。
 中国は孔子学院を設立し始めた前後から、海外における自国系メディアを使っての情報発信にも力を入れるようになった。
 それまでに中国が行っていた情報や主張の発信は主に、世界各地で収集した情報を本国に集め、本国から意見や見解を表明するものだったが、より複合的な方法に切り替えたと判断できる。

 ただし、それ以降も「中国の主張に納得」する雰囲気は、それほど高まっていない。
 中国人はしばしば「急成長を続ける中国に嫉妬し敵意を燃やす人がいるから」などと説明するが、実際には一党独裁という世界でも少なくなった体制を取り続け、その体制による価値観や発想、強引な主張が多いことが、より根本的な原因と考えられる。
 しかし、世界に向けて自国の紹介や宣伝に力を入れることは、国益追求のための大切な努力と評価してよいだろう。
 ひるがえってみれば、日本が同様の努力をどれだけしているか、心もとない面もある。




【描けない未来:中国の苦悩】




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