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WEDGE Infinity 日本をもっと、考える 2014年10月06日(Mon) 江口由貴子 (防衛省防衛研究所研究員)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4259?page=1
過熱する韓国の英語教育、早期留学ブームの弊害も
現在韓国では日本よりも深刻な若者の就職難が起きている。
韓国では熾烈な就職競争に勝ち残った一部の人が大企業に就職でき、大企業就職という狭き門はまた、どこの大学を卒業したか、と直結しているように思われる。
韓国ではSKY(S=Seoul国立大学、K=Korea大学、Y=Yonsei大学)の3大学がトップクラスとされ、受験戦争を勝ち抜いた優秀な学生たちが集まる。
韓国は全人口約5000万人のうち半数が首都圏(ソウル・京畿道・仁川)に住んでいる。
この過密度は、韓国の政治・経済・文化が都市に一極集中していることを象徴しており、教育もまた、例外でない。
一極集中に伴う競争とその過熱が大きな社会問題の一つとなっている。
■根強く残る科挙文化
中国から伝わった科挙制度の名残だろうか、韓国は教育や知識に対する意欲が高い。
新羅時代、国家が必要とする優秀な人材を発掘する方法として用いられた科挙制度は、李朝時代に体系化され、科挙のための教育もまた急速に発展していった。
厳しい身分階級制度の下で、学問は立身出世の手段として用いられ、学問をする者は格式高い人間として評価される儒教的概念は、筆者が韓国留学中にも強く感じたことである。
日本に比べて「先生」を敬う社会的風土が根強く残っており、毎年5月15日は「師匠(先生)の日」とされ、その日は先生に日頃の感謝の気持ちを表す。
大学教授の地位も日本に比べ高いように感じた。
官僚と同様に多くの学者が政権中枢に抜擢される政治文化も、科挙制度の名残と言えるのかもしれない。
このように、韓国社会における学問や教育に対する高い意欲は、両親の子どもに対する教育熱にも表れる。
90年代以降、国際化を掲げる韓国において、英語教育に対する人々の関心及び投資は急速に過熱していき、現在もその状況は変わっていない。
今回は韓国における英語教育熱、それに伴い2000年代初頭にブームとなった早期留学について整理してみることとする。
■2000年から急増した早期留学
早期留学とは、初・中・高等学校段階の学生が国内の学校に入学あるいは在学せず、海外の教育機関に一定期間にわたって修学することとされている。
多くのケースは、幼いうちから子どもだけ、もしくは子どもと母親が英語圏に留学し、現地の学校で英語を身につけることである。
もちろん経済的にある程度余裕がなければできないことではあるが、子どもの将来の成功を願う親たちにとっては一つの選択肢として注目された。
主な留学先は、米国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド等である。
1987年に民主化を果たした韓国は、国際社会での存在感を高めるため外交に力を入れ、海外への門を大きく開いた。
1988年にはソウルオリンピックを開催し、その後も急速な経済成長を成し遂げた。
1993年から始まる金泳三政権では、「世界化」が国家政策とされ、国際競争力の強化が唄われたが、折しもアジア通貨危機で大打撃を受け、経済のグローバル化による競争を生き抜く為の国際競争力の強化に一層力を入れることとなった。
韓国教育開発院のデータによれば、早期留学生(小・中・高)の数は、2000年から2006年にかけて急増し、2006年には29,511名を記録している。
1995年の2,259名と比較すると10倍以上の増加である。
その背景には、上述したように韓国国内で「世界化」が叫ばれると同時に、2000年からは、早期留学に対する規制を撤廃すべく政府が動いたことが挙げられる。
それまでは、政府の方針として17歳未満の学生の留学は制限されていた。
しかし政府の「国際化・世界化」時代に合わせるという方針の下、早期留学全面許可に向けて規制を緩和する方向に改善されていったのである。
また、1990年代後半に小学校3学年からの英語授業が必修となったことも理由に挙げられる。
筆者の友人の例を紹介しよう。
彼女は現在33 歳。2006年当時、高校1年で米国に留学し大学4年まで米国で学校に通った。
きっかけは年の近い兄が高校1年から現地に1人で留学に行っていたことである。
彼女の兄はというと、ホンジョンウク氏(当時23歳)の著書『7章7幕』を読んで留学に魅了され、親を説得して一人米国へ渡った。
ホン氏は、韓国の有名俳優の息子で、ハーバード大学、スタンフォード大学ロースクールを卒業し、米国の弁護士資格を取得。
2008年から2012年まで韓国国会議員を務めた人物であるが、当時彼の著書が早期留学ブームの火付けの一躍を担った。
名門高校に入学した彼女だったが、親の勧めもあり、また韓国の厳しい大学受験のためにかかる多大な費用(塾や家庭教師等)を考えると留学とさほどかわらないということで、兄と同じ米国の高校に転入した。
しかし、母親になった彼女は今、自分の子どもには早期留学、特に子どもだけの留学はさせないと断言する。
高校生とはいえ、まだ精神的サポートを必要とし、情緒多感な時期に相談相手がいないということは、彼女にとっては辛い経験だったようである。
特に、他国の学生たちに比べて、家族や両親との関係性が強い韓国での生活から、一気に独立した生活を送る事に対するストレスは大きかったようである。
■早期留学ブームによる弊害
早期留学のブームは新たな造語を生み出した。
多くの場合は、子どもが一人で留学をするか、母親が一緒についていき、父親は韓国に残って仕送りをする。
★.経済的余裕があり、頻繁に子どもに会うことのできる鷲パパ(カルメギアッパ)、
★.年に数回しか家族に会えない雁パパ(キロギアッパ)、
★.金銭的に余裕がなく子どもに会いにいけないペンギンパパ(ペンギンアッパ)
という言葉が生まれ、
英語教育のために家族と離れ、仕送りをする寂しい父親
を表す、早期留学の象徴語となった。
2000年初頭に急増した早期留学生の数も、2006年をピークに減少傾向にあり、2012年度は約半分の14,340名まで減少した。
一時はブームとなった早期留学も弊害が現れ始め、その数は年々減少している。
2009年の金融危機による経済的負担の増加、早期留学そのものの効果を問う声、早期留学に伴う子供へのマイナス影響、家族のあり方に対する問題等が浮上した。
韓国に残り一人仕送りをする父親が自殺をする例や、家族崩壊の例も珍しくなかった。
留学生活で身に付けた文化的違いを嘆く声もあった。
3人の子供と母親を米国に留学させた家族の例である。
10年以上そのような生活を続けていたが、久しぶりに小学校高学年になった子どもたちと再会した父親は衝撃を受けたという。
父親のことを“YOU!”と呼んだり、気に入らない事があると“I don’t like you!”と言ってみたり。
それ以降父親は、一旦家族を韓国に戻ししばらく韓国で教育を受けさせたという。
日本や韓国のように目上を敬う儒教文化の国では、基本的な生活様式や価値観が英語圏とは異なるため、韓国に帰国した後に適応できない子どもたちも多かった。
■国内の英語教育改革に乗り出した政府
このような家族間の問題などが深刻な社会問題として取り上げられ、2008年、李明博前大統領は、国内の小中学校でも良質な英語教育を受けられるようにと、韓国の英語教育改革に乗り出した。
一つは2008年以降検討が開始された、国家英語能力評価試験(National English Ability Test)の導入である。
これは韓国型TOEFLと言われているもので、学生に実用的な英語を学ばせ、海外の英語試験への依存度を引き下げようと政府が開発してきた英語評価システムで、スピーキング・リスニング・ライティング・リーディングにより試験が構成されている。
当初李明博政権は、ネイティブスピーカーを含む英語教師の任用を拡大することも検討し、公教育で英語能力の向上を可能にすることを掲げていた。
さらに、この国家英語能力評価試験を大学入試に反映させ、長期的には大学修学能力試験(日本のセンター試験に相当)の英語試験をこれに代替させることを検討していた。
2014年度入試では36大学が国家英語能力評価試験の成績を反映しているが、有名大学等での導入率は低い。
しかし朴槿恵政権の発足に伴い、教育部は
「国家英語能力評価試験は、その試験対策に関連し中高生の私的教育費の負担増加が懸念されるため大学受験と連携させない」
という方針を打ち出し、国家英語能力評価試験の廃止を検討していると伝えられている(『朝鮮日報』2014年1月16日付)。
公教育での語学力強化を目指したはずの政府の政策が、結局私的教育費の負担増加につながるということで、施行から数年で廃止の方向性を見せている。
同試験の開発には約36億円の予算を投入したにもかかわらず、である。
このような政府の英語教育に関する混乱ぶりを見ても、
韓国の英語教育に対する要求の高さがうかがえる。
韓国では、早期留学ブームの後、“国内留学”を掲げた英語教育に特化する学校が新たに出てきた。
また早期留学から帰国した学生らを対象とするような大学の学部や大学院学部の新設も進み、そのような課程では全ての授業が英語で行われている。
■それでも続く小学校からの早期留学ブーム
しかし興味深いことに、小学校の早期留学生の数は、中高校生に比べると減少の幅が少ないこともまた明らかになった。
ここでもう一つ、筆者の知人家族の例を挙げる。
彼女は8歳と5歳の息子を連れて2年前にオーストラリアに移住した。
最初はブリスベンの親戚の家を訪ね家族旅行をするつもりだったが、韓国とのあまりの生活環境の違いにその後本格的な留学の準備に取りかかった。
父親はその後韓国の会社を辞めラオスで起業をしたが、現在でも2カ月に一度は定期的に家族が会い、2週間ほど時間を過ごすという。
家族が子どもたちの早期留学を選択した理由は、子どもの多様性を尊重するオーストラリアの教育に魅了されたからだと話す。
競争社会の韓国とは違い、他人の目を気にすることなく、ストレスを受けることなく生活できるという。
最初は彼女が学生ビザを取得し、子どもたちは同伴家族として滞在していたが、子どもが学校に入ってからは彼女は保護者ビザで滞在している。
語学習得と、子どもの個性や多様性を育てたいという目的から現在の生活を選択したが、家族は全員とても満足しているという。
また、韓国国内のインターナショナルスクールへの入学も考えたが、その費用とオーストラリアでの生活・教育費用はさほど変わらないため、生活の質を求めてオーストラリアでの生活を選択した。
オーストラリアやニュージーランドへの留学も人気が高いが、最近では英語と中国語を両方習得できるという理由からシンガポールへの留学も話題になっているという。
■子どもに対する親の意識の違い
ベネッセの研究所は、5年毎に「幼児の生活アンケート:東アジア5都市調査(東京・ソウル・北京・上海・台湾)」という調査を実施・公開している。
幼児の生活や子育て意識に関するアジア各都市の比較調査は大変興味深い。
2010年に公表された結果によれば、各国の子どもの習い事は、
★.東京の上位3項目が
スイミング(20.8%)、
定期的に教材が送られてくる通信教育(20.2%)、
体操(13.9%)
の順であったのに対し、
★.ソウルは、
ハングル(39.4%)、
英語(33.6%)、
数学/暗算(31.9%)
の順であることがわかった。
身体を動かす習い事が多い東京の結果にくらべ、ソウルの子どもたちは学習系の習い事が圧倒的に多い。
さらに興味深い結果として、「子どもの将来に対する期待」であるが、
東京ソウル共に上位1位は「自分の家族を大切にする人」(東京72.4%、ソウル80.8%)
であったのに対し、
★.東京の2位3位は、
「友人を大切にする人」(71.6%)、
「他人に迷惑をかけない人」(65.6%)、
★.ソウルの2位3位はそれぞれ
「リーダーシップのある人」(55.3%)、
「経済的に豊かな人」(40.5%)
とその価値観の違いは歴然であった。
「リーダーシップがあり経済的に豊かな人になる」。
こうした子どもの将来に対する期待は、幼い頃から、ハングル、英語、数学といった習い事に通い、小学校から競争社会に身を置くことへとつながっている。
韓国では多くの親が、成功への近道は学問であると考えている。
その方法の善し悪しは筆者が評価する立場にはないが、科挙文化に根ざす学問至上主義の韓国の社会構造は、より大きな社会的問題を生み出す可能性も否定できない。
一例を挙げれば少子化である。
結局こうした教育費用の高騰が韓国の少子化を招く主要因となっている。
韓国の出生率は2013年基準で1.19と、日本(1.43)より低い。
実際、韓国はOECD加盟国の中で私的教育費用の負担が最も高い(OECD factbook 2013参照)。
これらの教育費、特に塾代を含む私的教育費の負担が家計を圧迫しており、子どもを持つことへの不安に直結しているように思える。
2018年に「高齢社会」を迎えると言われる韓国だが、過熱する競争社会、英語教育を含む教育費の負担等の構造的な社会問題は、ますます深刻化する一方である。
』
『
朝鮮日報 記事入力 : 2014/12/25 11:09
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/12/25/2014122500790.html
「早期英語教育の禁止は学ぶ権利の侵害」
教育当局の方針に私立小や英語塾が反発
早期英語教育をめぐり、韓国で教育当局と私立小学校、英語塾、保護者の間のあつれきが深まっている。
政府が早期英語教育を禁じていることに対し、保護者や私立小学校などは
「英語がますます重要になっているのになぜ禁じるのか」
と反発している。
ソウル市教育庁(教育委員会に相当)は先ごろ、市内の私立小学校45校に対し監査を実施し、135件の違法事項を摘発した。代表的な摘発事項が英語教育に関するものだ。初・中等教育法第23条は小学3年生から英語を教えるよう規定しているが、2校では1-2年生に英語を教えていた。
グループ活動やボランティアをすることになっている「創意的体験活動」の時間を使い、年間102-136時間の英語教育を行っていた小学校も2校あった。
また、塾通いなどの私教育を助長するとして、教育部(省に相当)が幼児対象の英語塾での英語ネイティブ講師の採用禁止を推進していることに対しても、業界から批判が出ている。
韓国学院(学習塾)総連合会は23日に記者会見し「政府はコミュニケーション主体の実用英語教育をしていない」「教育部の措置はネイティブに英語を学ぶ国民の権利を制限するものだ」などと批判した。
教育当局はおおむね早期英語教育に否定的だ。
教育部のパク・ピョンテ英語教育チーム長は
「母国語がある程度完成してから外国語を学ぶ方が効果的だというのが学界の大半の意見だ。
その場合、10歳前後の小3以降が適切だ」
と話す。
韓国では1997年から小3の正規教育課程で英語を教えており、中国と台湾でも小3から英語を教えている。
日本は2011年に小5での英語教育を必修化した。
だが、適切な英語教育の開始時期をめぐっては学界でも意見が分かれている。
大邱教育大のキム・ヨンスク教授(韓国初等英語教育学会長)は
「第2外国語を習得するには、その言語にさらされる絶対的な時間が必要だ。
米国務省傘下の外務職員局(FSI)は4000時間ほどさらされる必要があるとしているが、韓国は小、中、高校(の授業時間)を全部合わせても1000時間に満たないほど不足しているため、小学1-2年生にも教えるのが望ましい」
と話している。
』
レコードチャイナ 配信日時:2014年9月23日 18時54分
http://www.recordchina.co.jp/a94582.html
韓国の負債が2000兆ウォンに迫る勢い
=「次世代に申し訳ない」「韓国国民の最大の敵は…」―韓国ネット
韓国の政府と公共機関、家計の負債をすべて合わせると、2000兆ウォン(約200兆円)
に迫っていることが明らかとなった。
韓国政府が発表した2014~2018年の国家財政運用計画によると、今年の国家債務は527兆ウォン(約53兆円)になる見込み。
また、韓国銀行の発表によると、家計の負債は6月末基準で1040兆ウォン(約104兆円)にのぼる。
負債の規模が大きい上にその増加速度も速く、負債が雪だるま式に増え、国の経済が危機に陥るという懸念も出ている。
このような現状に、韓国のネットユーザーから多くの意見が寄せられている。
以下はその一部。
「アジア通貨危機の時も、政府は安全だって言っていたよね」
「結局、金持ちと大企業だけ減税してやって、庶民には厳しい状況だ」
「盧武鉉は経済運営をとてもうまくやっていたんだね。今になって思うよ」
「朴槿恵は、親庶民政策を行なうって言ったけど、たばこ税を上げて、企業の負担を軽減だ。
企業は、その利益をそのまま溜め込んでいる。
大企業の留保金は増えていって、庶民のポケットは空っぽになっていく」
「借金返済の苦労を次の世代に押し付けてしまって申し訳ない」
「大韓民国庶民の最大の敵は、国会議員と政府高官と朴槿恵だ」
「政府は大企業留保金に課税しろ。大企業のご機嫌うかがいをするな。
たばこ税引き上げより、金持ちに増税しろ」
「政府は、増税政策よりも非効率的な政府事業の縮小と、膨大な公務員のリストラを先に実行しなければならない」
』
【描けない未来:中国の苦悩】
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