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ウオールストリートジャーナル 原文(英語)2014 年 8 月 29 日 16:39 JST
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052970203483604580121111790817460?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesThird
【社説】醜さ増す中国政府の民主派締めつけ―香港
中国政府は香港が1997年に特別行政区になった際、香港の民主化を約束した。
香港市民は中国政府がこの約束を守ることを望んでいる。
自由を求める香港の戦いに世界はもっと注目する必要がある。
中国政府の報復が醜さを増しているなかではなおさらだ。
香港の反汚職当局である廉政公署(ICAC)は28日、当地のメディア王、黎智英(ジミー・ライ)氏、同氏傘下企業の社員、マーク・サイモン氏、民主派の李卓人・立法会議員の自宅を家宅捜索した。
捜索令状には、黎氏が李氏など3人の民主派議員に献金したと記されていた。
これは、中国政府が香港の法執行機関の独立性を損なっていることを示唆するため、とりわけ悪い前兆と言える。
香港では政治家への献金は規制されていない。
黎氏のパソコンがハッキングされ、中国寄りの地元メディアのあちこちで献金の詳細が報じられた。
親中派の人々は、この献金問題を捜査するべきだとICACに公の場で訴えていた。
しかし捜査に根拠があるとは考えにくく、またタイミングもおかしい。
流出した献金記録によると、黎氏は李氏の主な資金提供者となっている。
黎氏の出版物は中国政府に批判的で、民主派への支持を大々的に打ち出している。
同氏とカトリック教会の陳日君・枢機卿は、2017年の行政長官選挙で民主派候補の出馬を認めるよう中国政府に求める民主化運動「オキュパイ・セントラル(占領中環)」を支持している。
このため、黎氏が中国政府の最大の敵とみなされるのはもっともだ。
今回の家宅捜索はオキュパイ・セントラル運動が本当の原因かもしれない。
献金記録で黎氏が運動の主催者に献金したことが分かり、主催者たちが後日、非暴力的な市民的不服従によって金融街の中環を封鎖した場合、同氏は陰謀の容疑で逮捕される可能性がある。
さらに、損害を被った企業から民事訴訟を起こされる可能性もある。
民主派の締めつけにマフィアグループも駆り出されている。
人気民主派サイト「ハウスニュース(主場新聞)」の創設者、蔡東豪氏は7月、脅迫を受けて同サイトを閉鎖した。
13年7月には1台の車が黎氏の自宅の門に衝突。あとには脅迫状と一緒にナイフと斧が残されていた。
08年には警察が黎氏と民主派議員の李柱銘氏の殺害計画を暴露した。
中国政府は昨年末、英銀大手のHSBCホールディングスとスタンダード・チャータードに圧力をかけ、多くの香港企業と共に黎氏の出版物への広告掲載をやめさせるのに成功した。
今月、親中派の新聞は、黎氏がエイズで死亡したとする偽の死亡記事を掲載した。
法執行機関を政治的に利用する動きは、中国政府の威圧行動の中でも香港を最も大きくむしばむ行為だ。
香港の警察はここ数年、民主派のデモ隊を狭い空間に追い込み、混雑による危険な状態を招いている。
毎年香港が中国に返還された7月1日に行われる民主派のデモ行進には、今年は約50万人が集まったが、警察はこの混雑ぶりを主催者のせいにし、歩くのが遅いことを理由に数人を逮捕した。
これまで高い評価を得ているICACがこうした動きに関与したことは、特に危険な変化だ。
デモ行進での逮捕や28日の家宅捜索は、法律と政府に対する香港市民の敬意を損なう恐れがある。
皮肉なことに、香港で最も忠実な中国政府支持者の1人であるジャスパー・ツァン氏が昨年、こうした事態に警鐘を鳴らしていた。
同氏は、施政者が市民の信頼を失えば、素晴らしい政策であっても反発を受けるとの考えを示した。
英国が残した独立機関を中国政府が着々とむしばむことは、一層の民主化と自主性を求める香港市民の願望をさらに強めるだけだろう。
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レコードチャイナ 配信日時:2014年9月1日 10時24分
http://www.recordchina.co.jp/a93521.html
中国、香港長官選での民主派候補排除を決める
=民主派は金融街占拠など抗議の構え―米メディア
2014年8月31日、米ラジオ放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)中国語電子版によると、中国の全国人民代表大会常務委員会が香港の次期行政長官選挙制度改革の原則に関する決定を採択したことを受け、香港の民主派は同日、政府庁舎前で抗議集会を開き、候補者から民主派を事実上排除する制度だと強く反発した。
常務委は31日、2017年の香港行政長官選から、香港の各界代表で構成する「指名委員会」の過半数の推薦を得た人物以外、立候補できないこと、また立候補者の数は2人または3人に絞ることなどを盛り込んだ案を採択した。
指名委は親中派主導になるのが確実で、民主派の立候補は事実上不可能になった。
この決定を受け、民主派団体はこの日、香港の金融街・中環(セントラル)地区を大群衆で占拠して抗議する街頭行動を近く実行する方針を明らかにした。
報道によると、香港警察は30日から、中環から金鐘(アドミラリティ)エリアに数千人の警察隊を配備し、警戒に当たっている。
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サーチナニュース 2014-09-01 10:31
http://news.searchina.net/id/1542218
香港紙「中国共産党は普通選挙実施の約束を破棄」
香港紙・蘋果日報(アップル・デーリー)は1日付で、中国人民代表大会(全人代)務委員会が8月31日に発表した、2017年に実施する香港特別行政区特別長官の選挙方式について、「中国共産党は普通選挙実施の約束を破棄」と強く非難する論説を発表した。
蘋果日報は民主派陣営に近い論調を特徴とする。
運営会社、壱伝媒(ネクスト。メディア)の創業者である黎智英董事会主席(会長)は8月28日、民主派への不正な政治献金の疑いで、家宅捜索を受けていた。
全人代常務委員会は
「確固不動たる“一国二制度”、“香港人による香港統治”、高度な自治方針政策を実現し、厳格に香港基本法に基づく実行、2017年に行政長官を普通選挙で誕生させることは、中央の一貫した立場」
などと説明した。
中国大陸側は、2017年の行政長官選挙について、有権者による直接投票による選出であるとして「普通選挙」と主張しつづけている。
しかし、8月31日示された選挙方式は事前の予想通り、大陸側支持者が多数を占めることが確実視されている「指名委員会」が、2、3人の候補者を認めた上での選挙だった。
香港側ではかねてから、
「民主派なども含め、自由に立候補ができる選挙でなければ、真の民主的制度ではない」
とする強い反発があった。
アップル・デーリーは論説の冒頭で、2017年の行政長官選挙を1997年の中国返還から30年後になると指摘し、
「30年間の願望が、真っ黒な天空になる」
と批判。
文中でも「北京は香港に対する普通選挙の約束を破棄した」など、強い調子で今回の発表を批判した。
論説は全人代法律委員会の李飛副主任が8月31日の記者会見で、外国人記者から
「国を愛することは、必ず共産党を愛することなのか?」
との質問を受けたことを紹介。
李副主任は
「中国共産党が全人民と各民族人民の心からの敬愛と指示を得たことは歴史が証明している。
したがって、このような中央人民政府を支持することは、特に特別行政区の行政長官にとっては言うまでもないことだ」
と回答した。
李副主任はさらに、もしも2017年に政治制度が足踏みをして、香港で多くの政治的な紛糾が発生したと仮定した場合
「それらはおそらく、発展のチャンスをつぶし、(発展のチャンスは)2度と来ないだろう」
と言明した。
論説は、李副主任の発言で
「(香港の)広範な人々が、幻想を捨て去った。
香港人の全人代に対する信用は失墜した」
と論じた。
記事は、香港で8月31日に発生した抗議デモを紹介。
雨の中、約5000人が集まって「抗命(命をかけての抵抗)」と書いたプラカードなどを示し、全人代側が発表した選挙方式を「ペテン」などと激しく非難。
これからの抗議活動について
「多くの人が抗争に加われば、香港にはまだ希望があるということになる。
人が少なければ、香港人自身が(民主化を)放棄したことになる。
そうなれば、いずれにせよ、香港は暗黒時代に突入することになる」
などの声が聞かれたという。
**********
アップル・デーリーは1995年創刊の、香港紙。台湾にも同名の姉妹紙がある。
大衆路線の紙面づくりに徹し、、芸能情報、企業や政治家のスキャンダルなどの多さが特徴。
扇情的で信憑性(しんぴょうせい)に乏しい記事があるとして、批判されることもある。
政治関連では、香港特別行政区政府や大陸側政権の批判が多く、香港民主派に近い論調をとる、香港でも数少ないメディアのひとつ。
香港当局は8月28日、同氏経営者の黎智英会長と民主派労働党の李卓人主席の自宅を政治献金についての不正行為の疑いで家宅捜索した。
同月31日の「選挙方式発表」の直前だったことから、民主派と支持者に対する圧力との見方が出た。
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ウオールストリートジャーナル 2014 年 9 月 1 日 11:45 JST
By ANDREW BROWNE 原文(英語)
http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052970204091304580126733237908558?mod=WSJJP_hpp_RIGHTTopStoriesThird
中国、香港でのプラグマティズム放棄
【北京】香港では、中国共産党への根深い不信感がある。
香港はおおむね、中国本土の飢饉(ききん)や、共産党主導の政治的暴力から逃れてきた人々によって作られた都市だからだ。
1970年代後半から90年代にかけて中国を指揮した故鄧小平氏はこれを理解し、巧みに対処した。
1997年に英国から香港を返還させた際に同氏が「1国2制度」の方式を取り入れたことは、香港での中国共産党の信頼性が低いと自覚していたことを示している。
ただ香港に入ってこれを取り返すだけでは、香港市民の信用を損ない、経済を破壊することになりかねないと認識していたのだ。
このため、香港は英国方式の司法制度と行政府の維持が許された。
また、将来の指導者が民主的な選挙で選ばれることも約束された。
だが、今日の中国指導部は、このような政治的なプラグマティズム(実際主義)を受け入れたり、香港問題で巧妙さや妥協を用いたりしようとする意欲をほとんどみせない。
これは中国全国人民代表大会(全人代)が31日に下した判断から引き出すべき結論だ。
全人代はこの日、香港行政長官の選挙に関する取り決めを採択し、中国共産党に事実上の拒否権を付与した。
全人代によると、行政長官の候補者は事前に審査を受ける必要がある。
以前、中国政府は「愛国的」な人のみが候補になれることを明確に示したことがある。
ここで言う「愛国的」とは、共産党用語で「党を愛している」ことを意味する。
要するに、
中国共産党は香港の大多数の市民との長期にわたる対立に自らを追い込む公算が大きい
ということだ。
これはまさに鄧氏が必死に回避しようとしてきた状況である。
香港の将来に対する市民の信頼は明らかに損なわれるだろう。
市民の抗議運動のなか、経済に連鎖的な影響が及ぶ公算が大きい。
民主派団体「中環(香港の金融街)占拠」は、中国政府が2017年の次回行政長官選挙で香港に本当の選択権を与えない場合、大規模な抗議活動を行って、主要なビジネス街である中環地区をまひさせると警告している。
選択の幅が大幅に縮小されたため、全てのシステムが抗議に向かう状況にある。
■行政長官選の新方針に香港住民が抗議
党の機関誌である「人民日報」は、「中環占拠」を攻撃した最近の記事の中で、
「人々はなぜ自分たちのホームランドをめちゃめちゃにしたいのか」
と問い掛けた。
もちろん、彼ら香港人は混乱を望んでいない。
そして、これは香港での差し迫る対決の裏に潜むパラドックスでもある。
香港ほど公民としての不服従の傾向が小さい都市は世界にほとんどないが、
これほど強い責任感と公民的モラルを示す都市もほとんどないという逆説なのだ。
香港の人々は、秩序ある行動をとることで知られ、それは抗議デモのときにさえ表れる。
近年、何百もの抗議デモが中間層を主体に行われており、中には家族連れもいる。
彼らは教育や社会福祉の改革といった実際的な問題を対象に抗議をしている。
実のところ、抗議活動は中国本土でも頻繁に行われている。
だが、本土では感情が爆発し、警官隊が催涙ガスや警棒で対応することも少なくない。
香港の抗議活動がおおむね平和的なのとは対照的だ。
抗議活動がひどい事態につながったケースはあまりに少ない。
このため、破壊的な台風のように、歴史に刻まれた衝撃的な瞬間として人々の記憶に残っている。
香港の人々は、例えば1966年の「スターフェリー」暴動のことを今なお話す。
香港のビクトリア・ハーバー横断のフェリー運賃の小幅引き上げを引き金に発生した暴動だ。
香港市民の冷静沈着さはすべて、政治的混乱の危険を熟知している穏健な香港社会の表れだ。
香港の人々の大半は、1950年代の人為的な飢饉と60年代の文化大革命という苛酷な時期に中国本土から逃れてきた人々とその子孫だ。
香港の住民がいまだに忘れていないのは、1967年の香港史上最悪の暴力だ。
当時、毛沢東の紅衛兵の狂信集団が香港に文化大革命を持ち込み、機動隊と対立して手製爆弾をまき散らした。
しかし現在、政治的な動機に基づく暴力が戻りつつある。
昨年には、香港のメディア王で「占領中環」運動の著名な支持者でもある黎智英(ジミー・ライ)氏の自宅に車が突っ込む事件が起きた。
自宅を占拠した犯人たちは、斧(おの)やナイフのほか、脅迫状を家に残していた。
今月28日には、民主派議員への献金にからみ、同氏の自宅が香港の反汚職当局である廉政公署(ICAC)による家宅捜索を受けた。
行政長官選挙候補に関する今回の全人代の決定が政治的な緊張を高め、香港社会を一層分裂させるのは避けられないだろう。
香港では、今年既に100万人以上が行進に参加している。
「占拠中環」運動の目的を支持するものと、支持しないものの両方でだ。
香港市民の中国への見方は常に期待と恐怖が入り交じっている。
中国の台頭が香港自身の経済見通しを改善させるとの期待と、マルクス・レーニン主義的な政治支配が越境してくるという恐怖だ。
そして今、その両方が現実になっているように見える。
中国の繁栄が貿易の中継地という香港の立場を大幅に改善させており、香港の商業施設には中国本土から来た標準中国語を話す人たちであふれている。
それが問題を引き起こしていることも確かだ。
香港という人口密度の高い地域に中国からの日帰り旅行客が押し寄せ、社会的な摩擦が生じている。
都会的な香港の人々は田舎くさい中国本土の人々の習慣に気分を害しやすい。
例えば、公の場で子供に小便をさせるといった習慣だ。
一方で、本土の富裕層は香港の不動産の価格をつり上げ、香港の地元の中間層が住宅を持つのを一層困難にしている。
本土の妊婦が出産にやって来ることで、香港の医療システムには圧力がかかっている。
本土の人々にはこのような悪い評判があるため、香港では「蝗蟲(バッタ)」と呼ばれることが多い。
しかし、これらはせいぜいいらだちの要因に過ぎない。
北京中央からの政治的な干渉は、より根本的な不安をあおっている。
最後の香港総督を務めた英国のクリストファー・パッテン氏は著書「東と西」の中で、香港の元役人の主張をからかっている。
同氏によると、この元役人は、中国当局者は選挙で不正工作をしたがらないと述べ、それは
「彼ら当局者が選挙結果を事前に知りたいからにすぎない」
と主張したというのだ。
これは、まさしく31日の中国全人代の決定がもたらす長期的な波及効果だろう。
だが、最も喫緊の効果は、市民の闘争が増えることだろう。
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サーチナニュース 2014-09-02 17:35
http://news.searchina.net/id/1542425
香港行政長官には中央に対抗する者は過去、現在、将来とも絶対に就任できない
=中国大陸側責任者
中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会の李飛副秘書長は1日、香港で
「中国中央に対抗する立場を変えない者は、過去と現在はもちろん、将来も絶対に、行政長官に就任することはできない」
と述べた。
中国新聞社が報じた。
全人代は8月31日、2017年に実施される香港行政長官の選出方式を発表した。
一般有権者による投票方式だが、立候補者にあたっては「指名委員会」の承認を必要とする。 指名委員会は中国中央寄りの人物が多く選ばれるので、民主化の推進を求めるなどで、中国中央、中国共産党に反対する人物は事実上、立候補は不可能と見られている。
中国大陸側は、一般住民の投票で選出することから、「2017年の行政長官は普通選挙による」と説明。
しかし香港側では「民主的な選挙でない」との反発が発生した。
李副秘書長は香港を訪れ、1日午後に香港特別行政区の政府高級幹部を前に、普通選挙についての決定事項などを紹介し、中国側の姿勢と方針を説明した。
李副秘書長は、
「香港が祖国に復帰して17年になる現在も、少数の者は依然として中国が香港に対する主権を回復した事実を受け入れようと思わず、中央の香港に対する管轄統治権を認めようと思わない」
と論じ、そのような人々は
「一国二制度と香港基本法の定めに『別の解釈』を施し、外部勢力の助けを借り、絶えず政治紛争を挑発し、中央政府に矛先を向け、香港をひとつの政治実体に変えようとしている」
と主張した。
李副秘書長はさらに、
「全人代常務委員会はこのたび、行政長官の普通選挙制度の核心的問題を決定した。
香港社会で論争を呼んだ最大の問題に、明確な規則を定めた」
と発言。
その結果として
「中国中央に対抗する立場を変えない者は、過去と現在はもちろん、将来も絶対に、行政長官に就任することはできない」
と述べた。
中央に対立する人物を、香港政府トップである行政長官に就かせることができない理由としては
「必然的に中央の香港に対する管轄統治権を損ね、必然的に国家の主権、安全、発展の利益を損ねることになる。
香港の繁栄と安定を損ねることになる」
と述べた。
さらに
「香港社会には、中央は香港の少数意見にも妥協してほしいとの希望もある」
と述べた上で
「彼らの希望とその出発点はよい。
しかし、もしも普通選挙問題における政治の実質をはっきりと認識し、普通選挙問題の論議に絡む重大な原則問題をみれば、妥協はできない」
と断言した。
李副秘書長は、
「香港が直面する最大の問題は、少数の問題が普通選挙を議題に、たえまなく社会の紛争を作りだし、経済発展を阻害し、民生の改善を妨害していることだ」
と述べた。
**********
◆解説◆
李副秘書長は「少数」とは形容したが、
「依然として中国が香港に対する主権を回復した事実を受け入れようと思わず、中央の香港に対する管轄統治権を認めようと思わない」者が存在することは認めた。
ただ、李副秘書長の説明には、かなりの疑問点がある。
実際には、香港で民主化を求めるグループが6月下旬に実施した投票では、「西側と同様の選挙」、つまり「立候補に制限を設けない普通選挙」を求める意見が約70万分集まるなど、人民日報による「投票総数は10万に満たない」との事前予想よりもはるかに多い結果となった。
さらに問題なのは
「中国中央、あるいは中国共産党に対する不信や反発が多いこと」
の理由の分析、または自省の言葉がまったくないことだ。
あるいは
「個人的には十分に分かっているが言えない」
とも解釈できる。
李副秘書長は代わりに、香港で政治的混乱が続くと「経済発展を阻害」と論じた。
経済における恩恵をもたらすことで支持を固めるのは、中国共産党が国内において1990年代から盛んに用いて、成功してきた方法だ。
中国共産党はその後、香港に対しても、台湾に対しても同様の発想で接するようになった。
そして、かなりの程度の成功を収めたといってよい。
ただし、中国大陸部でも
「経済的恩恵さえもたらせば、支持はゆるぎなくなる」との時代は過去のもの
になりつつある。
そもそもが、かつてのような高度経済成長は中国においても、すでに実現が不可能になった。
台湾でも今年(2014年)3月、発効直前だったサービス貿易協定に学生らが「ノー」を突きつけた。
同協定については、現在もまだ進展をみていない。
中国中央は現在、強引であったとしても香港のトップに大陸側と親和的な人物を据えようとしている。
中国国営の中国新聞社は李副秘書長の発言を
「非常にきつく聞こえるが、しかし極めて切実な期待に満ちている。
それは、現実にそぐわない考えの持ち主が、国を愛し香港を愛する立場に登ってくることだ」
などと解説した。
仮にそうだとしても、李副秘書長の言葉に改めて納得する人が、そうはいるとは思えない。
大陸側は、香港住民の大多数を真に納得させなければ、香港と大陸の関係で、
「形は統一。心は分裂」
という事態がさらに進行することになる。
香港人にとっても大陸人にとっても「幸せな状態」とは思えない。
主要な責任は「主権を有する中国中央」にあるということになる。
』
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2014.09.03(水) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41641
社説:香港の選挙を巡る難しい選択
(2014年9月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
■17年行政長官選挙制度で二分する香港
英国と中国が1984年に香港返還の条件で合意した時、中国サイドは香港が「一国二制度」の原則の下で運営されることに同意した。
これは中国が香港に対し、本土で認められているよりも大きな政治的自由を許すことを意味した。
だが、中国政府は、香港にどんな選挙制度を持たせてもいいか後日決める権利を留保した。
不確実な時期を経て、中国は決断を下した。
香港の市民は自分たちの指導者を選ぶことができる――ただし、それは香港市民が中国の特徴を備えた民主主義を受け入れる場合に限る、というものだ。
■香港基本法の範疇でぎりぎり許される希薄な民主主義
中国政府が選んだ複雑な選挙プロセスは、基本法――1997年の香港返還前に中国が英国と調印した香港のミニ憲法――の条文の範囲内で許される中で最も希薄な形の「民主主義」だ。
基本法の条文の中で、中国は香港市民が普通選挙によって行政長官――香港の市長に相当――を選ぶことに同意している。
8月31日に明らかにされた中国政府の決定は、その誓いの字義には従っている。
だが、提案されたのは、減衰した形の民主主義だ。
中国の全国人民代表大会(全人代)は、2017年の香港行政長官選挙の候補者は、1200人から成る指名委員会の過半数以上の推薦を得なければならないと定めた。
そして、個人および法人の選挙人約25万人によって選ばれる指名委員会の構成は、親中派が多数を占める。
中国政府の決定は、中国に敵対的な候補者が、有権者にアピールする機会を得る前に排除されることを確実にする。
「中国を愛する」者だけが出馬すればいい。
そしてこの審査を通った候補者が、1人1票の原則に基づいて有権者に提示されることになる。
中国はもっと譲歩できたはずだ。
結局のところ、中国政府は選出された行政長官を承認する最終決定権を持つからだ。
確かに、選挙後にこの拒否権を発動することには、憲政危機を引き起こすリスクが常に伴う。
だが、大半の人は、香港の有権者は極めて実利主義、現実主義であり、中国政府と露骨に敵対する人物を行政長官に選ぶことで香港の繁栄を危険にさらすようなことはしないと考えている。
にもかかわらず、中国政府は香港の民主化運動の急進的な性質に不安を覚えたようだ。
北京の指導部は、中国が与えてもいいと思っていた以上の選挙の自由を求めた、香港の6月の非公式住民投票に不快感を覚えた。
はっきりしていることは、中国が基本法に調印した時に背負った義務を、条文の文字通り果たすということだ。
中国の指導部は金融センターとしての香港の地位を低下させたくないし、国際的な合意を守らなかったという批判にさらされたくもない。
だが、中国政府は必要最低限のことしかしない。
■中国の強硬姿勢が香港の地位を損なう恐れ
その結果、香港の市民は厳しい選択を迫られる。
香港は、北京の政治的君主から突きつけられた半端な選挙を受け入れることもできる。
あるいは、香港の立法会(議会)で法案可決に必要な3分の2の議席の承認を与えないことで提案を否決することもできる。
後者の場合、現状は変わらない。
中国政府が立場を後退させることはなさそうだ。
だが、中国政府はそれによって自国の利益が損なわれていることを認識すべきである。
中国の態度は香港の穏健派の反発を買い、香港の自治には常に限界があることを理解している人々をも怒らせた。
香港でも中国政府が決定権を持つという主張は恐らく台湾でも注目され、台湾の多くの人が中国への接近は危険だと判断するかもしれない。
何にも増して、中国の対応は、商業と金融のハブとしての香港の特性を守るために設計された「一国二制度」を弱体化させた。
これは中国がやる必要のなかったことだ。
』
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レコードチャイナ 配信日時:2014年9月24日 18時7分
http://www.recordchina.co.jp/a94676.html
香港世論調査、2割が海外移住を検討
=香港政府と中国政府に不信感―英メディア
2014年9月22日、英BBC(中国語電子版)は、香港人の5人に1人が政治不信を理由に海外移住を検討していると報じた。
香港中文大学が9月10~17日に1006人を対象に行った調査で、21%が香港政府と北京の中央政府への不信感から海外移住を検討していると答えた。
香港の金融街・中環(セントラル)地区を多くの群衆で占拠して抗議するという民主派の計画については、支持が31.3%、不支持が46.3%だった。
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【描けない未来:中国の苦悩】
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