2014年8月25日月曜日

中国の「外資たたき」:中国市場から外資企業の影響力を一掃することが最終的狙い

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 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える   2014年08月25日(Mon)  石 平 (中国問題・日中問題評論家)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4135

中国の「外資たたき」は新たな闘争の幕開け

 世界中で大きな波紋を呼んだ上海福喜食品の「期限切れ肉問題」が暴露されたのは7月20日、上海の衛星テレビ「東方衛視」の報道番組によってであった。

 同テレビ局が2カ月にも及ぶ潜入取材を行った結果、上海福喜の生産現場でさまざまな違反行為が行われていることを掴んだという。
 テレビで流された映像には、地面に落ちた肉を何事もなかったかのように戻す従業員の様子や表面が青く変色した期限切れの肉を平気で使用する場面がはっきりと映され、同社の杜撰な衛生管理の実態が明るみに出た。

■外資企業だから標的に?

 一連の報道は、日本では企業の不正に対するメデイアの正当な告発だと普通に理解されているが、中国国内ではむしろ最初から、「東方衛視」の報道ぶりの「異様さ」が注目の的となった。
 中国国内の食品加工メーカーなら、上海福喜食品よりも酷いケースはいくらでもあり、上海福喜食品のケースはむしろ「軽い方」の部類に属するものだからである。
 にもかかわらず、「東方衛視」は一体どうして上海福喜食品に照準を当ててあれほど執拗な「潜入取材」を断行したのか、との疑問があがってきているのである。

 たとえば、著名な経済学者である王福重氏は「東方衛視」報道の翌日に自分のブログで、
 「汚水を垂れ流し、ハエが飛び交い悪臭漂う国内の一部の企業はさらに悪質であるが、
 それに比べて衛生環境はむしろ良い方の上海福喜が標的にされたのは一体何故か」
との疑問を呈したが、それは多くの中国人たちの率直な感想を代弁したものであった。

 こうした中で、
 「上海福喜は外資企業だから対象にされたのではないか」
との見方が浮上してきた。
 上海福喜食品有限公司は、世界最大の食肉加工グループであるアメリカのOSIグループが上海に作った会社である。
 しかも中国との合弁会社ではなく、この時代には珍しい100%独資会社なのだ。

 人々の疑念をさらに深めたのは上海公安当局の動きだ。
 実は「東方衛視」でかの報道番組が流されたその日のうちに、上海公安局はすぐさま上海福喜食品に対する捜査に乗り出した。
 このような電光石火の早業は、中国国内では異例というよりもむしろ前代未聞のケースで、人々を大いに驚かせた。

 2日後の22日、上海市食品薬品監督管理局はさっそくこの問題についての見解を発表し、上海福喜食品公司での食品安全基準違反は従業員の個人的な行為ではなく、組織ぐるみのものだったとの認識を示した。

 監督当局の示したこのような認識は、上海福喜食品をよりいっそうの窮地に追い込んだ。
 「従業員の個人的な行為」ではなく、「組織ぐるみ」の行為だと認定されれば、企業そのものが全責任を負わなければならないことは明らかだ。
 しかし、問題発覚のわずか2日後に、本格的な調査も行っていないはずの当局は一体何を根拠に「組織ぐるみの行為」だと断定できたのか、それこそが大いなる疑問である。

 そして7月23日、上海の警察当局は、上海福喜食品が使用期限切れの食肉を出荷していたとされる問題を立件捜査し、既に5人を拘束したと明らかにした。
 問題発覚わずか3日後の当事者の拘束は、中国でももちろん異例の速さである。

 ここまでくると、7月20日における「東方衛視」の報道番組の放映は、単なる一テレビ局の単独行為であるとはとても思えなくなった。
 番組放映の当日に公安局が捜査に入ったということは、どう考えても、放映の前からテレビ局と公安局が既に「連携」していることの証拠ではないか。
 20日の番組放映と当日の捜査開始、その2日後の監督当局による「組織ぐるみ行為」の認定、さらに翌日の公安局による当事者の拘束――。
 わずか4日間で一気に展開したこの一連の動きは、まさに阿吽の呼吸とも言える見事な連携プレーではないか。

 もちろんその際、テレビ局と食品薬品監督管理局と公安局、行政上関係のないこの3つの機関をまとめて連携プレーをさせることの出来る唯一の上位組織は、すなわち共産党政権下の上海市政府であることは言うまでもない。
 つまり上海福喜食品問題に対する告発と摘発は、まさに政府当局の主導下で行われた政治的行為であることは明らかである。

■人民日報、国営中央テレビも批判

 それでは政府当局は一体なぜ、テレビや公安局などを総動員して、一外資企業に対してそれほど手の込んだ摘発を行ったのだろうか。

 その狙いを明確に示したのは、7月24日付の共産党機関紙の人民日報の関連記事である。
 この記事は上海福喜食品が米食品大手OSIグループの企業であることを強調し
 「外資系企業は海外では法律を守っているのに、なぜ中国ではそうしないのか」
と痛烈に批判した。
 そして同じ日に、国営中央テレビもウェブサイトで「国際的ファストフード企業が相次いで食品安全問題を起こしている。
 中国人の健康を軽視しているのか」と責め立てた。

 人民日報と中央テレビ局の背後に中国共産党政権があることは周知の事実であるから、中国の最高権威であるこの2つの宣伝機関が上述のような批判を行ったことで、2つの大事なポイントが確信に変わった。
★.一つは、上海福喜食品に対する摘発とそれに伴う一連の動きを主導したのはやはり共産党政権そのものであること。
★.そしてもう一つは、それを主導した
 共産党政権の狙いは、まさに外資企業たたき
であること、である。
 つまり、上海福喜食品問題に関するテレビ報道が流れた当日から、中国国内であがっていた
 「それは外資たたきではないのか」という疑念は、やはり事実であることが分かったのである。

 そして人民日報と中央テレビ局は今回の一件を「外資たたき」の方向へ持っていくと、それがあっという間に中国国内の圧倒的な世論となってしまい、中国市場で活動している関連企業は一斉に窮地に立たされた。
 こうした中で、上海福喜食品の親会社の米企業だけでなく、最大の仕入れ先のマクドナルドまでが謝罪に追い込まれた。
 マクドナルドの受けた経済的損失はさることながら、中国市場におけるその信用失墜も深刻なものであった。

■日系企業にも及ぶ外資たたきの波

 事態はすべて、中国政府の思惑通りに進行していた。
 しかし中国政府の狙いは単に一つ二つの食品関係企業をたたくことに留まらなかった。

 7月28日、上海福喜食品問題の暴露からわずか8日後に、中国当局は突如、米マイクロソフトの中国各地の事務所に対する立ち入り調査を一斉に開始した。
 マクドナルドとマイクロソフト、中国国内で絶大な人気を誇るこの2つの代表的米国企業がほぼ同時に捜査や調査の対象となっていることは、
 政権の狙いが外資企業の影響力を中国市場から一掃することであることを示している。

 そして8月6日、国家発展改革委員会は、日本の自動車関連企業12社や、独アウディ、米クライスラーなどを対象に、独占禁止法違反容疑で調査を進めていることを明らかにした。

 8月9日には、中国系の香港紙、文匯報(電子版)などが伝えたところによると、中国広東省の米系スーパー大手ウォルマートの店舗で、半月以上も使い回した食用油で揚げたフライドチキンを販売したり、虫が混入していたとして返品されたコメを店内のレストランで提供したりした疑いがあるとして、地元当局が立ち入り検査を行ったと伝えた。

 こうした中で、大きな災いはやがて、中国に進出している多くの日系企業にも降り掛かってきた。
 8月20日、中国の独占禁止法当局が日本の自動車部品メーカー12社に独禁法違反があったと認定し、10社に合計12億3500万元(約200億円)の制裁金を支払うよう命じた。
 価格カルテルを結ぶなど業界ぐるみで自動車部品の価格をつり上げる不正行為があったとの理由であるが、それらの日系企業が一体どのような不正行為を行ったか具体的なことはまったく不明で、中国当局が恣意的に断定しただけのことである。
 その一方、当局はさらにトヨタなど完成車大手に対しても輸入車や補修部品の価格を不正につり上げているとの疑いで調査を進めているという。

 以上が7月20日から8月20日までのわずか1カ月間における中国政府の外資たたきの全容である。
 人々の生活と密接していて関心の高い食品生産分野での外資企業の不正摘発から着手し、「外資が悪い」という世論を国内で醸し出した上で、間髪を容れず自動車メーカーなどの外資企業に対して「本丸攻め」を始めたわけである。
 その一連の動きはどう考えても、中国共産党政権の主導下で展開されており、共産党政権の用意周到さと戦略の巧妙さを存分に示した計画的な作戦であろう。
 どうやら彼らは、外資企業に対するスケールの大きな包囲戦を既に始めているのである。

■「新しい闘争を深く理解せよ」

 ではなぜ今この時期になって、共産党政権は一体何のために、どのような思惑を持って、外資企業に対してこれほどの大掛かりな作戦を開始することになったのか、その真意は一体何であるのか。
 実は、その謎を解く鍵の一つは、ちょうど作戦開始の7月下旬に人民日報に掲載された一通の重要論文にあるのである。

 7月23日、すなわち例の上海福喜食品の関係者5名が上海警察に拘束されたその日、中国共産党機関紙の人民日報は共産党中央党校韓慶祥副学長の論文を掲載した。「新しい闘争を深く理解せよ」と題するものである。

 共産党中央党校といえば、その名の通り、中国共産党の高級幹部の養成・研修を担当する党の「最高学校」である一方、党の政策方針を裏付けるための理論武装を整えるための党の最高理論機関としての役割をも担っている。
 昔の毛沢東主席や今の習近平主席もこの中央党校の「学長」を務めたことがあるから、その役割と地位の高さがうかがえる。

 前述の韓慶祥氏は中央党校の筆頭副学長である。
 名義上の学長は政治局常務委員の劉雲山氏が兼任しているから、韓氏は実質上の「学長」となっている。
 つまりこの韓氏の立場は、中国共産党政権の最高の理論的権威、あるいは共産党の理論武装の最高責任者、ということである。

■負けられない「市場争奪戦」

 そして前述の人民日報論文は、まさにこのような立場から書かれたものであるが、その中で韓氏は、「イデオロギー闘争」、「領土闘争」、「反腐敗闘争」など、共産党政権の直面する「8つの新しい闘争」を取り上げ、それらを勝ち抜くために「国内外の敵」と徹底的に戦うことを党員幹部に呼びかけた。

 中国の場合、中央党校副学長たる人は人民日報で「闘争」を提言すると、それは往々にして共産党政権の政策に反映されて実際の「闘争」となってしまうケースが多い。
 たとえば韓氏の論じたところの「反腐敗闘争」や「領土闘争」は今や実際、習近平政権がもっとも力を入れている内外政策の二つとなっていることは周知の通りだ。

 そして、前述の「8つの闘争」の一つとして、韓氏は「市場争奪戦」について述べ、
 「わが国の巨大市場を巡っての西側諸国との争奪戦は1日も止んだことがない」
と指摘した上で、そのための「闘争」を展開していくことを提言しているのである。

 確かに韓氏の言う通り、中国に進出した西側諸国の多くの企業は今、「13億の大市場」を狙って中国国内企業と熾烈な「争奪戦」を展開している。
 しかしそれはあくまでも正常なビジネス活動で、普通の商業競争の範疇に属するものである。
 第一、外資企業の中国進出を積極的に受け入れた時点で、中国政府は既に国内市場の一部は外資によって切り開かれることを容認しているはずであり、外資企業もまさにこのような前提において中国に進出したわけである。

 このような経緯からすれば、韓氏の論理はいかにも乱暴なものであることが分かる。
 中国政府は外資企業の中国市場進出を容認していたのに、今さらになって、政権党の理論的権威たる人物が、中国市場における外資企業の通常のビジネス活動を「中国市場の争奪戦」と捉えた。
 まさに政権党の立場から、それに対する「闘争」を宣したのだ。

 この論理からすれば、外資企業が中国市場で展開する競争・競合活動のすべては中国に対する「敵対行為」と見なされ、外資企業そのものは彼ら中国共産党の「闘争する」相手となるのである

 国際ビジネスの常識からしても韓氏の論理はデタラメなものであろうが、問題は、彼の提唱するところの、外資企業を相手とする「新たな闘争」は、今の習政権の実際の政策方針となってしまっている点である。
 そう、まさにこの韓氏論文が発表された7月下旬から、中国政府は上海福喜食品の摘発を皮切りにして、欧米や日本の自動車関係メーカーを中心とする大手外資企業に対する「たたき作戦」を一斉に開始したことは前述の通りだ。
 タイミング的に見ても、この一連の作戦展開の背後にあるのは、上述の韓氏論文の提言した「新たな闘争」であることは明らかであろう。

 こう考えてみると、上海福喜食品の摘発から日系企業12社に対する200億円罰金までの中国当局の一連の動きは決して無関係の個別事案ではないことが分かる。
 中国市場から外資企業の影響力を一掃することはまさに彼らの「闘争」の最終的狙い
なのであろう。
 実際、中国市場で大きなシェアと影響力を持つ食品や自動車分野の外資企業に照準を当てているのもまさにその故である。

 つまり、本来なら中国企業が主体となって
 ビジネス競争の手段をもって外資企業と戦うべきところの「中国市場争奪戦」を、
 共産党政権が政治的力をもってそれを代行しようとしているのだ。
 中国企業が国内市場の競争において外資企業に負けていれば、共産党政権は警察権力を含めた政治的力をもって外資をたたき潰して中国市場を奪い返す――。
 それが、中国当局が展開している外資企業たたき作戦の本質なのである。



サーチナニュース 2014-08-27 21:11
http://news.searchina.net/id/1541866

ブーメラン効果になっちゃう 日本企業への制裁で 「中国の自動車メーカーに危機が訪れる」=中国メディア

 中国の国家発展改革委員会(発改委)が日本の自動車関連企業12社が価格操作をしていたと認定し、
  うち10社に総額12億3540万元(約205億円)の制裁金の支払いを命じたことについて、
 中国メディアの中国質量新聞網は26日、
 「反独占調査を通じて中国メーカーの存在感はいっそう希薄になってしまった
と主張した。

 記事は、発改委が制裁金として支払いを命じた総額12億3540万元という金額は 「過去最大」の規模であると紹介し、発改委の公式ウェブサイトでは
 「日本企業12社はすでに中国の法律に則って事業を展開することを含めた業務の改善措置案を発改委に提出した」
と掲載されていることを伝え、
 「日本企業の“過ちを認める態度”はなかなかすばらしい」
と主張した。

  一方で、発改委が価格操作をしていたと認定した日本企業12社のうち、複数の企業が米国でも反独占行為で処罰されたことがあると指摘。
 その背景として、専門家の話を引用し、
 「日本の自動車部品は世界の自動車産業のなかで高いシェアを誇るため、価格操作を行うことができる条件下にある」
と伝えた。
 発改委による“反独占行為”の調査を受け、中国に進出している自動車メーカーが高級車の値下げを発表したり、部品価格の値下げを行ったりしていることを挙げ、
 「中国の自動車メーカーにとってはかつてない危機が訪れることになる」
と指摘。
  中国メーカーはブランド力や生産規模などにおいて、海外メーカーの自動車には「太刀打ちできない」と指摘。
 海外メーカーが車種や部品の値下げを行えば、中国メーカーの「価格優位」が打ち消され、中国メーカーが劣勢に立たされることは明らかだと指摘した。
  続けて、
 「発改委による“取り締まり”は本来、海外メーカーの独占を断ち切り、中国メーカーのブランド力を向上させることが目的だったはず」
とする一方、今回の反独占調査を通じて中国メーカーの存在感はいっそう希薄になってしまったと論じた。
(編集担当:村山健二)(イメージ写真提供:123RF)



レコードチャイナ 配信日時:2014年8月28日 8時57分
http://www.recordchina.co.jp/a93353.html

中国の「日本企業制裁」、外資メーカーの懸念招く
=「BMW・ベンツは“次は自分か”と様子うかがう」―米紙

 2014年8月28日、中国当局が日本の自動車部品メーカーに対し独占禁止法違反があったとして制裁金の支払いを命じたことが外資メーカーの懸念を呼んでいる。

  今月21日、日本の華字紙・中文導報は中国当局が20日に日本の自動車部品メーカー10社に計12億元(約200億円)の支払いを命じたと伝えた。
 中国のかつてない大規模な摘発に「次はどこか」という懸念が広がっている。

 この現状に対し米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、
 「アウディ、BMW、ベンツなども『次は自分か』と様子をうかがっている」
と報じ、韓国メディアは
 「中国では摘発範囲が拡大するに伴い、検挙する対象も大物が増えている」と伝えている。

 さらに、日本メディアは中国政府の制裁について、
 「背景には外資をたたき、自国企業を守る狙いがある」
と分析し、制裁が拡大すれば海外の対中投資に影響が出る可能性もあると指摘している。



レコードチャイナ 配信日時:2014年9月2日 9時54分
http://www.recordchina.co.jp/a93574.html

独禁法違反で制裁金200億円、日系企業の中国離れが加速か―中国

 2014年8月31日、RFI中国語版は記事「日本の対中投資が明らかに減速」を掲載した。

 先日、中国国家発展改革委員会は独占禁止法違反で日本企業12社に制裁金12億4000万元(約211億円)を科した。
 中国では外資系企業に対する独占禁止法違反の調査、処罰が相次いでいるが、
 この傾向が続けば対中投資の減少につながりかねないと日本世論は見ている。

 ある日本財界関係者は
 問題となったカルテルは昨日今日始まった問題ではなく、なぜ今になってこれほど厳しい処罰が科されたのかが問題だ
と指摘した。
 今年になって日本企業の対中投資は急速に減少している。
 1~7月の投資額は前年同期比45.4%減少となった。貿易額も昨年から減少が続いている。

 労働コスト上昇が続く中、中国は投資先としての魅力を失いつつある。
 今回の独占禁止法違反の処罰が中国離れを加速させる可能性もありそうだ。



サーチナニュース 2014-09-04 14:55
http://news.searchina.net/id/1542627

独占禁止の摘発強化
・・・中国政府関係者「撤退で圧力かける外資は自業自得の目にあうぞ」

 中国では独占行為があったとして、外資企業が罰金を言い渡される例が急増している。
  米国でも欧州連合でも、中国政府への不満が高まっている。
 中国政府・商務部研究院国際市場研究部の白明副主任は、外資側に高まる不満について、
 「中国企業も取り締まりの対象になっている」、
 「外資が引き上げなどを持ち出して威嚇した場合、最後には自業自得という目にあう」
などと批判した。
 中国新聞社が報じた。

 中国に進出した欧州連合(EU)系の企業団体である中国欧盟商会は8月 中国当局による「独占行為の取り締まり」について「不平等な扱いを受けている」と表明。
 米国系企業の団体である中国美国商会も2日、
 「中国国内で外国企業は日増しに、反独占法とその他の法律における公務執行の標的になっている。
 このような状況が改善されなければ、企業は投資を減らす可能性がある」
とするリポートを発表した。
  リポートによると、調査に応じた164社の約半数が、中国当局の調査を
 「(外資系企業を)選んでおり、独占禁止や食品安全の法律についての主観的な実施だ
との考えを調べた。
 リポートはさらに
 「中国では日増しに(企業活動についての)リスクを増大させている。
 すなわち、投資の目的地として人々を引きつける力を、永久に失いつつある
と主張した。

  中国欧盟商会は中国当局の動きについて
 「大きな問題が2つ存在すると言えるだろう。
1].まずは調査の透明性。
2].そして調査において外資が不平等な待遇を受けている
ことだ」
との声明を発表した。

  商務部研究院国際市場研究部の白明副主任は同問題について
 「調査を受けた外国企業は、欧米市場では規則をきちんと守っている。
 調査にもきわめて協力的だ。
 中国市場ではどうして、調査されるとこんなに多くの雑音がでるのだ?」
と不満を示した。
 白主任は、
 「市場経済では、市場の公平な秩序を維持し、市場参入者すべてを、平等に扱うことこそが、最も重要なことだ。
 中国企業だけでなく、外国企業に対しても、同じことが言える」、
 「ところが一部企業は中国ではいつも、市場経済の尺度で要求をするのに、自らの独占行為は見て見ぬふりをして、ひどい場合には自分のことを棚に上げて、他人を非難する」
と主張。
  現在進めている反独占の動きについては
 「外資の中国における発展の余地に圧力をかけるものではない。
 外資が中国市場で大きな利益を得ることは、非難すべきことではない。
 しかし独占行為にたよって度を越した利益を得れば、他の企業の発展のチャンスを損ねることになる。
 これは、公平な競争の実現では決してない」
と述べた。
  白主任はさらに
 「公平な競争は海外ブランドも保護し、民族ブランドも保護する。
 したがって、外資も中国資本も制限を受けることになる」
と主張。
 さらに
 「もしも外国企業が調査を受けた際に、投資を減らすと威嚇したならば、そのような短慮により、中国市場を失うことになる。
 最後は自業自得という目にあう」
との考えを示した。

  中国当局による「外国企業への規制強化」の最初の例は7月下旬、米国に本社を置く食肉加工などの多国籍企業、OSIグループ傘下の上海福喜集団が期限切れの鶏肉を混入させた製品を外食企業などに出荷していた事件だった。
  同事件の結果、日本などでも大手外食チェーンが使用している食材について「中国からの輸入品ではない」ことを店頭で表示するなどの騒ぎになるなど、それまでにも多発していた食品分野における「チャイナ・クオリティー」の問題が改めて注目されることになった。

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◆解説◆ 
 白主任の説明は、たしかに「正論」だ。
 しかし、反独占に対して外国企業側から強い不満の声が出ていることには、やはり理由がある。
   現在進行中の「反独占」の動きについて具体的な情報はあまり出てこないが、
 中国では従来から法や規則の運用が、その時、その時の状況や、担当者や指導者の個人的な考えの影響を強く受けきたという事情があった。
 世界のどの国でも似たような状況はあるが、
 中国の場合、担当者の裁量がとりわけ極めて強く働く
との指摘がある。
  かなり多くの場合、外資が優遇されてきたのは事実だ。
 ただし、現地当局が望まない業種の場合、極端に冷遇された事例もあるという。
 そのことから、外資が中国に進出する場合、拠点の選定が極めて重要とされた。
 中国側に歓迎されれば、破格の厚遇を受けることも珍しくなかった。
 進出する外資も、それを折りこみ済みで中国における活動を続けることになる。
   中国側が「規則を厳格に適用」するのなら、それは主権の行使でもあり、安直に非難することはできない。
 ただし、相手を納得させながら適正な速度でルール適用の「正常化」を進めるならともかく、
 「いきなりの実施」をしたのでは、外資の立場からすれば「話が違うではないか」
ということになる。
  また、中国当局には、規則を無理に適用して「外国いじめ」をした“実績”がある。
 よい例がレアアースの輸出停止だ。
 尖閣諸島の問題で日本と対立したため、日本経済を困窮させようとした。
   中国政府のやり方は容認できないとした日本、米国、EUは共同で世界貿易機関(WTO)に提訴。
 WTO側は2014年8月に、中国側の主張は認められないとの最終結論を出した。
 当局側が「規則きちんと適用」と説明しているにもかかわらず、企業側から強い反発が出ているのは、やはり異常だ。
 外資側が強く反発していることの一因には、法とルールの運用についての「チャイナ・クオリティー」の問題がある。
 別の言い方をすれば、
 中国当局は外国企業の信頼を得ていない
ということになる。


サーチナニュース 2014-08-21 12:47
http://news.searchina.net/id/1541232

中国・李克強首相
「規制緩和、もっと徹底せよ。政府は権限手放せ」
・・・官僚の根強い抵抗もほのめかす

 中国政府は20日、同日行われた国務院常務会議のうち、李克強首相が行政および経済改革について改めて示した強い意志を公式サイト上で紹介した。
 李首相は許認可事項の取り消しなど、規制緩和の徹底を訴えた。
 これまで中国政府は「やるべきでないことを多くやっていた」と主張し、思い切って権限を手放せと繰り返した。

  李首相が2013年3月に任期5年間で発足した同内閣のスローガンとして掲げているのが「簡政放権(簡素な政府、権限の手放し)」だ。
 このところ、急ピッチで進めているのが許認可事項の取り消しで、20日の国務院常務会議でも、87項目が取り消しまたは一部取り消された。
 李首相は、
 「(役人は)これまで、許認可の『丸つけ』を習慣的にやってきた。
 自分自身で権限を消滅させ続けよ」
と主張。
 政策担当者として
 「硬骨漢となり、障害物を駆逐せよ。思い切ってやらねばならない」
と述べた。
 李首相によると、政府がなすべきことは「許認可」ではなく、事業への参画を自由化した上で、法令や規則を順守しているか監視・監督することだ。
 そのことが経済を活性化するために不可欠という。
 20日に決まった許認可事項の取り消しについては8割程度が投資や企業経営に関係することだったと説明し、「中身があった」と評価した。
 会議において李首相は
 「目下のところ、経済情勢は依然として錯綜しており複雑だ。下押し圧力も強い」
と危機感を示した。
 ただし「就業状況は比較的安定」との見方を示し、その大きな理由として会社登記についての規制緩和を断行したことを挙げた。
  李首相によると、同規制緩和は企業登記を600万件増やす効果をもたらし1000万人以上の雇用が発生した。
 李首相は「
 経済を安定して発展させる根本的な目的は雇用機会を確保することだ。
 『簡政放権』は創業、起業に道筋をつけ、企業の発展の足かせをはずすために、大きな役割を果たす
と述べた。
  李首相は「政府はやるべきでないことを、やりすぎてきた」と述べ、政府と市場の正常な関係を築くべきと主張。
 さらに、官僚による報告書について
 「モデル・パターンとかモデル地域との言葉を使い、見た目は素晴らしいが、庶民が実際に起業しようとしても、依然として極めて困難な場合がある」
と批判した。
 現実的な問題点としては
 「(官僚組織が)形式的には権限を放棄していても、実際には放棄していない」
との現象が存在する指摘。
 改革というパイプを詰まらせる障害物を出現させてはならないと述べ
 「国務院常務会議で決まり、政府各部門(のトップも)了承した作業は、絶対に実行させねばならない」
と強調した。
  李首相は、規制緩和した後には、政府部門の監視と監督が重用になると説明。
 例として、知的財産権を侵害するいわゆる「パクリ製品」の問題、さらに人々の健康や安全を脅かす食の問題が次々に発生していることを取り上げ、「法治が不健全で監視と監督が不十分だからだ」と、同問題では政府がやるべきことをやっていないとの見方を示した。
  李首相は、現在進めている政府の改革を「自己革命」と位置づけ、
 「絶対に掘り進めていかねばならない。
 さもなくば、過度に投資に依存する、古い道に逆戻りだ」
と述べた。
 中国はどうしても「現代的な政府」を樹立する必要があるという。

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 ◆解説◆ 
 李首相は、経済の発展にとって「過度に投資に依存する、古い道に逆戻りだ」と表現した。
 李首相が規制緩和で狙っているのは内需の拡大だ。
 そして、規制緩和の障害となるのが既得権益層であり、権限を手放したがらない官僚だ。
   一方で、習近平国家主席は腐敗撲滅に力を入れている。
 どの程度の効果をもたらすかは不明な点もあるが、「腐敗」に手を染めるのはたいていの場合「既得権益層」だ。
 現在のところ、既得権益層は腐敗撲滅に対する“防衛”に懸命で、李克強首相の規制緩和に対する“抵抗力”は弱まっていると考えられる。
 この点では、李克強首相にとっては「追い風」の状況と言える。
   ただし、このところの発表や報道を見ると、李克強首相は官僚の抵抗には、相当に手こずっているようにも見える。
 官僚の中には「そこまでやったら、大きな問題が出る」と、「官僚としての良心にもとづき抵抗する」場合もあるので、話はややこしくなる。
 中国で、首相が経済分野の改革に全力で取り組んだ事例としては、朱鎔基首相(在任:)による国有企業の改革がある。
 多くの国有企業および関連企業を株式会社化して上場させた。
 ただし、外資を含めて一部の者が資産価値の見積もりを操作するなどで、「国有資産を有利な条件で取得した」との批判が出た。
 朱鎔基首相は、急激な改革にともなう弊害もある程度折りこみ済みで、国有企業改革を強引に進めた可能性がある。




【描けない未来:中国の苦悩】




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