2014年9月10日水曜日

南シナ海の「力関係」に変化か:べトナムは潜水艦で中国を抑止

_

●9日、中国外交部の華春瑩報道官は定例記者会見で、中国が南シナ海で行っている大規模な埋め立て作業について、「島に駐留する人員の仕事と生活の条件を改善するのが目的だ」と述べた。写真は南沙諸島に駐留する中国軍。



レコードチャイナ 配信日時:2014年9月10日 12時2分
http://www.recordchina.co.jp/a93989.html

「南沙諸島での埋め立ては駐留人員の生活環境改善のため」
=中国が立場を再表明―中国メディア

2014年9月9日、中国外交部の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官は定例記者会見で、中国が南シナ海で行っている大規模な埋め立て作業について、
 「島に駐留する人員の仕事と生活の条件を改善するのが目的だ」
と述べた。
 人民日報(電子版)が伝えた。

華報道官は、
 「英BBCがこの日、中国が南シナ海で大規模な埋め立て作業を行っていると報じたが、中国側の目的は何か」
との記者の質問に対し、
 「中国側はこれまで、この問題に対する立場を繰り返し表明してきたので、ご存じのはずだ」
とした上で、
 「中国は南沙(スプラトリー)諸島と周辺の海域に疑いようのない主権を有しており、同地における活動が中国の主権の範囲内の事情であることは疑いようのないことだ」
と回答した。

華報道官はまた、
 「その目的は商業的なものか、軍事面を考慮してのものか」
と問われると、
 「島に駐留する人員の仕事と生活の条件を改善するのが目的だと理解している」
と述べた。



ロイター 2014年 09月 9日 14:19 JST
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPKBN0H409Q20140909

焦点:南シナ海の「力関係」に変化か、べトナムは潜水艦で中国を抑止

[香港 8日 ロイター] -
  領有権問題で緊張が続く南シナ海。ベトナムは近く、ロシア製の最新鋭潜水艦を複数配備することで、海洋進出を強める中国に対して確かな抑止力を手にする。
 専門家らは、それによって中国の海洋戦略は再考を余儀なくされる可能性があると指摘する。

 ベトナムは2009年にロシアと交わした26億ドル(約2760億円)規模の防衛協定の下、
 潜水艦6隻を購入することで合意。
 すでにロシア製の最新鋭艦2隻を保有しており、
 3隻目は11月に引き渡しとなる。
 残り3隻も向こう2年以内に調達が完了する予定となっている。

 ベトナムと中国はともに共産党の一党独裁体制であり、
 両国間の年間貿易額は500億ドル(約5兆3120億円)に達する。
 一方で、ベトナムは中国に対し、特に南シナ海での領有権問題でこれまで長く警戒感を募らせてきた。

 今年に入ってからは、中国がベトナム沖に石油掘削装置(リグ)を設置したことで両国の対立が激化。
 ベトナムは同海域に巡視船を派遣したが、規模で勝る中国船を相手に劣勢に立たされるのが常態化していた。

 専門家らによれば、ベトナムは潜水艦の配備が完了すれば、同国沖や南シナ海の南沙諸島(英語名:スプラトリー諸島)周辺海域で、いわゆる領域拒否作戦を展開するとみられる。
 そうなれば、潜水艦70隻を保有するなどベトナムを圧倒する海軍力を誇る中国とはいえ、南沙諸島や油田の領有権をめぐる軍事衝突を想定した算段は難しいものになるという。

 ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のコリン・コー氏は
 「海洋での領域拒否は、自分たちより強力な敵海軍に対し、潜水艦の位置を悟らせないことで心理的抑止力をつくり出すことを意味する」
と指摘。
 「弱者が強者を相手に使ってきた典型的な非対称作戦で、ベトナムも非常に良く理解している分野だろう。
 問題は、それを水中でも遂行できるかだ
と語った。

<着々と進む準備>

 ベトナムは、過去最大規模の兵器調達となった潜水艦の配備に向けた準備を着実に進めている。
 複数の外交筋によると、ベトナム戦争時代に米国の大規模軍事拠点が置かれていたカムラン湾では最近、潜水艦2隻が定期的に訓練航行しているのが目撃されている。

 また、3隻目の潜水艦についてはロシアのインターファクス通信が先月、今年11月に予定されるカムラン湾での引き渡しに先立ち、ベトナムの乗組員がサンクトペテルブルク沖で訓練を受けていると報じていた。

 4隻目は試運転段階にあり、残る2隻は建造が進んでいる。

 地域の大使館付き武官や専門家らは、ベトナムの乗組員が最新型潜水艦をどれほど早く使いこなせるようになるか推し量ろうとしているが、一部では、南シナ海の沖合深くに送り込まれるまでそう時間はかからないとみている。

 ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)のシーモン・ウェゼマン氏は
 「ベトナムが全体のシナリオを変えた」
と指摘。
 「すでに潜水艦2隻を保有し、乗組員もいる。
 これから彼らの能力と経験は伸びていく」
とし、中国側から見たベトナムの抑止力はすでにかなり現実的な形だとの見方を示した。

 最新のキロ型潜水艦は射程の短い魚雷を積んでいるだけでなく、洋上を低空で300キロ飛行する対艦ミサイルを発射することもできる。
 SIPRIは、ベトナムが今年に入り、ロシアとの防衛協定の一部である対艦ミサイル50発のうち、少なくとも10発を購入したと推測している。

 香港の嶺南大学で本土の安全保障問題を専門とする張泊匯氏は、中国政府の国防当局者は、ベトナムの潜水艦を警戒していると指摘。
 「理論的レベルでは、ベトナムは潜水艦を戦闘に使える段階にある」
と語った。

ロイターは中国の国防省と外務省にもコメントを求めたが、回答は得られていない。

<ロシアとインドで訓練>

 一方、複数のベトナム軍高官はロイターに対し、潜水艦の海上訓練と海軍への統合は順調に進んでいるとし、ここまでの進展に満足していると語った。

 同高官らは2隻の潜水艦が完全就役状態にあるかどうかは確認しなかったが、使用が「防衛目的」であることを強調。
 1人は匿名を条件に
 「潜水艦はわれわれの唯一の兵器ではなく、わが国の主権保護強化のために進めている兵器開発の一部だ」
と説明した。

 グエン・チー・ビン国防次官も、同様の考えを公式見解として繰り返し表明している。
 同次官は、中国を名指しすることは避けつつ、ベトナムは南シナ海で紛争を仕掛ける意図はないが、もしどこかが始めれば「後ろに下がって傍観することはない」と語っている。

 伝統的に陸軍が強いベトナム軍だが、ここ数年は主にロシアから最新のフリゲート艦やコルベット艦を導入するなど、海軍力を大幅に強化してきた。
 ロシアが設計した艦船の建造プログラムにも着手している。

 欧米の元潜水艦乗組員らは、ベトナムの潜水艦配備はゼロからのスタートであり、難しい問題が多いにもかかわらず、目に見える進歩を遂げていることに称賛の声を上げている。

 対照的に、ベトナムと同様に南シナ海の領有権問題で中国と対立を続けるフィリピンは、潜水艦を保有していない。

 ベトナムは今年1月にロシアから最初の潜水艦が引き渡される前にも、乗組員の訓練をロシアで行っていた。

 1980年代半ばからキロ型潜水艦を運用しているインドも、ベンガル湾に面するアンドラプラデシュ州の潜水艦訓練センターで、ベトナム人乗組員の訓練を受け入れているという。

 ディーゼル・エレクトリック方式で動くキロ型潜水艦は、最も静粛性に優れた潜水艦の1つとされ、1980年代から改良が重ねられてきた。

 モスクワ在住の戦略アナリスト、バシリー・カシン氏は、ベトナム海軍の潜水艦について、中国海軍が保有するキロ型潜水艦12隻よりも技術的に進んでいるとみている。
 中国に同型潜水艦が最後に引き渡されたのは10年前だ。

 一般公開されている衛星画像からは、カムラン湾内に潜水艦用埠頭と乾ドックがあるのも確認できる。
 ロシアの複数メディアによれば、その近くには乗組員向けの医療施設も完成しているという。

(原文執筆:Greg Torode、翻訳:宮井伸明、編集:伊藤典子)



レコードチャイナ 配信日時:2014年8月31日 5時40分
http://www.recordchina.co.jp/a93470.html

<南シナ海>覇権主義強める中国、10年以内にベトナムに攻め込むだろう―中国メディア


●28日、戦略論壇に記事「ベトナム専門家の驚くべき予言=10年以内に中越は必ずや戦争する」を掲載した。覇権主義を強める中国が2020年までに武力で南シナ海を制圧する可能性を指摘している。資料写真。

2014年8月28日、戦略論壇に記事
 「ベトナム専門家の驚くべき予言=10年以内に中越は必ずや戦争する
を掲載した。

ベトナムネットは先日、ベトナム系米国人の宇宙科学者Thai Van Cau氏のインタビューを掲載した。
同氏はパラセル諸島(中国名は西沙諸島)に対するベトナムの主権は明らかだが、覇権主義を強める中国が2020年までに武力制圧するリスクが高まっていると分析している。

中国が今、注目しているのはウクライナ危機に対する米国と欧州連合(EU)の対応だ。
ロシアのクリミア併合をそのまま南シナ海の事例に当てはめることはできないが、中国にとっては最良の検討材料になると指摘。
ウクライナ危機への対応を米・EUが誤れば南シナ海にも悪影響が波及すると示唆している。



朝日新聞デジタル 2014年9月3日08時18分
http://www.asahi.com/articles/ASG8Y52NJG8YUHBI012.html?ref=reca

「中国が最も自己中心的」 モンゴル民間機関が世論調査

 「自己中心的」な国のトップは中国――。
 モンゴルの民間調査機関「サントマラル財団(SMF)」がこのほど、モンゴル国民を対象に外国の印象に関する世論調査を行った。
  経済進出を強める中国が「最適なパートナー」として存在感を高める一方、後ろ向きなイメージを持たれている実態も浮き彫りになった。

 同財団は、モンゴルの民主的な意思決定過程を支援する目的で1994年に設立された。
 同財団関係者によると、調査結果は8月下旬にあった中国の習近平(シーチンピン)国家主席のモンゴル訪問より前にまとめられていたが、対中関係に配慮して公表を先送りしているという。

 朝日新聞が入手した調査結果によると、調査はウランバートル市と6県に住む18~60歳代のモンゴル人男女1200人を対象に対面形式で97年から今年まで毎年実施。
 「最適なパートナー」と考える国について、
 97~06年の平均値は①ロシア②米国③日本(27・5%)④中国(16・5%)の順だったが、
 07~14年の平均値は①ロシア②米国③中国(21・7%)④日本(20・9%)となり、中国が3位に浮上した。

 一方、「自己中心的」と考える国は中国が8割近くに上ってトップ。
 2位は韓国だった。



レコードチャイナ 配信日時:2014年9月11日 20時55分
http://www.recordchina.co.jp/a94070.html

中国の南沙・チグア礁での活動は比越への対抗措置、
両国軍を追い払わないのは最大限の「我慢」―中国紙

2014年9月11日、中国紙・環球時報は、中国とフィリピンが領有権を争っている南シナ海の南沙(スプラトリー)諸島のチグア(ジョンソン南)礁で、中国側が埋め立てなどの工事を本格化させていると英BBCが報じたことについて、「フィリピンやベトナムへの対抗措置であり、中国が両国軍を追い払わないのは最大限の『我慢』だ」と報じた。以下はその内容。

BBCが「中国はチグア礁に空軍基地を建設する可能性がある」と報じたことについて、中国外交部は「島の駐留人員の仕事と生活の条件を改善するため」と控えめに回答した。

中国とASEAN(東南アジア諸国連合)は2002年、南シナ海問題の平和的解決と未占有の島への新たな建築物構築や居住を自制するとした「南シナ海行動宣言」に署名した。中国は長きにわたりその模範的な順守者であり続けたが、比越両国は「宣言」に反し、島や暗礁に移民を送り込み、滑走路を含む永久的な施設を作るなど、中国を挑発している。

比越および西側支持国の論理、すなわち「南シナ海で、比越は何をしても構わないが、中国はいかなる報復行為も行ってはならない」は、荒唐無稽な論理だ。

マニラとハノイの政府が、中国のチグア礁での活動に不満を抱きながらも、それを大規模に妨害しようとしないのは、両国がこれまで島や暗礁で多くの建設活動を行ってきたからであろう。ワシントンも今のところ立場を公にはしていない。だがそれは、チグア礁をめぐる状況が平穏なままで過ぎていくことを意味するものではない。

南シナ海の島や暗礁に中国軍機が離着陸し、中国の軍艦が停泊するようになれば、地政学に極めて大きな影響を与えることになると、比越や西側諸国の過激派は鋭い声を上げている。だがこうした分析はそもそも出発点から誤っている。なぜなら、中国が南沙諸島で行使する主権を無視するばかりでなく、中国の主権維持に対する決意と能力を過小評価しているからだ。

中国は「九段線」内における権益保護活動において最大限に感情を抑えてきた。中国が行っているのは、自らが駐屯守備する島や暗礁での建設活動だ。中国のインターネット上で叫ばれているような、比越軍を彼らの管轄下にある島や暗礁から追い払おうなどというものではない。

比越が南沙諸島でこれほど多くの悪知恵を練っておきながら、中国がそれに対しまったく無関心であるなどとは、両政府も考えていないはずだ。マニラとハノイは中国を標的とした国民のナショナリズムを煽りたてるべきではない。そのようなことをしても何ら効果はなく、両政権にとって「騎虎の勢い下りるを得ず」となるだけだ。

米国のマーティン・デンプシー統合参謀本部議長のベトナム訪問は、比越の一部勢力が抱く「米国の軍事力を味方に中国に対抗する」夢を高ぶらせた。

だがそれに続くライス大統領補佐官(国家安全保障担当)の北京訪問で、米国は中国との関係を「優先的に考慮」し、11月に予定されているオバマ大統領の訪中は「両国の関係進展における重要な節目だ」と強調した。

米国が比越のために命がけで尽力するであろうか。ワシントンが中国との複雑な関係を処理する上での「カード」にすぎないことを、両国は理解すべきだ。

南シナ海の領有権争いにおいて、中国はいますぐに比越と決着をつけようとは考えていない。両国は中国との衝突という袋小路を意図的に作り出すべきではない。中国を挑発すれば、最終的に自分の元に跳ね返ってくるのだから。



 WEDGE Infinity 日本をもっと、考える  2014年10月14日(Tue)  飯田将史 (防衛省防衛研究所主任研究官)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4302

南シナ海で既存秩序に挑戦:「覇道」中国の行方

>>
 ベトナムが管轄権を主張する海域で石油を掘削し、フィリピンが領有権を主張する環礁を埋め立てる─。
 中国の強硬な海洋進出は、周辺諸国との間に軋轢を生じさせている。
<<

 「アジアの問題はアジアの人民が根本的には処理しなくてはならず、アジアの安全保障はアジアの人民が根本的には守らなければならない」
 中国の習近平国家主席は、2014年5月に、中国が主催して上海で開催された「アジア信頼醸成措置会議」のサミットで、こう強調した。
 同時に習近平は、サミットに参加していたロシアのプーチン大統領やイランのロウハニ大統領を前に
 、「軍事同盟の強化は地域の安全にとって不利である」
とも主張し、新たな「アジア安全保障観」を樹立する必要性を訴えた。

 周知のように、アジア、とりわけ東アジアの安全保障は、強力な米国の軍事的プレゼンスを、地域の同盟諸国が支えることによって維持されてきた。
 米国と日本や韓国、フィリピン、オーストラリア等との複数の二国間同盟が、米国を中心とした東アジアの安全保障秩序を保ってきたのである。

 その同盟を否定し、域外国によるアジアの安全保障への関与を拒否する「アジア安全保障観」は、東アジアにおける既存の安全保障秩序に対する中国の明確な挑戦状といってよいだろう。
 「中国はアジア安全保障観の積極的な提唱者であり、ゆるぎない実践者である」
と習近平は強調し、アジアにおける新たな安全保障秩序の構築に向けて主導的な役割を発揮する姿勢を明確にした。

 最近、中国による力任せの海洋権益拡大への動きが目立っている。
 14年5月に、中国がベトナムと領有権を争っているパラセル諸島(西沙群島)の南部海域で、中国の巨大な石油掘削リグ「海洋石油981」が掘削作業を開始した。
 中国側は海上法執行機関の監視船に加えて、海軍の艦艇も動員し、百数十隻の船舶を投入して、この作業の中止を求めたベトナム海洋警察の監視船の抗議を実力で封じ込めた。

 その過程で中国側の船舶は、ベトナム側の船舶に対する体当たりを繰り返し、体当たりされたベトナムの漁船が沈没したり、負傷者が出る事態も発生している。

 ベトナム側が公開した映像に映っている中国海警局の監視船には、船体番号から見て東シナ海を担当する東海分局に所属するものも存在している。
 ベトナム側の抗議を予測し、全国から監視船を集めるなど周到な準備と強い決意を持っていたことが伺える。

 中国はこの数年の間、東シナ海や南シナ海、西太平洋といった中国の周辺海域において、力を背景とした現状変更の試みを続けている。
 東シナ海では、日本の固有の領土である尖閣諸島に対して、中国は一方的に領有権を主張している。

 中国は、尖閣諸島に対する日本の領有権や実効支配という現状の変更を目指して、海上法執行機関や人民解放軍に依拠した様々な対日圧力を強めている。
 中国の海上法執行機関は、尖閣諸島周辺海域に監視船をほぼ恒常的に派遣しており、これらの監視船は日本の領海への侵入を繰り返している。
 中国海軍は南西諸島周辺での活動を活発化させている。

 訓練艦隊が頻繁に宮古海峡などを通過し、南西諸島の接続水域内を航行するケースもある。
 13年1月には東シナ海で、中国海軍のフリゲートが海上自衛隊の護衛艦に対して、火器管制レーダーを照射する挑発的で危険な行為に及んでいる。

 中国は東シナ海の海上のみならず、その上空においても日本に対する圧力を強化している。
 12年12月には、中国の海上法執行機関に属する航空機が、尖閣諸島の日本の領空を侵犯した。
 中国軍の戦闘機などによる東シナ海での活動が活発化しており、13年度における航空自衛隊による中国機に対するスクランブルは、対象国別でトップとなる415回に達している。

 さらに中国は13年11月に、東シナ海の広範な海域の上空に「東シナ海防空識別区」を設定したと発表した。
 一般に防空識別圏(ADIZ)とは、領空に接近してくる航空機の属性を識別することを目的に、主権や管轄権が及ばない領空外の空域に設定されるものであり、日本を含めて多くの国がすでに設定している。

 ところが中国が設定した防空識別区は、区域内を飛行するすべての航空機に対して事前にフライトプランの提出を要求し、従わない場合には武力を用いた緊急措置を採る可能性を明記するなど、領空外での「飛行の自由」という国際的なルールを無視し、中国による事実上の管轄権を主張した極めて特異なものである。

 また、そのような防空識別区を、日本の領土である尖閣諸島の上空を含めて設定したことも、日本の主権に対する挑戦的な対応といわざるを得ない。

 14年5月には、中国が設定した防空識別区内を飛行していた自衛隊機に対して、中国の戦闘機が約30メートルまで近づく異常な接近飛行を行った。
 こうした飛行は、他国の軍隊は行わない極めて危険なものであり、国際的な常識から外れた中国軍の特異性を示すものである。

■南シナ海で目立つ強硬姿勢

 南シナ海においても、領土・主権や海洋権益をめぐる対立で優位を占めることを目指して、中国は力に依拠した現状の変更を試みており、一部では現状の変更を実際に達成している。

 南シナ海で中国は、ベトナムやフィリピンなどと島嶼の領有権や海洋の管轄権を争っているが、海上法執行機関を使って紛争相手国に対する圧力を強化している。
 中国の監視船は、体当たりなどの手段も含めて、他国の漁船に対する取り締まりを強めている。
 また、他国の資源調査船の航行を妨害し、その探査ケーブルを切断したこともある。

 12年4月には、フィリピンが実効支配していたスカボロー礁(黄岩島)に監視船を派遣し、フィリピン側と2カ月間にわたって対峙したのち、これを事実上の支配下に置いた。
 中国は、海上法執行機関を用いて新たな島嶼の占拠を実現したのである。

 その後中国は、フィリピンが海兵隊員を常駐させて支配しているセカンド・トーマス礁(仁愛礁)に対するフィリピン軍の補給活動を、海上法執行機関を用いて妨害するようになっている。

 人民解放軍も、南シナ海でのプレゼンスを強化し、周辺諸国に対する圧力を高めている。
 中国海軍は近年、大規模な島嶼奪回訓練を南シナ海で繰り返している。
 13年12月には、青島を母港とする空母「遼寧」を南シナ海に初めて派遣し、各種の訓練を行った。

 翌年1月には、南海艦隊の訓練艦隊が南シナ海を縦断してジャワ海に進入し、スンダ海峡を経てオーストラリア北部のインド洋に展開する遠洋訓練を行っている。
 また、14年5月に、フィリピン政府は中国がジョンソン南礁で大規模な埋め立てを行っていると発表した。

 中国は1988年に、武力行使によって同礁をベトナムから奪取し、恒久的な軍事施設を建設していたが、その周辺を埋め立てることで滑走路の建設を意図しているようである。

■米軍の行動制約図る

 中国は、自国の周辺海域における米軍の行動を制約する動きも見せている。
 09年3月には、海南島の南方沖の南シナ海で、情報収集活動にあたっていた米海軍の音響観測艦「インペッカブル」に対して、中国の監視船や海軍の情報収集艦、漁船が航行を妨害する事件が発生した。

 13年12月には、南シナ海で中国の空母「遼寧」の訓練を監視していた米海軍の巡洋艦「カウペンス」に対して、中国海軍の揚陸艦が異常に接近し、その安全な航行を妨害した。
 いずれの事件についても、国際法で認められた「航行の自由」に基づく正当な活動に対する不当な妨害行為であるとし、米国は中国に対して抗議したが、中国は独自の主張に基づいてこれに反論した。

 また、人民解放軍は西太平洋における作戦能力の向上を図っている。
 13年10月に、人民解放軍は「機動5号」と呼ばれる大規模な統合実動演習を西太平洋で行った。北海艦隊と東海艦隊に所属する艦船は宮古海峡から、南海艦隊に所属する艦船はバシー海峡から、それぞれ「第1列島線」を「突破」して西太平洋に進出し、本土から飛来した早期警戒機や爆撃機も参加した実戦的な対抗演習を実施したのである。

 この演習は、中国軍の西太平洋における作戦能力が着実に向上していることを示すと同時に、有事において米海軍力の東アジア海域への接近の妨害を目指す、いわゆる「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略の実現に向けた中国の強い意志を表しているといえるだろう。

 この数年間の中国による強硬な海洋進出と、その過程における力を背景にした現状変更への試みに直面して、米国や東アジア諸国の間では、中国に対する安全保障上の懸念が共有されつつある。

 武力の不行使や紛争の平和的解決、航行・飛行の自由、国際法の尊重などを柱とする既存の安全保障秩序の維持・強化を目指して、米国はアジアへの「リバランス(再均衡)」戦略を推進し始めた。
 東アジアにおける米国の同盟諸国は、いずれも米国との同盟関係を強化する事で、地域の安全保障秩序の維持に努力している。

 また、シンガポールやインドネシア、ベトナムといった国々も、米国との安全保障関係の強化を通じて、既存の安全保障秩序を維持するパートナーとしての役割を果たしている。

 総じていえば、中国以外のほとんどの地域諸国が、米国を中心とした既存の安全保障秩序の維持を望んでおり、中国による現状変更に向けた強硬な行動は、懸念を共有した地域諸国の連携を促進する結果を生んでいる。

 習近平主席は、中国と周辺諸国との関係について二つの異なった方針を示している。
 13年7月に開催された海洋強国の建設に関する会議においては、
 「決して正当な権益を放棄することはできず、国家の核心的利益を犠牲にすることはなおさらできない」
と述べ、海洋権益の確保を強く指示した。

 他方で、同年10月に開催された周辺外交工作座談会においては、
 「周辺諸国との善隣友好関係を発展させることは、わが国の周辺外交の一貫した方針である」
とも指摘している。

 中国が今後、拡大する国力に依拠した現状の変更を推し進め、既存の安全保障秩序に対して挑戦する覇権大国を目指すのか。
 それとも、地域諸国との協調的な関係の構築に努め、既存の安全保障秩序の維持・強化に貢献する責任大国をめざすのか。

 これはひとえに中国自身の選択にかかっている。
 かつて孫文は、アジアの大国となり周辺諸国に対する強硬な姿勢をとり始めていた日本に対して、アジア諸国との協力を主導する「王道」を進むのか、アジア諸国の支配を目指す「覇道」を進むのかと問いかけた。
 どちらの選択肢が正しかったのかは、歴史が教えるところであろう。

 日本としては、中国が誤った選択をした場合に備えて不測の事態への対処能力を高めると同時に、中国が正しい選択を行うように促す努力が必要である。
 既存の安全保障秩序の維持・強化を目指して、米国との同盟関係をより強化するとともに、オーストラリアや韓国などとの安保協力を深化させるべきである。
 また、既存の秩序を維持することに共通利益を有する東南アジア諸国との二国間・多国間の共同演習などを通じて、その能力向上を図ることも必要であろう。

 同時に、既存の秩序から得られる共通利益の重要性についての中国の認識を高めるために、中国を含めた東アジアの経済統合の動きを積極的に推進するとともに、海賊やテロ、自然災害への対処といった非伝統的な安全保障問題に関する多国間の協力枠組みを活用して、中国との対話を強化することも重要となるだろう。


ロイター 2014年 10月 28日 23:54 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0IH1HC20141028/

インドがベトナムに海軍艦船を供給、南シナ海監視活動視野

[ニューデリー 28日 ロイター] -
 インドのモディ首相は28日、同国訪問中のベトナムのズン首相と会談後、ベトナムに近く海軍艦船を供給すると表明した。
 ベトナムは中国と領有権を争う南シナ海の監視活動を強化する意向を示している。

 両首脳はベトナム軍を近代化し、ベトナムのエネルギー部門へのインドの関与を高めることで合意した。

 インドもヒマラヤ地域で中国と国境をめぐり対立している。
 インドとベトナムはともに中国と経済関係を強化しながらも、防衛力を増強している。

 ベトナムが求めている海洋巡視船4隻の売却についてモディ首相は、
 「われわれは迅速に1億ドルの融資枠を利用可能にし、ベトナムがインドから新たな海軍艦船を調達できるようにする」
と表明した。
 インドは防衛装備の調達に向けた融資枠の供与を先月に発表していた。

 ベトナムは同国の海岸沖および南シナ海の南沙諸島(スプラトリー諸島)の軍事基地周辺で同巡視船での監視活動を実施する意向を示している。

 東・南シナ海の領有権争いについて、モディ首相とズン首相は共同声明で、
 「航海と上空通過の自由は妨害するべきではない」
とし、当事者に自制を促し、脅しや武力行使を避けるよう呼びかけた。

 双方はまた、インド国営の石油ガス公社(ONGC)の子会社ONGCビデシュとベトナムのエネルギー大手、ペトロベトナムの提携強化で合意した。



レコードチャイナ 配信日時:2014年12月26日 11時51分
http://www.recordchina.co.jp/a99707.html

東・南シナ海 “水面下”の緊張高まる
=周辺諸国が相次ぎ潜水艦を導入、中国の動向を警戒―中国メディア

 2014年12月24日、米シンクタンク「Wikistrat」のリポートによると、東・南シナ海の領有権問題で、アジア太平洋地域諸国の潜水艦部隊の拡充が活発化しており、武力衝突の危険性が指摘されている。
 近い将来に外交的手段で解決されるめどは立っておらず、
 少なくとも今後6年間は、中国、日本、ベトナムは潜水艦の配備を継続する
とみられる。
 環球網が伝えた。

 現在、東・南シナ海の海上戦力の多くは潜水艦からなる。
 中国は南シナ海のほぼ全域の領有権を主張しており、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイの領有権主張を拒絶している。
 今年初め、中国は南シナ海に「晋級」弾道ミサイル潜水艦3隻を配備した。

 これに応じる形で、ベトナムはロシアから「キロ型」潜水艦3隻を導入、来年には南シナ海に配備される見込みだ。
 今後数年でさらに3隻を配備する計画がある。

 現在16隻の攻撃型潜水艦を保有する日本は毎年1隻のペースで「そうりゅう型」潜水艦を建造しており、2020年までに11隻が完成する。
 フィリピンは約11億ドル(約1320億円)を投じて10年以内に小型潜水艦部隊を設立する予定だ。

 東・南シナ海問題の直接の当事国ではないオーストラリアやインドネシアも、潜水艦部隊の設立を急いでいる。
 オーストラリアは南シナ海の貿易ルートの自由を重視しており、日本からそうりゅう型を12隻購入
することを決定した。

 Wikistratのアナリストは、東・南シナ海周辺国による潜水艦建造は、地域の安定を破壊する要因になりうると述べた。
 また、中国は軍事的、外交的に同海域の現状を危険な状態に変更しようとしていると結論づけた。

 ベトナムは潜水艦でスプラトリー諸島(中国名・南沙諸島)、パラセル諸島(中国名・西沙諸島)で中国の封じ込めを図る可能性があるが、中国が退くことは考えにくい。
 中国は衛星とレーダーによる海上観測ネットワークシステムを建設しており、2020年には施設が完成する。




【描けない未来:中国の苦悩】


_